エコロジカル・パレード(投げ銭)
このさびれた遊園地を立て直したい。
まず、どうすべきだろう。やはり、普通の遊園地がやっている事とは逆の事をやるべきじゃないか?差別化をしなければ、資金の少ないこの遊園地が勝つことは難しいだろう。
例えばマスコットキャラクターだ。本来ならば明るく可愛いキャラクターが好まれるが、うちの遊園地のキャラクター、こんなのはどうだろう。
”独房くん”だ。暗いし怖いぞ。独房君に見つかると、冷めきったスープと臭い飯を投げつけられる。なかなかスリリングでいいじゃないか。
アトラクションはどうだ。どうやら濡れる系のアトラクションは人気が出るらしい。じゃあ、うちは絶対に濡れないアトランクションだ。まったく濡れないぞ。せっかく水の上をすごいスピードで走るのに、分厚い鉄板で覆われているからだ。ちなみに窓もない。音もほとんど聞こえない。走っている感覚もない。乗った記憶もない。なのに財布からは1800円が消えている。結果的なドキドキは一緒だ。ある意味、頬は濡れるのだ。
さて、売店では何を売ろう。チュロスやポップコーン。当然、歩きながら食べられる物が好まれる。そうなればうちは、歩いて食べるなんて不可能なものを売ろう。お椀すり切り一杯のコンソメスープだ。間違いない。こぼれるぞ。あとは、カレーセットだ。ルーとライスと福神漬の入れ物が別々の。絶対無理だろう。持つのも一苦労だ。でもベンチは置かないぞ。
さあ、最後はなんといってもパレードだろう。きらびやかな光に包まれて、楽しい音楽に乗せてお客様にパフォーマンスをするキャラクター達。幸せな気分にさせてくれる。もうこなったらうちのパレードはこうだ。
けっして鳴り響く事はない、石を布で擦る音がメインBGMだ。遠くに見える100円ライターのわずかな光。時折、鳴り響く独房君の奇声。独房君がリヤカーを引きながら細かく引き裂いた牛乳パックをバラ撒く。これがパレード終わりの合図だ。子供は泣き叫び、大人は子供をギュッと抱きしめるだろう。金をかけずに、石と布とライターと牛乳パックで、ここまでできるんだ。まさに夢の国じゃないか。エコロジカルパレードといったところだな。
そうやって、じいちゃんが始めたこの遊園地。すっかりさびれてしまったよ。
さあ、どうやって立て直そうか。
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