緊張と緊張 (投げ銭)
俺はある決意をした。
今から銀行強盗をする。
成功する保証はどこにもないが、小心者であるがゆえにこうなるまで自分を追いつめてしまったのだろう。
「強盗だ!金をだせ!」
私は銀行の受付。
今びっくりしている。
銀行強盗が入ってきて、私の目の前に立ち、拳銃のようなものを突き付けているからだ。恐怖で声がまともにでない。
「あ・・・あ・・・・」
俺は緊張している。初めての銀行強盗だからだ。次になんてセリフを吐くべきか。
「・・・おい!これに金を詰めろ!これに!ほら!これだ!これ!わかるだろ!これだよ!なんだっけこれ!」
私はなぜか銀行強盗に質問されている。答えなければ殺される。
「・・・バッグです」
俺は少し頬を赤らめた。緊張で”バッグ”という名称すら出てこなかったのだ。さらに緊張してしまった。
「・・そうだ!バッグに入るだけのあれを詰めろ!!あれを!大体わかるだろ!あれだよ!」
私はまた質問されている。怖い。恐ろしいクイズだ。
「お金ですか?」
俺は頬に赤色を重ねた。”お金”が出てこない銀行強盗はもうダメだろと思った。慣れないことはするもんじゃないなあ。もう頭が真っ白だ。
「・・・そうだ金だよ金!早く詰めろ!いう事聞かないとあれが出るぞ!あれが出るぞ!」
「ああ、死人ですか?」
もうこのやり取りにもお互い慣れてきた。私はレスポンスの速さに自信すらでてきた。すこしだけ緊張もなくなった気がする。
「すいません。支店長を呼びますので少々お待ちください。」
わたしは支店長。銀行強盗が来ていることは知っていたけど、もうそういうの無理!なんて思い帰り支度をしていたところだ。ジーザス!呼ばれてしまった。
「わたしがあれです。あの、さっき彼女が言ってたあれです」・・・もう緊張で自分の肩書も出てこないや。ジーザス!
俺も緊張しているが、こいつも相当緊張しているな。なぜこの支店長はリュックを背負っているんだろうか。まあ、そんなことはどうでもいい。早く金さえ詰めてくれれば問題ない。
「お前が支店長か・・・早く金を詰めろ!早くしろ!」
わたしはそう、支店長だった。そうだ、お金を詰めにいかなければ。
「わかりました。裏のあれ…あれの中にありますので、そちらへ取りに来ます」
チャンスだ!こいつ"金庫'が出てこないんだ!さっきまでの自信のなかった俺とはさよならだ!
「金庫だろ!」
わたしは支店長。あっ思い出した。
「あ、保管庫です。」
俺は銀行強盗。頬をさらに赤く染めていっているのがそれだ。
一方、わたしは支店長。完全に暗証番号を忘れてしまった。
「ここが保管庫です」
俺は金庫という名称でも良かったんじゃないか?という疑念を抱えながらも、やっとここまで来たよろこびを感じている。
「よし、開けろ!開けてこれに詰めろ!これに!この〜あれに!」
わたしは"バッグだ…"と思いながらも、これ以上強盗を刺激しないようにした。なによりも、暗証番号を思い出すことに脳がフル回転しているため、白目だ。
「すいません…ちょっとお時間を」
俺は銀行強盗。目の前にいる支店長が白目で時間を欲しがっている。怖い。まさかこいつ…
「早くしろ!まさか暗証番号忘れたとか言うんじゃないだろうな!」
ばれた。しかし、忘れたと言えば殺される。ナーバス!
「いえ、覚えてます」
なんだ、覚えてるのか。よかった。
「そうか…じゃあ少し時間をやる」
「…」
「…」
「…」
「…」
俺は確信した。こいつ絶対暗証番号忘れてる。
「忘れてるだろう」
わたしは白目支店長。そうだ。忘れている。もう諦めて本音でジーザスだ。
「はい」
俺はもうすべてを諦めた銀行強盗。もう帰ろう。やめだ。全員緊張してるんだもんな。無理無理。
「わかった。また会おう!」
わたしは、なぜか怪盗の去り方をする銀行強盗の走り去る姿をながめる支店長。よかった。助かったんだ。
おひさしぶりです。私は銀行の受付。あの二人がモタモタしている間にあれを呼んだ。あの〜あれ。
「あ、来た!」
僕は新人警官。銀行強盗事件が発生したと通報をうけやってきた。初めての仕事だから緊張している。
「おい!銀行強盗だな!動くな!黙れ!背中のリュックを下ろせ!金が入ってるんだろう!」
違う。わたしは支店長。今日二人目の拳銃突きつけだ。
「あ、あう…あ…」
僕は新人警官。よし。完全にこの場を制したぞ。でもここからどうすればいいんだろう。やべえ。あれだな。そうだ、銀行強盗はあれを持ってるかもしれないからな。よし僕はこれを撃つぞ!これこれ!あの〜これね!
「バキューン」
わたしは支店長。ついてない。
俺は銀行強盗。帰ってゆっくり風呂に浸かろう。
私は銀行の受付。ああ、もう辞めようこの仕事。
僕は新人警官。今日の任務はこれにて完了だ。
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