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メ酒所感'24 #6(香子・花風の衝撃)


・日日 愛山 第三酒造期
-日々醸造(京都府伏見)

2024.02.06

日日初の愛山のみの醸造。昨年の山田錦×愛山の混醸のリリースから、楽しみにしていた一本。
鉱物や河原の濡れた石のような、硬質な香り。口に含むと、とろみを感じるテクスチャに、苦味。そしてハーブや若干のトロピカルさを感じる果実味。
非常に硬質な飲み口だが嫌な感じはせず、むしろ親しみやすさを感じる。
アイスが下の上で徐々に溶けるように、硬質な液体は苦味や酸味、
奥の方にある甘みなどを放出しながら瓦解する。
決してアッパー系ではない静かな味わいなのに、確かな味覚の充実感に心が震える。
大きな岩が上流から下流へ、流れに削られながら丸い石になるように
杜氏の培ってきた技術や人間性、哲学や姿勢といったものが
この非常に透明感のある一口に凝縮されている。


・あべ 純米吟醸 vol.1(五百万石) 23BY
-阿部酒造(新潟県柏崎市)

2024.02.16

程よいガス感と不透明で白濁した外観
すっきりとしたりんご様の香りがあり、テクスチャは硬さがあるものの
舌を刺激するガスが中和してくれる。
阿部らしい優しくもはっきりとした酸味が効いており、ドライに仕上がっている
今期純米吟醸を飲むのは初だが、昨年の純米吟醸 グリーン(たかね錦)の方が
雄弁だった気がする。
2日目は香りが開いており、果実味のニュアンスが出ている。
味わいの幅もあり、ジューシーに感じる。
開栓直後よりも後味の苦味がはっきり感じられ、全体としてのボリューム感と
後切れの良さが増した感じがある。


・FOMALHAUT Imperial Sake
-阿部酒造(新潟県柏崎市)

2024.02.20

阿部酒造×ユナイテッドアローズの3回目のコラボ酒。
前年の同商品で仕込む貴醸酒仕込みの貴醸酒の3度目。継ぎ足し継ぎ足しでタレを作る鰻屋よろしく、初年度の仕込みがずっと生き続ける素晴らしいプロジェクトだ。貴醸酒仕込みの貴醸酒といえば、旭興 千を思い浮かべるが、こちらはそちらとは少し毛色が違う。阿部らしい酸味は効かせつつ、綿菓子のようなとろりとした甘味。しかしあくまでりんご様の酸味が先行でさっぱりと飲める貴醸酒だ。
ストーリー性と大衆性を併せ持つ一本である。


・産土 香子 四農醸 2023BY
-花の香酒造(熊本県玉名郡和水町)

2024.02.23

産土の古代米、穂増・香子・花魁の3種のうちの一つ香子がついにリリースとなった。
生酛の臭み、産土の中でも特に瑞々しい梨の香り。前回の穂増 五農醸 では少し硬い感じや緊張感が薄らぎカジュアルになっていたので、少し期待感が下がっていただそれを吹き飛ばすポテンシャルであった。
弾け飛ぶ瑞々しさと、きめの細かい泡。登りたつ泡は見えないくらいに細かく、非常に凝縮された泡だ。味の膨らみはスケール感を演出し、香子ならではの穀物感が余韻となって現れる。純米吟醸クラスの美しいテクスチャと、低精米の野生味や荒々しさが共存する、摩訶不思議な味わいである。5月には香子 木桶 五農醸が発売されるとのことだが、これからの香子の可能性に注目である。


・交酒 花風 PROTOTYPE
-稲とアガベ(秋田県男鹿市)

2024.02.24

クラフトサケの代表格 稲とアガベの新商品''交酒 花風''
ホップを用いたシンプルなクラフトサケながら、この商品の持つ意義は大きい。
不透明なほどの濁りと、ピンクグレープフルーツやライチなどの果実味が華やかに香る。
苦味も程よくあり、その上に桃などの感じる甘味が乗っかる。精米90%のボリューム感を十分に感じつつも、カジュアルな味わいに仕上がっている。
クラフトサケがかかえる''クラフトサケ''とは何なのかという一つの答えであると思うし、値段などの面でかなり大衆に寄っている。わかりやすく大味ではあるのだが、決してクオリティを下げているのではないのが肝である。
わかりやすくも、また違ったものを飲みたいと思わせる探究心もくすぐる素晴らしい酒だ。これから先クラフトサケがさらなる躍進を遂げる時、この酒が一つの指針になるに違いない。




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