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2023年セレクトセール徹底特集

北海道・苫小牧…大盛況のうちに閉幕となったセレクトセール2023。私も直接、今年も現地北海道で参加しました。
 
「あなたが松沢さんですか?」
『…はい(誰ですか?)』
 
「Are you Mr.Matsuzawa?」
『…YES(どこの国の方ですか?)』
 
2023年セレクトセールも結構な数の関係者さんと話をさせて頂きましたが、例年と違うのは【諸外国の関係者】が非常に多かったという事。
 
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関係者A:
「I've read the press release. I thought my heart was going to stop. Is there a plan for the global expansion of META POG? I really hope that META POG will enter the Arab market soon.(プレスリリースの記事を読みました。心臓が止まるかと思いましたよ。META POGの世界展開の予定はあるんですか?アラブにも早くMETA POGが進出してほしいし、そう心から願っている)」
 
松沢:
「Yes. For instance, we are considering the expansion of META POG to major horse racing countries such as the UK, Ireland, France, Australia, the United States, Dubai, and Hong Kong. I believe it will develop as a service on a global scale.(はい。例えばイギリス、アイルランド、フランス、オーストラリア、アメリカ、ドバイ、香港など、競馬主要国へのMETA POG展開も考えています。世界規模のサービスとして発展していくと思います)」
 
関係者B:
「I've taken a close look at the prize money system of META POG, it's amazing. It certainly makes more money than being a horse owner. Where does the prize money come from?(META POGの懸賞金体系を詳しく見させてもらいましたが、本当に凄い。馬主をやるよりも確実に儲かりますね。懸賞金の原資はどこになるんですか?)」
 
松沢:
「The prize money is paid from advertising fees from sponsors. Think of it as a system similar to the PGA Tour in golf.(懸賞金はスポンサーからの広告費から支払われます。ゴルフのPGAツアーと近いシステムと考えてもらえば分かりやすいと思いますよ)」
 
関係者C
「I came from Ireland as part of enemy reconnaissance, and it's a lot of work to go to the auction in Japan. With META POG, is it correct that the auctions are held year-round?(敵情視察の一環でアイルランドから来たけど、日本までセリに行くのが大変。META POGなら年中セリをやっているって事で合ってますか?)」
 
松沢:
es, at the LQ-MARKET, you can always bid for LQs where horses are stored. You can buy and sell easily at any time, even after debut.(はい、LQ-MARKETで馬が格納されたLQをいつでも競り落とせます。デビュー後でも気軽にいつでも売り買いできます)」
 
関係者D:
「Do I need a horse owner's license? I'm very interested in META POG.(馬主免許は必要なんですか? META POGに興味津々です)」
 
松沢:
「You can earn just like a private horse owner without a horse owner's license. Although many people still don't know about META POG, there are already people who have secured a large number of LQs.(馬主免許なしで個人馬主と同じように稼げます。まだMETA POGを知らない人も多いですが、既に多数のLQを確保されている方もいます)」
 
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これらの質問攻めには正直驚きましたが、それでも、META POGのサービスに将来性を感じて頂けている事はヒシヒシと伝わって参りました。
 
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キングカメハメハ、ディープインパクト、ハーツクライの産駒はいなくなったが、それがセールとしてはいい方に作用したと思う。いろいろな牧場の馬が、どの価格帯でもほとんど一声で終わることなく売却され、セールとしては理想的だったと思います
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これは1歳セール終了後、日本競走馬協会の吉田勝己理事の初日総括です。2023年の1歳セールは231頭が上場(欠場馬9頭)222頭がセリに参加しましたが、売却されたのは216頭。売却率は「97.3%」で過去最高だった昨年の95.3%を更新。
 
売上総額「133億6500万円」も、昨年の128億7000万円を5億円近く上回る最高額。1頭あたり平均価格も「6187万5000円」で、昨年の5797万2973円を更新。その中で注目したいのは牡馬の平均落札価格が「7365万8730円」に対し牝馬の平均落札価格は「4537万7778円」だったこと。
 
牡牝で3000万円弱の差が出た…これは種牡馬になった際の見返りが大きい事の証左であり、各オーナーの狙いも明確に反映された結果。
 
特に現在は種牡馬御三家と言われたディープインパクト・キングカメハメハ・ハーツクライの産駒はいなくなり「種牡馬戦国時代」と言われる状況に突入しました。
 
エピファネイア・キズナ・ロードカナロアらの産駒が注目されてきましたが、そんな中で、次世代の注目種牡馬として初年度産駒からタイトルホルダー(菊花賞・天皇春・宝塚記念)、次年度産駒からスターズオンアース(桜花賞・オークス)、ヴァレーデラルナ(JBCレディスクラシック)、3年目産駒からリバティアイランド(阪神JF・桜花賞・オークス)、ドゥラエレーデ(ホープフルS)、シャンパンカラー(NHKマイルC)とGIホースを続々と送り出してきたのが「ドゥラメンテ」。
 
しかし同馬は2021年8月31日に急性大腸炎のため9歳で早逝。2022年産が最後の世代となりました。こうした事態の中で、次なる注目種牡馬となったのは…「キタサンブラック」。
 
初年度産駒からイクイノックス(天皇賞秋・有馬記念・ドバイSC・宝塚記念)、2年目産駒からもソールオリエンス(皐月賞)。それは2023年のセレクトセール1歳市場における平均落札価格を見てもらえれば一目瞭然。

2023年セレクトセール1歳市場
【主要種牡馬平均落札価格】

キタサンブラック産駒・全6頭
平均落札価格1億6283万円
 
ドゥラメンテ産駒・全14頭
平均落札価格1億478万円
 
ロードカナロア産駒・全9頭
平均落札価格8577万円
 
エピファネイア産駒・全13頭
平均落札価格8530万円
 
キズナ産駒・全14頭
平均落札価格7378万円
 
上場頭数こそ6頭と少なかったキタサンブラック産駒ですが、最終世代となるドゥラメンテを大きく上回る平均落札価格1億6283万円。イクイノックスの強さを目の当たりにすれば「キタサンブラック産駒が欲しい」と考える馬主が多くなるのも当然かもしれません。
 
キタサンブラック産駒の1頭、インクルードベティの22(牡)は3億1000万円で「ダノックス」が落札。
 
ダノックスの岡田ディレクターは
「うちにはキタサンブラックがそんなにいないので探していたんだよ。候補はいっぱいいたけど、これが一番よく見えた。牧場からも良い話があったし、クラシックを取るなら金に糸目は付けないのがオーナーの方針。あとは無事にデビューまで漕ぎつけて欲しいね」
 
と話してくれました。
 
これ以外にもキタサンブラック産駒はダイヤモンドディーバの22(牡)が1億7000万円でロデオジャパンが落札、アイムオールレディセクシーの22(牡)が2億9000万円で廣崎利洋HDが落札したように6頭中3頭が億越え。
 
ポスト・ディープインパクト…というには時期尚早ですが、世界ランク1位のイクイノックスを出した父キタサンブラックへの期待感は現地でセリを見学していても「凄まじい熱」を感じました。
 
まずは馬主が注目している種牡馬の話題から入りましたが、ここからは馬を購入したオーナーサイドに「どのような狙いがあったのか?」という部分に言及しますが、馬指名(指名馬をLQに格納)に向けて「どのオーナーの所有馬を狙うのが得策か」が見えて参ります。

2023年セレクトセール
【馬主別落札総額上位10名】

[1位]藤田晋
落札総額23億6900万円
(内訳:1歳8頭、当歳8頭)
 
[2位]ダノックス
落札総額21億5300万円
(内訳:1歳7頭、当歳6頭)
 
[3位]金子真人HD
落札総額15億8900万円
(内訳:1歳10頭、当歳2頭)
 
[4位]TNレーシング
落札総額12億1400万円
(内訳:1歳8頭、当歳0頭)
 
[5位]田畑利彦
落札総額11億9900万円
(内訳:1歳13頭、当歳7頭)
 
[6位]里見治
落札総額9億7100万円
(内訳:1歳6頭、当歳7頭)
 
[7位]廣崎利洋HD
落札総額7億5500万円
(内訳:1歳2頭、当歳3頭)
 
[8位]ノースヒルズ
落札総額7億2600万円
(内訳:1歳1頭、当歳3頭)
 
[9位]野田みづき
落札総額6億6200万円
(内訳:1歳5頭、当歳4頭)
 
[10位]今福洋介
落札総額6億4500万円
(内訳:1歳3頭、当歳4頭)
 
上記は2023年のセレクトセールにおいて落札額上位10オーナー。
 この一覧を見ても、各オーナーの狙いが如実に出ております。

【藤田晋】

2023年も総額23億6900万円を投じました。1歳馬8頭、当歳馬8頭と評判馬を満遍なく落札、ヤングスター22(牡)の2億1000万円を筆頭に「キズナ産駒3頭」を落札。クラシックを意識しているのが明確に理解できます。

【ダノックス・野田みづき】

ダノックスだけで21億5300万円、奥様の野田みづき氏を加えると28億1500万円も投じましたが、両名で合わせて1歳馬12頭、当歳馬10頭と藤田氏同様に満遍なく落札しております。1歳セールにおける目玉は先ほども取り上げた3億1000万円のキタサンブラック産駒インクルードベティ22(牡)。2億5000万円のエピファネイア産駒アンチュラス22(牡)、1億9000万円の同じくエピファネイア産駒カジノブギ22(牡)。皐月賞やダービーという牡馬クラシックとは無縁だけに、クラシック路線を意識した落札である事は明白です。
 
そして2023年のセレクトセールにおいて、異例の動きを見せたのは金子真人HD。

【金子真人HD】

落札総額15億8900万円
(内訳:1歳10頭、当歳2頭)
 
当歳馬2頭に対し、
1歳馬は「全部で10頭」を落札。
 
・ドゥラメンテ産駒2頭
・ロードカナロア産駒2頭
・アルアイン産駒
・ブラックタイド産駒
・ブリックスアンドモルタル産駒
・ミッキーアイル産駒
・モーリス産駒
・Wootton Bassett産駒
 
上記は金子真人HDが落札した1歳馬の血統一覧ですが、個人馬主で唯一三冠馬と三冠牝馬を所有し八大競走を制した金子真人氏だからこその血統ラインナップではないでしょうか。
 
クラシックというよりも短距離からマイルを意識した落札馬。日本の競馬界は日本ダービーを頂点とした馬造りが中心となり、種牡馬入りするようなタイプも中距離路線で活躍した馬の数が圧倒的に多いですが、世界競馬の主流はスピード化。
 
こうした将来の流れまでも見越して、スピード色強い血統馬を中心に落札を進め、その中からGIを複数勝つような馬が出て種牡馬入りでもすれば、種付け頭数も増えて儲けはデカくなる…
 
その象徴的な1頭は2億7000万円で落札したWootton Bassett産駒のグリーンバナナズ22(牡)。
 
Wootton Bassettは現役時代にフランスGIを制し、種牡馬入り後にはフランスダービー馬を輩出するなど産駒が大活躍。
 
グリーンバナナズ22の全姉アウダーリャは20年のBCフィリー&メアターフ覇者。同牝系には香港Cや三カ国で13勝を挙げたジムアンドトニックがいるように注目の血統馬となります。