【ネタバレ有】静かの海のパライソ

2021年9月27日
ミュージカル刀剣乱舞 静かの海のパライソ
初日配信の感想。
ネタバレあり
壁打ち。

まずは、無事に幕が開いたことをお祝いしたい。
約1年半ぶり。
前回のチケットが当たっていた私にとっては、水心子の言葉を借りれば、まさに、『失われた時間』だった。
なおチケットは取り戻せていない。討死(合掌)

初日はいい芝居をする!と、言う事で。
休み取ってまで観たパライソ。
休み取ったかいがありました。

タイトルと松井が編成に入っていることから、島原の乱まで予想は出来ていた。
予想出来たはずの結末。
皆殺しの結末。
分かっていても、抉られる内容だった。
分かっているからこそ、悲しい。
キリシタン側だけでなく、松井がいることで幕府側もしっかりと描かれている。

簡単な流れを確認。
鶴丸の采配で、島原の乱に出陣。
するが、山田右衛門作と天草四郎は時間遡行軍に襲われ、天草四郎は殺されてしまう。
天草四郎の歴史上の曖昧さを逆手に、鶴丸は日向浦島と共に天草四郎を演じることで、歴史を修正する事に。
キリキタンの軍勢3万7千人を集め、幕府と対決する。
幕府を率いるのは、知恵伊豆こと松平信綱。
天草四郎の存在を刀剣男士が肩代わりしたことにより、歴史は正しい方へ。しかし、それにより今度は幕府側が遡行軍に狙われる可能性から、松井豊前は幕府側へ。
決戦の地は原城。
目指す結末は、山田を除くキリシタン軍皆殺し。
鶴丸国永が語る、島原の乱とは!?

配役が絶妙だ。
幕府側の刀として松井
松井のフォロー役として豊前
豊臣方としての日向
島原の乱後に生まれ、何も知らない浦島

何も知らない浦島が観客側の誘導役になり、この地獄をストレートに嘆いてくれる。
幕府側の松井が、人を殺す事を躊躇ってくれる。
また、幕府側として、子供まで斬らなければならない葛藤を描く。
豊前はためらう松井に、自分も一緒に血にまみれてやると寄り添い、松井の苦しみ(それを見ている観客の心情)を軽減してくれるくれる。
日向はキリシタンの蜂起と言われているが、そこに多数の抑圧された思惑が混ざり込んでいることを表現し、全部を背負う覚悟のある鶴丸と、寡黙にそれを支える大倶利伽羅がかっこよすぎる。

作品の流れも完璧だ。
阿津賀志ラインから『役割』
天狼傅ラインからは『悲しい(故に強い)』
大河にあたるみほとせラインからは、成り代わりと子守唄を重ねてくる。
『境界線』のキーワードは心覚に入っていて、心覚では『人の心に』しか存在しないと語られる。

幕開けで速攻全力の人間キャストによるミュージカル。
レベルアップ見せつけてくるやん?
弾圧された抑圧されたインフェルノから、救世主に導かれパライソを求めて立ち上がる。
隠れキリシタンの蜂起、島原の乱。
一般的な解釈。
大まかに流れを理解させちゃうとこ、うますぎ案件。

特に気になったキャラについて、とりあえず纏めておきたい。

鶴丸
正直鶴丸は、もっと三日月よりな刀だと思ってた。
現に、『松井が何か言いたそうなので〜』あたりは、『小狐丸どのに〜』に合わせてあるようだった。
この辺はミスリードにまんまと乗っかった感じだろうか。
物語が進むと、鶴丸は鶴丸なりの任務のやり方が見受けられるし、仲間に対する当たりも三日月と違うなと。
『ごめんな、浦島』や『(豊前に)鬼だろ』あたりにそれがよく出てたかなと。
鶴丸にとって大倶利伽羅の存在価値は大きく、自分をさらけ出せる相手がいるのが、三日月との違いか。
鶴丸が単純な三日月の後釜かな?と思ってたけど、パライソで鶴丸のキャラの深みが増した。

豊前
コイツ、スゴいな。
言い方悪いけど、おバカで単純単細胞。
考えるより体動かすタイプ。
いや全くもって、そうなんだけど。
勘がいいのか、状況も相手の心情を正しく理解できてる。
それでいて、唯一、忖度無しに鶴丸に意見を言える。
深い考えがあるわけじゃないけど、自分はこう思う!と、誰にでも発言できるのは凄い。
冒頭の時間遡行軍戦では、逃げた?に対しいち早く『いや、違うな!』
松井と幕府軍に行けと鶴丸に言われるシーンで『鬼だろ?』に対し『あんがとな』と、松井に必要な事と鶴丸の思惑を理解できてる。
人を切れない松井に『いいよ!言わなくて』
どこを取っても正しく選択をしてるのは、凄い。
心覚では、間髪入れず(五月雨が考えるより先に)道灌を切ってるし、その判断力は見事なもの。
印象的なのは、『(戦が間違いなら)俺たちは間違いの道具か』と憤るが、伽羅に考えるだけ無駄だと言われ、即座に考えるのを止める。
考えるのが苦手なキャラだと言えばそれまでだけど、今は分からないから考えない。という正しい判断ともとれる。
なかなか只者じゃないキャラになってるが、それら含めて豊前らしいのがいい。

浦島
何も知らないキャラとして、重要なキャラ。
何も教えてもらえず、つらい思いをしたのに鶴丸を責めたりしない(松井は咄嗟に殴ってしまった)
『強い人は、強くならざるをえなかったから強い。その分、悲しい思いをしている』
蜂須賀から聞いたってところがエモポイントだが、これを最初から知ってるが故に、自分より強い鶴丸は、きっともっと辛いんだ。と、想像することができる。
素直で優しくて思いやりがある。
天狼傅のいいところを最大限に引き継いだキャラに仕上がってる。

物語として秀逸で奥が深くて、ホントにいい芝居だった。

が。
懸念事項として。
ここまで刀剣男士に、人を切らせていいものか?
刀剣男士は時間遡行軍と戦うもの、という大原則のような設定があるのだが、そっちのけになってない?
いい芝居だったが、刀剣乱舞でやる事だったか?
特に天草四郎を殺す理由とは??
キリシタン側は負けが確定しているのに?
今作は『平和』がテーマだろう。
戦争をしてはいけないんだと、分かりやすく伝わったとは思う。
しかし、そのためだけに天草四郎を退場させるには、やや無理矢理感があったかなと。
原作がない作品なら、これで良かったと思う。
ただ、刀剣乱舞として時間遡行軍が天草四郎を狙う理由が薄かったと感じてしまう。
また、松井豊前が幕府側で人を殺す必要も薄い。
わざわざ松井豊前が出なくても、10万の幕府軍に歴史通りなで斬りされて終わるはずでは。
しかも、なぜ幕府側を遡行軍が襲わないのか?
遡行軍が狙った歴史改変ってなんだ?
島原の乱を起こさないこと?
あと、原作をプレイしている人のなかには、任務のためにうちの刀も人を切るのか?と考えてしまう人も出る。
別本丸とはいえ、同じ刀剣男士である。
うちだったら、どうしよう。
審神者として、自分の刀剣男士の行為に責任があるのは当たり前だと思うので、失敗になってもいいから帰って来いと言うか、人を殺してでも続行させるのか。
戦は間違いだと鶴丸は言うが、時の政府と歴史修正主義者は絶賛戦争中である。
あまり生々しく刀剣男士が、人殺しするシーンがあると脱落者が出かねない。
これは、刀剣男士を思うが故なので、あまりよろしくないかなと。
歴史を守るために、『時間遡行軍と戦う』のが刀剣乱舞らしいと思う。

ただ、ホントにいい芝居なんだ。
『理由』を手にした人間が、愚かな過ちを犯していくシーンなんて、ホントに良く出来てる。
異教徒という境界線を引き、線の外は悪だと寺院を焼き払い。
一揆に加わらない者と線を引き、こちら側につかないなら殺す。
線引くのはいつだって人間だ。
これが心覚に引き継がれるが、心覚には線が必要なこともあると言っているのが面白いところだと思う。
争わないという線が引けるかどうかなんだろうか?

幕府側は少ない人数ながら、要点を抑えたキャラ配置はお見事。
知恵伊豆。
この作品にこの知恵伊豆がいてくれて良かった。
基本的に残った人は、背負って生きていくので悲しいが、その覚悟ができる人。
なので三日月がいたら、友と呼ぶのは松平信綱なんだろう。
んで、鶴丸は全部救ってやれよ!!!って叫ぶんだね。
全部救いたいけど、出来ないって分かってるからね。
お互いね。
お互い様。
あまり無理をするな。(このセリフは一字一句予想できた)
ま、三日月に言っても『冗談だ』ではぐらかされて、鶴丸にいたっては『しゃらくせぇ!』って言われちゃうからね。
いや、どっちもあんまり無理しないでね。
審神者の精神、削れちゃうから。

四郎
天草四郎の逸話をてんこ盛りにし挙げ句、キレイに序盤を回収して行く、見事な仕上がり。
この四郎を『存在しない』と、見抜く知恵伊豆が、また素晴らしい。

武士2人
戦を知らない時代に生まれた武士たち。
コミカルに可愛げがある仕上がりだが、戦を知らない彼らが、戦のために武器を抜く過程がちゃんと見える。
江戸の武士の姿から心覚がボンヤリとだが見えてきて、かなり重要なキャラだなとおもった。


纏まらないけど終わり。

これを書いてる間に聞いてた歌でも贈ろうか。

振り下ろされたのは
怒りの制裁か 鎖を解き放つ祝福か
境界線の結末は 容易く翻るもの
Roll The Dice,Roll The Dice
頬に浴びた雨は
誰が名残か 嵐を呼んだ
安らぎさえも知らぬ
熱き衝動 導かれて進め
Without forgiveness Wo-O-O-Oh Wa-Oh
退屈 斬るよりマシさ
Kiss Goddess of Death Wo-O-O-Oh Wa-Oh
心が転がる方へ

(西川貴教 Roll The Diceより)

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?