アリジゴクの異論(投げ銭)

ボクは、アリジゴク。

砂地を器のような形に掘って、その底、地中でただひたすら獲物を待つ。

ボクらのこの方法・・・

実は、半年に1匹の蟻がかかれば良い方なんだ。

ボクはこの方法に異論があるよ。

今まで誰も疑問に思わないで続けてきたこの方法、なんだったらボクらの名前の由来となったこのシステム、絶対にもっと良い方法があるはずなんだよな。

うーん。例えば、もうアリの巣の中で待つとかね。

怖い。怖すぎる。エサとはいえ、顔がちょっと怖いんだあいつら。それが無数にだろ?ああ、怖い!だめだだめだ。効率は良さそうだけど・・・

そうだ。下で待つんじゃなくて、上で待つってのはどうだろう。上で待って、アリが近くを通りかかったら突き落す。いや、なんだろう。昆虫感がないぞ。そもそも、ボクの姿を見たらアリは近寄ってこないだろうし・・・うーん。

ここは、逆転の発想だ。砂地を盛り上げて山にするというのはどうだろう。山にして、アリが近づいてきたら崩して生き埋めに。いや、なんだろう。さっきから、捕食というよりアリを殺す方法へ向いてる気がするぞ。それに、生き埋めにした後引きずり出して食べるんだもんね・・・

怖い。なんか怖いぞ!

んー。もう根本から変えないといけないかもしれないね。アリが好きなもので釣るってのはどうだろう。砂糖?・・・砂糖を塔のように積み上げて、アリが上まで登ったら一番下を思いっきり蹴って倒す。おお、なんか、それっぽい!よし、ボクは今度からこれにしよう。それじゃあ早速砂糖を集めないとな。

砂糖、砂糖、砂糖。ないなあ・・・

あっ。すいません、つかぬ事をお聞きしますが、砂糖は余ってませんか?はい。そうなんです。ちょっと、いくつか必要なんですよ。ええ、そうなんです。えっ!本当ですか!

本当に、ありがとうございますアリさん!

いやあ、世の中には良い奴がいるなあ。よーし。さっそく積み上げよう。よいせ。よいせ。よいせ。よいせ・・・できた。よーし、しばらく待ってみよう。

・・・・・

・・・・・

・・・・・

あっ!危ないよさっきのご親切な方!これは、さっきあなたからいただいた砂糖なんです。実は、これを積み上げてアリをおびきよせてから思いっきり蹴って倒してアリを食べようと思っていたんですよ。ごめんなさいわかりにくくて。もうちょっとわかりやすく、アリを捕まえる為ですって張り紙とかしとくべきでしたよね・・・。危うく、恩虫に怪我をさせるところでした。そうだ、よろしければ、家に来ませんか?謝りついでに、せっかく仲良くなったんですから、おもてなしますよ。おもて虫もしますし。

さあ、こちらがボクの家です。

ドンッ。

・・・・ああ、落ちちゃった。気を付けてくださいよねぇ

ボク、アリジゴクですから。

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