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バーチャル世界でなにもしなかった話~2年目~

はいどうも、VRCなにもしない人ことdateyakiyaです。
『VRCなにもしない人』という僕自身の存在のみを貸し出すサービスを始めて2年が経ちました。あっという間です。

初めて書いたnote「バーチャル世界でなにもしなかった話」の流れを踏襲しながら、2年目を迎えた"存在貸出活動"がどう認知されどう広まっていったのかをこのnoteで一緒に紐解いていければと思います。

※本文は最後まで無料です。オマケはよほどのモノ好きか僕のファン向け。


このnoteで初めて僕の事を知る方もいると思うので、改めて自己紹介をします。
はいどうも、VRCなにもしない人ことdateyakiyaです。
話を聞く、一緒に動画を見る、長時間同じ場所から動かない等、”人ひとり分の存在が必要な時”に僕の存在のみを貸し出すなにもしない活動を行っています。

どれくらいなにもしないかというと、例えば愚痴を聞く依頼は「愚痴を聞く」以外の事、アドバイスや慰めるといった行為は行いません。会話の流れで返事はしますが愚痴を聞くのが依頼なら聞くだけです。「他人に干渉しない」とも言えますね。
僕の知見や労働力を提供することは「なにかする」に抵触するので依頼内容にもよりますが基本的にしません。

なにもしないの解釈が人によって違うので「○○はなにかするに入る」とあえて明確な線引きをせず、依頼に出来るだけ添う形でなにもしないをしています。改めてよろしくお願いします。


1 記憶に残っている依頼

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 ホラーワールドのデバック依頼。デバックといってもすり抜ける壁を探したりするものではなく、ただの一般人がちゃんとギミックを理解し最後まで問題なくゴールできるかの確認に利用される事が多かったです。

動作テストをするなら技術者を呼び集めた方がミスがあった時にすぐ相談できて効率的なのでは?と思っていましたが、「ワールド制作の知見が無い人、怖がりの人がどういう動きをするかのデータが欲しいから」と言われ納得しました。

ワールド製作者によって考え方はたくさんあると思うんですが、今回の依頼者は「出来るだけたくさんの人に遊んでもらいたい」という意図があったので、演出や謎解き要素を凝るよりゴールまでにどれくらい時間がかかるかを重視していた様子でした。

ホラーワールドに慣れている人やある程度ワールド制作の知見を持っている人なら直感や経験でゴールできてしまう場合があって、その人達基準でワールドを作るといわゆる上級者向けのワールドになる可能性があるんですよね。それを回避するためには「前知識を持っていないマジでなにも知らない人」が必要なんだなぁと思いました。

知識がない、というのも強みになると感じた依頼でした。


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 相談や愚痴を聞く依頼はこれまでたくさん受けてきましたが、講義を聞く依頼は初めてだったので印象に残っています。

依頼をしてくれた理由が「友人達の前だと緊張感が薄れてしまうので、出来るだけ赤の他人にお願いしたかった」とのことで、友人だと気軽に頼める分本番の空気感や依頼者自身のモチベーションが保ちにくいなとは思います。僕も就職の為に面接練習を友人とやってたら笑ってしまって身に入らなかった経験ありますし。

"ほどほどの緊張感を与える存在"として呼ばれたのは先ほどの依頼以外にも「動画撮影で気合入れるから画角に入らず外から見守ってほしい」や「筋トレを見守ってほしい」等、重い腰を上げるためのキッカケとして呼ばれるケースが多かったです。

完全に余談なんですが筋トレを見守る依頼中、あまりにも依頼者が苦しそうだったので「大丈夫ですか?」と声を掛けたら「なにもしないでください!!」とちゃんと怒られてしまいました。
相手を心配するのもなにかするに抵触するのかと学び、"なにもしない"のクオリティを上げる事ができて結果的には良かったです。


2 VRCなにもしない人が"してた事"

 「なにもしないをする」という自己矛盾を抱えながら2年経ったわけですが、あえてこの矛盾と本気で向き合い苦悩するのも楽しいんじゃないかと思いたくさんのルールを設けました。
存在のみを貸し出すという言葉の意味を高いところまで昇華させるには必要な儀式だったと思います。
数あるルールの内、2つだけ解説も含めて挙げます。

・バーチャル世界にいる個人として接する

 バーチャル世界には人類史的には珍しくカースト制度がまだ導入されていません。要は王族、平民、奴隷というような身分の違いが無い。バーチャル世界において立場的な絶対格差は存在しないと考えているので、依頼者がどれだけ金を持っていようが影響力があろうが全て無視します。話すときはもちろん敬語でしっかり敬意を払います。
性別も年齢もリアル世界で使用されている記号や数字でしかなく、そもそもバーチャル世界にそれらを持ち込む事自体懐疑的です。さすがに言い過ぎか。

よく有名人にカテゴライズされる方とご一緒する機会があるのですが、僕にとってはバーチャル世界で過ごしているあくまでいち個人でしかなく、意思疎通ができる血と肉と内臓の塊がいるな。くらいにしか捉えてません。
バーチャル世界にいる間僕らの目線は同じハズなので、無条件に相手を持ち上げて相対的に自分を卑下するのは実質差別な気がする。

いち個人として相手の存在そのものを受け止め尊重し「有名人を有名人扱いしない」「相手が何者であろうがどうでもいい」というのがルールでした。

・Private Worldに籠らない

 自分自身を貸し出すというのは「自分の存在をpublicにする」事だと思い、僕が今どこにいて何をしているのかを第三者から見ても明確にする必要があると考えました。なので依頼や個人的な話をする以外の時間はほとんどFriends+(自分のフレンドとそのフレンドが入室できる部屋)かPublic(誰でも入室できる部屋)で建てられたワールドで1人過ごしていました。

バーチャル世界の恐ろしいところは「凝縮されているのに広大」な点です。
人同士の物理&心理的な距離がどんどん縮まって良い意味でも悪い意味でもコンパクトになりつつあるんですが、この世界は逆に外側へ外側へと拡大しつづけています。
広い荒野にポツポツと独立した村が無数にあってその村と村との間がどんどん離れていくような感じがします。

Private Worldに居る=どこかの村に属している、つまり僕の存在がpublicになっていない状態を自ら生み出してしまうのはNGでした。
会いたいフレンドがいようが参加したいイベントがあろうが存在をpublicにすると決めた以上、バーチャル世界に溶けて空気のように漂うレベルにまでdateyakiyaという個人を希釈していきました。


3 ”なにもしない”しかできない人


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 僕はバーチャル世界を「全て自分の意思で選択できる世界」だと捉えている。外見、服装、振る舞い、交友関係、生き方まで周りや環境によって強制される事なく自由に自分の意思で選ぶことができる世界。

あえて乱暴な言い方をするなら「なにをしてもいい世界」。そして「なにをしてもいいなら、なにもしないをしてもいい」と思う。
どんな選択もとっていいなら「選択をとらない選択」をしてもいいでしょ。

_____

「住む」という言葉の語源は「澄む」にあって、心が澄んでくる、落ち着いてくるの意という説明をどこかの詩人の本から見つけたとき、なるほどなと納得した。

犬が小さな犬小屋の中でさらに落ち着く場所と姿勢を探してから眠るように、理由は分からないけど何故か安心する「自分の形」がある。

自分の意思で選ぶというのは、自分の形を探し出す行為と同じなのだ。無限にある選択肢から自分が"納得"したものを選ぶ。"納得"して得た選択なのだから最も収まりがいい。オーダーメイドスーツのようにしっくりくる。

「なにもしない」とは僕が最も落ち着く自分の形。僕のスーツだ。だから2年も楽々続けられたし、これからも息を吸って吐くように悠々となにもしないをしていく気がする。それしかできないし。

自分に合ったスーツを選ぼう。隣の人とデザインが違うなんて当たり前だから、まずは自分が落ち着くスーツを作ろう。

____

僕はunityもblenderも歌もダンスもお絵描きもカワイイムーブもなんにもできなかった。なんにもできなかったからなにもしない人をしている。"存在している"というだけ。

昔は存在しているだけの自分が嫌だった。
友人はイベントを起こしたりアバターを作ったり歌やダンスで誰かの役に立っていたり誰かを感動させている。それをただ享受するだけの自分のやるせなさとか情けなさで圧死しそうになった。

一緒に遊んでた友人が遥か遠くにいってしまうように見えて恐ろしかった。僕はただみんなと遊んでいたいだけなのに、置いてけぼりにされる感じが寂しかった。

たかがインターネット、たかがチャットツールでここまで感情を大きく揺さぶられるなんて始めた頃は一ミリも思わなかったけど今なら分かる。
リアル世界と同じくバーチャル世界の人達にも血が流れている。血が流れているから心が刺激される。

目の前のアバターは組み込まれたプログラムではなく実際にリアル世界の人間が身体を動かす事で手足が動く。息遣いや一挙手一投足に血が通っている。アバターに流れる血液がバーチャルにリアリティを足していく。

友人は遠くになんか行ってなかった。
僕が勝手に距離を置いただけだった。


なにもしない僕を貸し出すサービスは「NPCでいいんじゃないか?」とか「ただいるだけなんか意味あるの?」と疑問を投げかけられるが、血が通った人間が近くいて、必要になった時にだけレンタルできる。
広大なインターネットは常に孤独との闘いだけど、その孤独感を「近くに居る」だけで打ち消してくれるのって実は凄い事なんじゃないか。
この当たり前をもう一度深く理解しておく必要があると思う。

バーチャル世界はそれだけあれば十分生きられる。
あとはやりたい奴が勝手にやってくれるからその人達にお任せして、僕は胸を張って堂々となにもせず存在していく。

Stand by me, Stand by you.


無料ゾーンはここまで。読んでくださってありがとうございました。
感想をツイートしたり拡散していただけるととても嬉しい。

依頼があればTwitterにDMしてください。基本無料です。

VRCなにもしない人
dateyakiya

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