文章コント企画cortext(仮)
文章によるコントです。全文公開ですのでコメント投げ銭お賽銭なんでも。
「パブロフの人」
私の名は、イワン・パブロフ。生理学者だ。私の名が世に知れ渡ったのは犬の条件反射に関する実験だ。犬に、鐘を鳴らしてから餌をやる。これを繰り返すことで、次第に鐘を鳴らすだけで唾液が分泌されるようになったのだ。私は、ここでひとつ疑問を抱いた。人間はどうなのだろうか。人間で実験してみたい。そうだ。隣町に住んでるノブナレフで実験だ。あいつは、簡単に騙せるぞ。あいつは山で熊に遭遇した時、死んだふりをするのに手首まげてお化けのポーズをとった馬鹿だ。きっと簡単に騙せるぞ。よし、そうと決まれば早くいかねば。
ー 隣 町 ー
しかしこの街はすごく広い。ノブナレフを探すのに一苦労しそうだな。しかし、実験の為だ頑張ろう。さて。ノブナレフくんどこだい。バナナあるよ。
「こんにちはパブロフさんぼくバナナくれたらなんでもするだす。」
簡単に来た。すぐ来た。しかも、騙そうと思って策を練ってきたのにバナナひとつでなんでもやる宣言が飛び出した。なんなんだこいつは。バナナに命を救われた経験があるのだろうか。まぁいい。私にとっては好都合だ。現象名を付けるなら、パブロフの好都合だ。やあノブナレフくん。実はおりいってお願いがあるんだ。
「おいら、最後までやるだすよ。」
なんなんだこいつは。まだ内容の一部も伝わってないはずなのに。なんと清々しい顔だ。快諾とはこのことだ。辞書の「快諾」の欄にノブナレフの顔写真を図1として挿してもいいくらいだ。よし、そうと決まれば一緒に私の家にいこう。着いて来てくれ。
「はい、もちろんだす。」
なにがもちろんだすだ。後ろを振り返ったらもういないじゃないか。一本道でどうやったら見失うんだ。いやまてよ、私を疑って逃げたのか？しまった。あいつを馬鹿にしすぎていたようだ。たしかに、いきなり着いてこいなど、おかしいじゃあないか。私としたことが
「パブロフさぁ〜ん！落し物だぁ〜！」
心配無用だった。ノブナレフはなぜか、キノコを片手に持っている。私はキノコを落とした覚えはない。なにはともあれ、ちゃんと着いてくる意思はあるようだ。さぁ、ノブナレフくん。これからこの部屋でしばらく生活してもらうよ。ご飯はこっちで用意するから、心配しないでくれ。
「最高さぁ！」
なんだその言い方。だいたい何が最高なんだ。しかし従順なほどこちらはパブロフの好都合だ。さっそく当たり前のように使って見たぞふふふ。パブロフフフだ。じゃあノブナレフくん。ゆっくりしててくれ。
「は あ ぁ ぁ ぃ」
そういう意味ではないがまぁ想定の範囲内だ。
ー翌日の朝ー
ゴーン ゴーン ゴーン。鐘を鳴らす。そして、食事を出す。
「わぁ〜！いただきまぁ〜す！うめえだす！うめぇだすよ〜！はぁ〜お腹いっぱいご馳走様だあ！」
ー昼ー
ゴーン ゴーン ゴーン。鐘を鳴らす。そして、食事を出す。
「わぁ〜！いただきまぁ〜す！うめえだす！うめぇだすよ〜！はぁ〜お腹いっぱいご馳走様だあ！」
ー夜ー
ゴーン ゴーン ゴーン。鐘を鳴らす。そして、食事を出す。
「お腹いっぱいご馳走様だあ！」
早い。早すぎる。なんなんだこいつは。3回目で早くも鐘がなるだけでお腹いっぱいになるようになってしまった。よし、ものはついでだ。
ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン
「痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い痛い！もう食べれないだすよぉ！！」
食べてないのだ。食べていないのだよ。ノブナレフはスポンジのように私の思いを吸いとってくれる。どうだ、ノブナレフくん。外を走ってくるというのは。疲れればまだお腹も減るだろう。じゃあ、鐘が鳴ったらスタートだ。
ゴーン ゴーン ゴーン
「いってきまぁ〜す！」
「はぁはぁ！疲れただすよ〜！」
ゴーン ゴーン ゴーン
「いってきまぁ〜す！」
「はぁはぁ！疲れただすよ〜！」
ゴーン ゴーン ゴーン
「疲れただすよ〜！」
早い。早いぞ。
ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン
「はぁはぁ！…ひぃ！はぁ！ぎぃ！！はぁはぁ！！もう！はひっ！走れなぁ！走れないだすよおぉ！！！」
走っていないのだ。走っていないのだよ。
ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン
ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン
ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン ゴーン
私は悪いことをした。
あれから、毎年。
ノブナレフくんの墓には出向くようにしている。
end
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