見出し画像

鑑別書に明記された「ギベオン」は罠

隕石であることを証明するものは大きく分けて「証明書」と「鑑別書」があります。

「証明書」は主に隕石の研究者・著名な隕石ハンター・IMCA(国際隕石コレクター協会)メンバーから隕石を購入した際に付属するもので、この隕石がいつ、どこで見つかった隕石で、名称は何かまで記載されています。
証明書を発行している人たちは対象の隕石の出所を把握していて、かつ、その隕石を自身で販売しているため隕石の名称まで証明書に明記できるわけです。
ただし、証明書自体は個人が自由に作成できてしまうため、証明書があるからと言って絶対本物とは言い切れません。
信頼できる発行者が発行した証明書が信頼できる証明書と言えます。

対して「鑑別書」はフリマサイトなど個人が販売している隕石を購入した際に付属または発行してもらうもので、鑑別機関に鑑別して欲しい隕石を渡して、化学検査で対象が隕石であるかを判別してもらい、その結果が記載されたものになります。
つまり対象が隕石であることは分かっても、出所が分からないため、この隕石がいつ、どこで見つかった隕石で、名称が何かまでは分からないわけです。
そのため、基本的に鑑別書には「石質隕石」や「鉄質隕石」のように記載されていて、名称までは記載されていません。

しかし、鉄質隕石に対して「ギベオン」と明記して鑑別書を出している鑑別機関が存在します。
なぜ出所が分からないのにギベオンだと分かるのでしょう?

答えは、「鑑別機関はギベオンだと分かっていない」です。
なんと、鉄質隕石には全て「ギベオン」と鑑別結果を出します。
ウィドマンシュテッテンがそっくりなムオニオナルスタはもちろん、アルタイや全く異なるカンポ・デル・シエロですら「ギベオン」の鑑別結果が出ます。

また、鑑別機関はメッキされた状態の隕石も鑑別することができます。
正直メッキされて見えない状態の隕石をどう鑑別するんだ・・・と思うのですが何かしら方法があるんでしょう。
そうすると、悪い人たちはこう考えるわけです。

「安い鉄隕石をメッキしてこの鑑別機関で鑑別書を発行すればギベオンとして販売できるじゃん!」

「ギベオン」と明記された鑑別書が付いているから安心!で買ったつもりが逆に異なる安い隕石を掴まされてしまうわけですね。
もちろん全てがそうとは言い切れませんが、鑑別書はあくまで隕石であることを証明するものであり、特定の隕石であることを証明するのには何の役にも立たないということです。
※なお、この人のギベオンはメッキしていないから安心できる!というのも間違いで、模様の似ているムオニオナルスタなどをメッキせずにギベオンとして販売している人もいます。

鉄隕石が欲しくて価格にも納得しているのであれば問題ありませんが、本物のギベオンが欲しいのであれば鑑別書のギベオンの文字だけで購入を決めるのは止めましょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?