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コーヒーとTシャツ

休日は、出かける予定がたいしてなくても、なるべくパジャマを脱いで、今日は何を着ようか、と考えるのが好き。夏日のように暑い日が続くと、せっかく出した暖かめの春物、例えばニット、厚みのあるカーディガンなんかはもう汗っかきの私には無理だ。早めに出しておいた夏物の中からチャンピオンのTシャツとデニムを引っ張り出して着替える。


ハンガーにかかったスプリングコートもあっという間に時期が過ぎていったみたいだ。本当はこの時期の服が一番好きなのに、一番早くあれもこれもと考えているうちにどこかに行ってしまって、また長い夏が来る。はあ、せっかくこないだ出したのにまたしまうんかあー、なんて考えると嫌になりそうだから、とりあえずコーヒーでも飲むかとティファールのスイッチを入れてソファーに転がった。


私は農業をしていて、日頃は汚れ仕事なので作業着やジャージばっかりを着ている。これはもう諦めているというか、なんといってもとにかく汚れるので、特に仕事中に自分の気に入った服を...とは思ったことがない。動きやすくて、ガンガン汚しても悔いが残らないものを選ぶ。

たまに、農業は汚い、ダサいというイメージを払拭したくてデニムを履いて仕事しています!とこだわりを持っている人もいる。試したことはないが、ちょっと暑そうな気もする。

また逆に、もう、いつ捨てても構わない服しか着ない。という人もいて、それが意外に成功している大きな農家さんに多かったりして、面白い。服一つでもその人のポリシーや、思想が表れている。


作業着をほぼ毎日着ているから、服を買うのが好きなんだけれど、あまり着れていないのが本当だ。でもつい買ってしまう。だから着れるときにはなるべく着とかなくちゃと引き出しを漁ってみる。

こないだ、よっしゃ今日は出かけるぞー!何を着てやろうかとあれだこれだと引っ張り出して散々着替えてふと気が付いたら、てろんとしたシャツに黒のパンツにジャケットを合わせていて、休日なのにOLさんのような格好をしている自分がいて、笑ってしまった。

なんかカッコつけて仕事に少し出て早めに切り上げてちょっと買い物に...な風を装っているけれど、実際は前日まで毎日ジャージに髪くくって外に出て、ポッドに土を詰めて苗を植えて何回も何回も水やったり、長靴でハウスによじのぼってビニールの埃を沢山かぶりながら必死こいて広げたりしている。なんなんだろう。少し会社員に、オフィスカジュアルとかいうやつに憧れを持つ自分もいる。

パンツにヒールを履いて、バリバリ仕事している人生だったらどうだっただろう、なんて想像もしてみる。格好いいかもしれない。


そう思いながらコーヒーを飲もうとしたら、すこしこぼしてTシャツにシミができている。慌ててウエットティッシュを出して拭いたけれど残ってしまった。実際は、どんくさくて、ずぼらで、雑である。

憧れてはみたものの、やっぱり自分にはジャージで、泥もお構い無しでやるのが一番合ってるのだろうな。また今日も動きだそう。でもまずはコーヒーを飲んでから。

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