未来の自分に負債を残さない


小さい頃から、苦手なものは先に食べるタイプでした。揚げ物に添えられた千切りキャベツ、給食の副菜(野菜類)、焼売に乗ってるグリーンピース。いただきますをして真っ先に食べてたっけ。
食べ物に対して使うのは気が引ける言葉だけど、まずは苦手なものを“やっつけ”たい。そのあとにゆっくりじっくり好きなものを楽しむのが幸せ。

夏休みの宿題なんかもそう。配布された瞬間から解き始めて二日目くらいには終わらせ、暇と暑さに茹だるだけの退屈で贅沢な一ヶ月を過ごすのが好きでした。

二十年ほど経った今でも、その価値観はまったく変わっていません。三つ子の魂〜なんでしょうかね。大きな買い物をするときもローンは組みません。“支払いが残っている”という事実に、楽しい気持ちが曇るのがもったいなくて。

この考えを貫いて良かった〜と強く思う経験が一つあるので、それを書こうかな。



つつかれると厄介なので伏せますが、時間をだいぶ遡ります。当時の私は美容学校への進学のためにお金が必要でした。両親が積み立ててくれていた学資保険をありがたく充てる予定でしたが、父親との離縁の際、全額(ほぼ満額)持ち逃げされました。いやマジで最悪すぎるだろと思いながらも、彼と関わるリスクはとても大きく、私は諦めることを選びます。

まず奨学金を視野に入れましたが、長いこと支払いに追われる未来が嫌で嫌で仕方ありませんでした。自分の尻拭いをするために働くことになるのか、と。だったら先に稼いで、未来を一括払いで買ってそのあとはのんびり過ごしたいな。そう考えた私は、レズ風俗で働き始めました。

“若さ”とは高い価値が付くもので、ありがたいことにあっという間にお金の準備ができました。それからもチマチマと続けて、生活の足しや貯蓄に回すこと数年間。嫌な思いや怖い思いもしたけれど、いろんな出会いや経験をしました。あの数年間で得た物は、稼いだ金額の価値を遥かに超えたと思っています。

そうして稼いだお金で通った美容学校、本当に本当に素敵な二年間でした。ギャル&パリピの動物園に放り込まれて、“反省文”で作った紙飛行機を飛ばしたり、鋏で指の肉を切り落としたり。泣いて笑って、なんやかんやで無事美容師に。ゎら

でもすぐ辞めました、三年弱です。“もったいない”という言葉を、これでもかというほど浴びまくりました。辞める前もそうだし、今でもときどき言われます。
しかも私にとってその国家資格取得への道のりは、学資保険の穴埋め計画を覚悟したあの日から始まっていたわけで。あの数年間の努力とか色んなものがパー✋になるなんて思えば、たしかにもったいないのかもしれません。
でもパー✋になるのはどちらかというと、過去ではなく未来だと思ったんですよね。

美容師時代の生活は15時間労働×週6で、給料も雀の涙でした。一緒に住んでいる恋人ともまともに時間を過ごせない。何でもないのに涙が出るから心配をかけてばかりで、ああ何のために一緒にいるのかしら〜、、、なんてメソメソして。

“あんなに努力して手に入れた未来がこんなので良いわけねーだろ〜!買うもの間違えたわ!こんなもん要らねー!”と思って、辞めました。
向き不向きの見極めが甘かっただけで、美容師という仕事はとても尊いものだと思いますよ。でも私みたいな人間には合わなかったです。

晴れて無職になった翌朝、久しぶりにホットケーキを焼いて食べました。もうあまりにも美味しくて、それはそれで涙が出たな。
忙しない日々の中では思い出すこともなかった懐かしい人達がポンポンと頭に浮かんできて、ご飯を食べたり遊んだり。家事をしてのんびり過ごしながら、そのうち新しい仕事に就きました。殺意が湧くことはあれど、業務内容自体はとても肌に合っているようで。現在もその仕事をしながら平和に暮らしています。


もしあのとき奨学金を借りていたら、誰かにお金を準備してもらっていたら。私は“辞める”という選択をできませんでした。もったいなくて、申し訳なくて。
私が努力で買ったのは“美容師国家資格”ではなく“出会いや経験”だったんだと考えると、それはもうとんでもなく安く買えたなあと思うのです。風俗時代にしろ専門時代にしろ美容師時代にしろどれもかけがえのない経験であり、そして出会いに溢れていましたから。
、、、なんて。たとえどんな道を選んで歩んだとしても、私はきっとそう評価してしまいます。この先も。

選んだものを正解にして生きていく。どうしてもそれができないものはジャンジャン捨てる。
それは簡単な作業ですが、“もったいない”に邪魔されることがとても多いのです。他人だけでなく、自分自身も囁きます。えー、、、もったいないじゃん、、、って。

だからそれを“ガタガタうっせーー!!!私が選んで私が買ったんだから好きにやらせろや!!!”と突っぱねる権利を常に持っておくことが大切だな、と改めて思います。
誰しも好きで生まれたわけじゃないんだから、生まれたあとくらい好きにやりましょう。でもあんまり他人の手を借りると、足が竦むこともあるからね。泣くも笑うも、踊るも転ぶも自己責任。好き勝手に走り回れるように、荷物(負債)は抱えない。うっかり生まれちゃった負債は早急にお片付け。そういう人生を愛しています。

長くなりましたがなんとなく伝わったかな。出かけるときも極力荷物を持ちたくないし、苦手なものはやっぱり先に食べちゃいたい。この価値観もいつかは変わるかもしれないし変わらないかもしれない。心地良いと感じる歩き方で、これからも気ままにフラフラやっていきたいな。

こんな文章を読んでくれてありがとうございました。声で再生されそうなレベルの口語だよね。
また何か書くかも、気が向いたらぜひ。ではね。

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