あの日、君は何をした
皆さんに伺いたい。
言葉にできない心の動きや違和感が、文字になり、そして可視化できるのであれば、見てみたいと思わないだろうか。
あなたが人間なのであれば、100対0で見たいと回答するいわば全人類が見てみたいもの。
それを叶えてくれるのが本日ご紹介の著書。
「あの日、君は何をした」
である。
唐突ではあるが、
皆さんは、樋田容疑者逃走事件を覚えているだろうか?
2018年富田林署の接見室から逃走し、数ヶ月に渡り日本中を騒がした自転車ツーリスト逃走犯である。
繰り返される報道と容疑者のおちょぼ口写真が印象的なため記憶されている方がほとんどではないだろうか。
では、樋田容疑者に間違えられ、バイク無免許運転の高校生が逃走しバス停に衝突し亡くなった事件はご存知だろうか。
若き人間が不慮の死を遂げたニュース、私は見た記憶がない。
いや、恥ずかしながら覚えてないだけかもしれない。
この報道に対して自業自得だと非難するネット民たち。
死んでも仕方ない?
若き高校生のたったひとつの過ちが?
「死の消費」に対して違和感。
ここを深掘りし題材にし残された家族の心の変化を描いたのが本書の第一部。
俄然興味が湧いてこないだろうか。
SNSの存在により悲劇のニュースが軽く扱われてしまう世の中において、当事者達はより重くその事実がのしかかる。
悲しむ母親(主要人物)の感情は見るに堪えないが、感情移入してしまう。姉や夫も全く違う対応をとるが、
どの人物にも移入できてしまう。
心の描写を緻密に緻密に描いた結果、読者の琴線を細かく響かせ、より深みを見せてくれる。
こんなに琴線とは悲しく震えるものなのか。
自分の心を覗かれているような錯覚をも感じぜずにはいられない。
浅はかなSNS社会とのコントラストを感じぜずにはいられない。
母親の感情に対する光と闇を含めて対比的に物語を進めることで深さをみせる。
深さというか幅である。
感情の揺さぶりを大いに感じてほしい。
ああー、気持ちが盛り上がりすぎてきてしまっているので一旦正常に戻しましょう。
逃走前の樋田容疑者で昂りを冷ましていただき、
第二部である。
時はたち15年後、一見繋がりの見えない女性の他殺体からクライマックスに向け過去の事件が交差していく後半(スーパー端折りまくり)
そこに関わる様々な感情や秘密をもった複数の母親、刑事。
愛情の薄い母親、愛情であふれた母親。
愛情は我が子へ向けたものだけなのか、自分の為のものなのか。
愛情は狂気にもなり得るのだと。
もちろん本書のジャンルはミステリーである。
表向きも裏向きもミステリーであるのだが、
哲学なのだ。
第一部も第二部も、ミステリーを見せながら「人間とは」を描き続けるのだ。
「あの日、君は何をした」
救われない、報われない結末にあなたは何を想うか。
あんな結末は、描かなくても良かったんじゃないかな。。。
▽▽▽▽興味の湧いた方はこちらから購入▽▽▽▽
みたいな器用なことはできないので
是非書店に。
自転車で行くことをオススメします。
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