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元気な社会(四)


 
 
 
 

❞元気な社会❞(四)


 
 
 ロバートはつづけた。
「で、もうひとつは、都会から休養でくる若年労働者や青少年の、こころの病に寄り添いたいのです。もちろん、この島で生まれてすごしてきた人たちなら、そんなこともないのでしょう。でも、都会の職場、学校、家庭では、何かとテクノストレスや情報過多からくる生活の連続で、こころが負担を負ってしまうのです」
 
 島のみんなは、口々に分からない反応で語り合っている。
 ロバートは、
 「都会で起こした病気は都会では治せないのです。デリケートなこころやからだを大事にするには、このような、空と緑と風と土と、それから夜はまたたく星の環境で、大自然の気に助けられて、こころをとり戻すしかありませんから」
 と、説明した。
 
 その種類の話に実感をもてない村人からは、
「都会って、そうなんですかね」
 と、やはり、わけがわからないようすである。
 
「人が多くて魅力的な印象はあるのですが、それが、気がついたらストレスをためてしまうのです。つまり、こころにさからう悪条件が、そこかしこにあって、それはまた避けられないわけです」
 と、ロバートの話は止まらない。
 
「それに…」
とつづけようとすると、
「え~。まだあるんですか?」
と、お年寄りの声。
「じゃあ、また、おいおい説明することにしましょうかね」
と、いったん話は中断である。
 
 「むつかしいことばかりを考えるんでしょうね」
 ロバートは大きくうなずくように、
「それは当たっていますね」
 と、あらためて都会生活の難しさを感じていた。
 
つづく

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