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薬局がお弁当屋さんを作った話

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おっすおはようございます

関西で薬局、お弁当屋さん、脱毛サロンを運営している株式会社メタルファーマシーの代表取締役、川野と申します。写真含めキャラが渋滞していることを先に謝罪しておきます。パチスロライターとラジオDJを目指していた過去についても本当に申し訳ございません。(写真は大学の卒業式です)

ちなみに、上の写真のハンドサイン(メロイックサインと言います)や会社名からお察しの通り、ヘビーメタルが好きです。重ねてお詫び申し上げます。

これは僕のお決まりの自己紹介なのですが、オンラインセミナー等でこちらを繰り出す度に皆様が小さな子供を見守るような優しい笑顔と完全に守備範囲外の外国語を操る人に対する戸惑いが同居したような表情を浮かべます。そう、今のあなたのような表情です。どうかそのまま、この謎の男の戯言を見守ってやってください。ここから急に真面目になります。ほんとごめんなさい。

今あなたに、助けたいと思う人はいますか?

今、これをご覧のあなた。あなたには、助けたいと思う人はいますか?
もしおられるのであれば、ぜひその方のことを思い浮かべながら僕の話を聞いていただければと思います。

僕たち金太郎薬局では在宅医療に力を入れていて、毎日多くの患者さんのお宅を訪問しています。僕自身も少し前まで薬剤師として在宅の現場に出ていて、ほんとにたくさんの患者さんと関わりを持ちました。今回はその中で、お弁当屋さんをオープンするきっかけとなった1人の患者さんとのエピソードをお話します。

お話の主役は市営団地に住む70代の独居男性。僕は「おっちゃん」と呼んでいました。このおっちゃん、ケアマネージャーさんから依頼を受けて訪問を開始したのですが、まぁひどい環境で。家の中に新聞紙を敷き詰めて犬を放し飼いにしていて匂いすごいし、部屋中ゴミだらけやし、おっちゃん何言ってるかわからんし、足がちょっと不自由でヨチヨチ歩きやし、もちろん薬なんてグチャグチャ。お〜これは、、、やりがいあるな!と思いました。そうです。暑苦しい人なんです僕。
そんな状況の中、しっかり薬を飲んでもらえるようにあれやこれやとお手伝いをしていました。薬を一包化(薬を飲みやすいようにまとめること)して飲みやすいようにカレンダーにセットしたり、病院の診察日になったら電話したり、自分が休みの日には病院へ連れて行ったり。初めは週1回の訪問だったのですが、だんだんと訪問が必要な回数が増えてきて、結局週3回くらいは訪問していたと思います。そうして深くおっちゃんと関わっていくうちに、とあることに気づきました。

おっちゃんの口の周りがいつも黒い。最初は汚れかな?と思っていましたが、違いました。

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これでした。銀チョコパン。しかもダブル。ご存知ですか?スーパーとかで売っているめちゃおいしいパンなんですけど、おっちゃんはこれを毎日食べていたんですね。だから口の周りが黒かったと。よく見たら銀色の包み紙のゴミも毎日あるやんおっちゃん。
おいしいけどさすがに毎日これはまずいだろうと、いや銀チョコパンおいしいんですけど。まずくないんですけどまずいと。ということで(どういうことだ)何か別のものも食べてもらおうと思って、訪問の時にコンビニ弁当を買っていってみたんですよ。おっちゃんは意外とすんなり受け入れてくれて、ご飯中に色々な話をしてくれました。昔は役所で働いていた、奥さんは数年前に出て行った、などなど。結構プライベートなことも話してくれるようになったので、ある程度の信頼関係はできてきたのかなぁと嬉しく思っていました。

そんな対応をしばらく続けていたんですが、やっぱりコンビニばかりだと良くない(もちろんコンビニもめちゃおいしいし好きですが)、人の作ったものを食べさせてあげたいなと思って、近所の居酒屋さんを何件か尋ねてみました。前日の残り物なんかを安くゆずってくれないかなと思って。でも前日の残りを高齢者に、というところが衛生的にどうなん?とかそもそもロスがそんなにでない、ということでNGだったんです。

仕方がないので(自分で作って持っていく料理スキルは当時皆無でして…)コンビニ弁当をしばらく続けていたんですが、事件が起きました。

家族との別れ

ある日、いつものようにコンビニ弁当を持っておっちゃんの家に訪問すると、咽び泣くおっちゃんの姿が。そしておっちゃんの前には力なく横たわる犬の姿が…

おっちゃんが飼っていた犬が死んじゃってたんですね。元気そうにワンワン吠えて噛みつかれたりしてたのでまさか…でした。思い返せばこの犬、僕が出会った時から一部毛がなかったり舌が出っ放しになってたりしたのであまり良くない状態だったのかなとも思います。

大切な家族がいなくなったということで、情緒不安定になり、徘徊等が増え、おっちゃんの状態がかなり悪くなってしまいました。ケアマネージャーさんとの相談で、これ以上自宅で過ごすのは難しいという判断となり高齢者施設に入居することに。
施設入居、ということでおっちゃんとの団地での日々は終わりを迎えることになったのですが、このおっちゃんとの日々は僕の中ですごく大きくて、考えさせられることが多くありました。

おっちゃんとの日々を経て

僕はたまたま薬剤師で、たまたまケアマネージャーさんから依頼を受けて、おっちゃんのことを助けたいと思って関与することができましたが、僕のいる京都市伏見区には、全国には、あなたの町には、絶対にまだまだおっちゃんのような人はいると思うんです。
僕はこのような人たちを勝手に銀チョコ難民と呼んでるんですが、絶対にいると思うんですよ、銀チョコ難民。そんな銀チョコ難民の人たちに、何かできることはないのか?と考えた僕なりの結論がこちら。

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手作り健康弁当を作って、届けるということです。薬剤師や管理栄養士が監修した弁当を自分たちで届けることで見守りもできる、そんなことをやりたいなと、やらないとなと思って、金太郎弁当という弁当屋を令和3年3月、おっちゃんの団地のすぐそばでオープンしました。(ちなみに僕自身はこの時点で料理の経験も、飲食店経営のノウハウも全く0の状態で、オープンまでにめちゃくちゃ苦労しました。その点に関するストーリーは長くなるのでまた別の機会に。)

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おっちゃんとの出会いから始まった金太郎弁当。ここからは金太郎弁当が大切にしていることについてお話します。

大切にしていること

①薬局を利用してもらっている高齢者目線のお弁当を提供する

銀チョコ難民を助けたい!という想いで始まったお弁当屋さんなので、やはり目線は薬局を利用していただいているくらいの高齢者で、食事にお困りの方なんです。管理栄養士がメニュー開発を行い、PFCバランスの取れた、カロリーしっかり(600kcal以上)、減塩(2g前後)のお弁当を低価格(600円+税)で、という無理難題をなんとか実現しています。(管理栄養士さんすごい…)

また、通常のお弁当屋さんだと○○円以上の注文で配達料無料!という設定が多いと思いますが、独居の方が不利になってしまってはこの事業の意味がないと考え、配達料は1個からでも無料にしています。

※高齢者目線で開発しているメニューですが、若い方、特に子育て世代のお母さん方にもご好評いただいています。減塩でも味しっかり!「おいしい」の声が嬉しい、を日々実感しています。

②薬局と連携して高齢者のサポートをする

金太郎弁当のバリューは、銀チョコ難民のスクリーニングやキャッチアップをしてこそだと考えています。(カタカナ使って急にイキっていくスタイル)

独居でお困りの高齢者の方に、薬局として関わり出せるタイミングって、かなり遅いと思っています。

病気になる→薬を飲み始める→薬が増えてくる→しっかり飲めなくなってくる→調子悪いなあ→介護サービスが入る→ちゃんと薬を飲めてないことが発覚→薬局が介入

体感ですが、上記のような流れになることが多いと感じています。こうなってくると対応が後手になってしまい、できることが限られてしまいます。(もちろん在宅医療の現場で日々奮闘している薬剤師は多く居て、患者さんへめちゃくちゃ価値を提供しています。ここではあくまで、もっと早く介入できた場合と比べています)

この流れに弁当屋をうまく組み込むと、

弁当の配達を通じて体調確認→違和感があれば薬局や医療介護関係者の介入

と、かなり初期の段階で介入できると考えています。もちろん、違和感に気付くためには弁当屋メンバーに知識が必要です。そのためにSlackというチャットツールを利用して日々の配達時のお客さんの様子について社内で共有し、薬剤師メンバーとのやりとりを通じてスキルアップを図っています。

こうして「食事」という誰もが毎日行う行為を通じて見守りを行うことで薬局の早期介入に繋げるため、「自分たちで配達する」ということを大切にしています。ウーバーイーツ等、配達代行業者の利用はしない、と決めています。

③衛生管理を徹底する

銀チョコ難民を助けたい薬局の運営するお弁当屋さんで食中毒…なんて笑い話にもなりません。ですので衛生管理についてはかなり注意しています。

具体的には、厚生労働省の出している大量調理マニュアルを元にした内容としています。施設の規模的に難しいこともあるのですが、できるだけ沿うような形でルールを設定しています。

生鮮食品の使用期限は1日、調理温度管理の徹底(都度計測して記録)、持ち運び時間の制限(配達範囲の限定)等々…

正直言って厳しすぎてしんどい時もありますが、金太郎弁当オープン前に、薬学部時代に学んだ衛生学の教科書を引っ張り出して病原菌について復習し、食中毒の怖さを再認識するにつれて、絶対に衛生管理をしっかりしなければ!という意思が強くなり現在に至っています。

以上3つを大切にすることの真ん中に置いて、金太郎弁当は日々営業しています。


こうして薬局と弁当屋が連携して地域住民の方へ価値を提供していく、という事業を進めていく上で、気づいたことがあります。

「人の口から入るものは薬と食事しかない」

どうでしょう?他にないですよね?(これに気付いた後に「医食同源」とか「薬食同源」という言葉があるな…と気付きましたが、僕はこのひらべったい表現が好きです)

薬と食事の両方を僕たちがサポートする。これってめちゃくちゃ素敵なことじゃないですか?僕はこれを心から素敵だと思っています。

これを同じように素敵だと思ってくれる素敵な仲間と共に、今、いい事業やらせてもらってます。

助けたいと思う人

オープンから9ヶ月経ち、「ありがとう」「あなたが来るのを待ってた」「おいしい」といった言葉をいただけるようになり、助けたいと思っていた人たちに価値が届き始めていると実感することも増えてきました。また、想いに共感して応援してくださる方もいて、中には弊社に就職してくるツワモノまで現れました。こんな素敵な事業をやらせてもらえて、幸せです。


薬局がお弁当屋さんを作るという無謀な事業は、おっちゃんを助けたい!銀チョコ難民を助けたい!という想いで始まりましたが、助けたい人を想って動いていたら、実は助けられているのは自分たちだった、ということを最近強く実感しています。本当に感謝しかありません。いつもありがとうございます。

これからもこの想いブレることなく、全力で進んでいきますので何卒応援の程、よろしくお願いしまスープレックスホールドですおっす。


今日もまた、僕たちはお弁当を配達します。おっちゃんの入居する施設へ。


おしまい(to be continued…)


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