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●餌族の番

あらすじ
吸血鬼の男4人が番候補である主人公の彼女(声なし)と過ごす日常を描いた逆ハー作品。
吸血シーンあり。兼役あり。

《キャラ設定》
【ヨナ】♂
優しい系で爽やか。抜かりないやり方で隙をつく。
ライトの兄。カイとは同級生。
男Aと兼役。

【ライト】♂
腹黒系男子。口が悪く、わりとずる賢いドᏚ。
ヨナの弟。
男Bと兼役。

【リュウ】♂
メンバーの中ではわりと年上。
手先が起用で優しいおじさん風だが、結構変態。
カイの母親の兄。
男1と兼役。

【カイ】♂
口が悪く、態度もでかいく変態。
だけど一途でまっすぐで嘘がつけない優しいとこもある。
リュウの甥っ子。ヨナとは同級生。
男2と兼役。

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利用契約について https://note.com/merrow15/n/n6802d670f4df

性別変更不可。人数変更不可。

ーーーーー
本編
↓↓

ヨナ
「この世界には吸血鬼が存在している」

ライト
「彼らは生きるため、人々を餌として扱い、狩った」

カイ
「やがて人類はその身を守るため、『餌族(えぞく)』と呼ばれる生贄の一族を作りあげた」

リュウ
「餌族は人より血液が多く、さらに血液を作る能力も長けており、まさに吸血鬼のために産まれた一族」

ヨナ
「しかし、吸血鬼とてどんな人間の血でも良いわけではない。血にも相性があるのだ」

ライト
「相性の悪い相手の血を飲むと、最悪死に至る。
 逆に相性の良い者の血は美味であり、魂まで惹かれるという」

カイ
「その相手を、見つけるのは困難であり、出会えること事態がまさに奇跡。
 吸血鬼はその相手を番(つがい)とし、生涯愛することになる」

リュウ
「だが、餌族は数が少ないため、複数の吸血鬼で1人の餌族を囲うのも珍しくなかった」

ヨナ
「これは、一人の餌族を愛してしまった」

ライト
「4人の吸血鬼の愛の日常のお話である」

(間を開けて)

ヨナ
「寒い冬の日」

(少し間)

ヨナ
「今日はとても冷えるね」

ライト
「見てよ兄貴。外、雪降り始めてる」

ヨナ
「うわ…本当だ。
 今日は暖かくして眠らないとだね」

ライト
「じゃあ、3人で寝る?」

ヨナ
「(くすっと笑う)それはいい案だね」

カイ
「ヨナ、ライト。
 何、抜け駆けしようとしてるんだよ獣共が」

ライト
「獣…って。お前が言うなよ、野獣みたいな性格のくせに」

カイ
「本能に忠実で漢らしいだろ?」

ライト
「理性がなくて気持ち悪い変態の間違いでしょ、カイ」

カイ
「ああん?」

リュウ
「そのへんにしておけお前ら。
 ほい。暖かいココア。
 暑いから気をつけてな」

カイ
「あっ!
 叔父さんまで抜け駆けしてる!」

リュウ
「彼女が寒そうにしていたから、温かいものを提供しただけだろ」

ライト
「じゃあ、僕も寒いから温かいものちょうだいよ」

カイ
「あ、俺も!」

リュウ
「お前らは自分でやれ」

カイ
「やっぱり下心あるじゃねぇか!」

ライト
「ヤダヤダ。意地汚いオジサンって見てて気持ち悪いよね」

リュウ
「へいへい、なんとでも言え。(暖かいコーヒーを飲む)」

ヨナ
「また幼稚な喧嘩を始める…。
 彼女が困るでしょ?
 騒がしくしてごめんね」

リュウ
「とか言いつつ、さり気なく自分の上着を着せるとこは、やっぱさすがだねぇ。抜かりない」

ヨナ
「リュウさんほどじゃありませんよ」

リュウ
「むしろ俺より質(たち)が悪そうだ」

ヨナ
「褒め言葉として受け取っておきますね」

ライト
「…ほんと、自分の兄貴ながら、性格悪」

カイ
「一番性格悪いのはお前だろうが」

ライト
「何か言った?」

カイ
「ああ言ったさ。
 一番性格が悪いのは、お前だろって」

ライト
「お前には言われたくない」

カイ
「一番口が悪いものもお前だな」

ライト
「お前にだけは言われたくない!」

リュウ
「はいはい、そこまで。
 何度言えばわかるんだ?
 彼女の前で喧嘩は止めろ」

カイ
「けど、こいつが!」

リュウ
「喧嘩は止めろ。それだけだ」

カイ
「うっ…」

(カタカタと風でドアが鳴る)

リュウ
「っと。吹雪いてきたな」

ヨナ
「大丈夫?寒くない?
 (そっと後ろから抱きしめる)…これで、少しは暖かくなるかな」

カイ
「あっ、またお前、抜け駆け!」

ヨナ
「お前はそればっかりだね。
 そんなに他人が羨ましいなら、自分もすればいいでしょう。
 彼女が嫌がらないことなら、何したっていいだろ?
 僕達の関係は、あくまでも恋敵。
 抜け駆けしてナンボっていう関係のはずだけど?」

カイ
「くっ」

リュウ
「ヨナの言うとおりだな。
 まぁ、彼女を後ろから抱きしめるという役割を取られてしまった以上、こうするしかないか…(彼女の右の手のひらにキスをする)
 手、冷たいな」

ライト
「なるほど。
 じゃあ、僕は左手を…(彼女の前にしゃがみ、左手に温かい息を吹きかける)
 ほんとだ。冷たいな…」

カイ
「あっ、ずりぃ!」

ライト
「こういうのは早い者勝ちだろう?
 それに、モタモタして彼女が寒い思いをするほうが大問題だ…(左手に温かい息を吹く)」

ヨナ
「ほら、耳もこんなに…
 (左耳にキスをする)」

カイ
「なっ…!」

リュウ
「それは大変だな。
 今…温めてやる…(右耳を執拗に舐める)」

ライト
「ずっる。
 じゃあ、僕は…(彼女の指を口に含み、舐める)」

カイ
「お前ら…っ」

ヨナ
「ははっ。悔しそうだね。
 でも、もう空いているとこはないよ。
 モタモタしているからこうなるんだよ」

ライト
「やっぱり一番性格悪」

ヨナ
「褒め言葉、ありがとう」

ライト
「…(嫌そう)」

カイ
「…っ。くっそぉ…」

リュウ
「いい勉強になったろ。
 だから次からは喧嘩なんぞせず、まっさきに彼女のことを…って、お前、何を…」

カイ
「何って。…足、冷えてるだろうから、温めてやろうと思ってな」

ライト
「え(ドン引き)」

カイ
「(足の裏を躊躇いなく丁寧に舐めていく)」

リュウ
「まじか…」

ヨナ
「足の裏を、舐めはじめた…」

ライト
「とんでもない変態だな」

ライト
「だけど…
 (欲情した声で)悔しいくらい、いい声で鳴くね」

ヨナ
「ライトも変態だね」

ライト
「変態でいいよ。
 彼女が悦ぶなら、なんだっていい」

リュウ
「それには同感だな」

ヨナ
「だめだ…いい声聞いてたら、吸いたくなっちゃった」

ライト
「吸えばいいじゃん。
 いっそ、吸ってあげたほうが、より一層気持ちがいいんじゃない?
 君は、吸われると感じちゃう変態さんだもんね?(楽しそうに)」

ヨナ
「そっか、吸ってほしかったんだ。
 ごめんね、気がついてあげられなくて
 それじゃあ、僕から…。
 いただきます(彼女の肩に牙をたてて血を吸う)」

ライト
「あはっ。本当に最高にいい声で鳴くよね。可愛い」

ヨナ
「(口を離す)
 ああ…美味しい」

ライト
「じゃあ、次は僕がいただきます
 (逆の肩に牙をたてて血を飲む)」

リュウ
「おい。牙の跡を増やすな」

ライト
「(飲みながら話す)
 いいでしょ別に。すぐ治るんだし」

リュウ
「良くない。
 嫁入り前だぞ」

ライト
「(飲みながら話す)
 じゃあ、僕が娶るから問題ないね」

カイ
「はぁ!?
 それじゃあ俺が娶るわボケ」

ヨナ
「いや、僕が娶る」

リュウ
「吐(ぬ)かすな。俺の嫁だ」

カイ
「はぁ!?
 いつ叔父さんの嫁になったんだよ!」

ライト
「はぁ…(口を離す)
 ゴタゴタ煩いんだけど。
 飲んでるときくらい静かにしてくれない?
 せっかくの極上のディナーなのに、ゆっくり味わえないんだけど」

カイ
「ああ、悪い…ってか、お前が娶るとか言うからだろ!?」

ライト
「嫁入り前とか言うから」

リュウ
「嫁入り前は嫁入り前だろ。
 たとえ自分が娶るとしても、嫁入り前の体を傷だらけにするんじゃない」

ヨナ
「厳しいというかなんというか…細かい」

ライト
「五月蝿いというかジジ臭い」

カイ
「大人気ねぇっつーか、古クセェな」

リュウ
「散々な言われようだな」

ヨナ
「興が削がれちゃった」

ライト
「雰囲気が台無しだね」

カイ
「俺、まだ飲んでねぇんだけど…」

ライト
「お前は飲まなくていいよ」

カイ
「あんだと?」

ヨナ
「まぁ。兎に角、今日はもう解散。
 彼女も十分温まっただろうし、早くお布団に入れてゆっくり眠ってもらおう」

ライト
「今ならゆっくり眠れるでしょ?」

カイ
「…叔父さんのせいだぞ」

リュウ
「俺が悪いのか?
 …あー。なんか、すまんな」

カイ
「ちぇ…飲みたかった」

リュウ
「すまんて」

ヨナ
「さ。お部屋までエスコートするよ」

ライト
「あれ?もしかして、腰が砕けて立てないの?(楽しそうに)」

ヨナ
「そんなに、気持ちよかった?(意地悪そうに)」

ライト
「アハハ。
 そういうとこ、ほんとやらしいよね、君の体。
 あーあ、全身真っ赤にさせて、かわいいねぇ。
 もっといじめたくなっちゃう」

ヨナ
「ライト、そのへんにしておいて」

ライト
「えぇ。別にいいじゃん。
 彼女、悦んでるんだし」

ヨナ
「恥ずかしがってるんだよ」

ライト
「恥ずかしいのが、嬉しいんでしょ?」

ヨナ
「あんまりいじめちゃダメだよ」

ライト
「なんだよ。楽しいのに。
 お前らだって、本当はいじめられてヨガってるこの子を見るのが堪らなく好きなくせに」

リュウ
「否定はできんな」

カイ
「同じく」

ヨナ
「変態どもめ」

リュウ
「でもまぁ。
 どうせいじめるなら二人きりの時がいいな。
 可愛くヨガりながら快楽に堪える姿を他のやつに見せるのは、面白くない」

ライト
「確かに。それもそうかも」

ヨナ
「二人きりになんてしてやらない」

リュウ
「それはお互い様だ」

ヨナ
「わかってるよ」

リュウ
「ほら、長話していたらこいの体ががまた冷えまうぞ。
 今日はこの辺で解散だ。散れ」

ヨナ
「そうだね。それがいい」

カイ
「へーい」

ライト
「はぁーい」

ヨナ
「それじゃあね。
 おやすみ。いい夢を(ほっぺにキス)」

リュウ
「部屋に戻ったら、すぐふとんに入るんだぞ?
 おやすみ(ほっぺにキス)」

ライト
「寂しくなったら、いつでも僕の部屋においで。
 可愛がってあげるからさ。
 とりあえず、おやすみ(ほっぺにキス)」

カイ
「こいつより俺を呼べ。
 いくらでも甘やかしてやるからな。
 おやすみ(ほっぺにキス)」

(間を開けて)

ライト
「お出かけ」

(少し間を空けて)

(ヨナとライトと彼女の3人でお出かけをした日。
 ケーキ屋さんに着く)

ヨナ
「じゃあ、今から注文したケーキ取りに行ってくるから、ここで待っていてね」

ライト
「すぐ戻ってくるから、いい子で待ってるんだよ」

(場面代わり、外)

男1
「あーあ。なんか楽しいことねぇかなー」

男2
「毎日同じことばっかで、つまんねぇもんなぁ」

男1
「まぁ、俺らみたいな若いのは雑用くらいしかやることねぇし」

男2
「でもさ、下っ端みたいに扱われんのムカつくよなぁ〜」

男1
「わかる。
 偉そうにされんのもだりぃよなぁ〜」

男2
「俺らは同族であって眷属(けんぞく)じゃねぇっつーの」

男1
「だよな」

男2
「あーあ。
 なんかおもしれぇことねぇかなぁ〜」

男1
「なぁ〜。
 あ。…なぁなぁ。血とか吸うのはどうだよ。
 楽しそうじゃね?」

男2
「血?
 献血パックでも買うのか?」

男1
「ちっげーよ。
 ほら、あそこ見ろって」

男2
「えっ、なに。ケーキ屋?ケーキ食いてぇの?」

男1
「そうじゃねぇだろ!
 中、中を見ろ、中を!」

男2
「中…あっ!女がいる!
 珍しいな。こんなとこで女が一人ケーキ屋なんて」

男1
「だろ?
 あれひっかけて、ちょっといいことしねぇ?」

男2
「いいねぇ。
 そういう刺激がほしかったんだよなぁ〜」

男1
「2人で思う存分、味わってやろうじゃん?」

男2
「久々の生血、テンションあがるぜぇ〜(卑しい笑い)」

男1
「(卑しい笑い)」

(ケーキ屋)

男1
「あー、すみません?
 俺らケーキ食いたいんすけど、男2人じゃ食べづらくて。よかったら一緒に座っても?」

男2
「まぁまぁ、そうかたいこと言わないで。
 …知り合いと来てる?やりぃっ!
 じゃあその人も一緒に食べればいいじゃん」

男1
「(小声)女3人相手じゃ分が悪くないか?」

男2
「(小声)最悪、1人は逃がしゃいいじゃん」

男1
「まぁ、それもそうか。
 それで、残りの2人はケーキ取りに行ってんの?」

男2
「じゃあ、俺はそっちいくからお前はこの子と一緒に待ってろよ」

男1
「リョーカイ。
 じゃ、遠慮なく隣に座って…」

(男1が言い終わる前にライトが暑いコーヒーを男1の頭にかける)

男1
「あっちぃ!」

(以下、ブチ切れのヨナとライト)

ライト
「何してんの、三下が」

男1
「てめぇこそ、いきなりなにしやがる!!」

ライト
「は?何許可なく喋ってんの?
 息すらしてほしくないゴミ虫がそこに這いつくばるだけでも目障りなのに、なに僕と会話しようとしてんの?つかなんせ立ってるの?
 そもそも、彼女に近づいてんじゃねぇぞ。コロスぞ、クズが」

男1
「はぁ?何言って…」

ヨナ
「やめときな、ライト。
 そんなゴミのためにお前が手を汚す必要はない。
 …あーあ、帰ったらすぐ洗わないとね」

男2
「な、なんなんだよ急に…。
 獲物を横取りするつもりか?」

ヨナ
「横取り?横取りしようとしてるのはそっちでしょ?
 というか。獲物って、ナニ?は?お前何いってんの。お前ごときがなんで彼女を下に見ているんだよ。思い上がらないでよ。
 彼女は僕の番だ。触れるどころか見ることすら許さない」

ライト
「僕の番なんだけど」

ヨナ
「…今は僕たちの番ってことで」

ライト
「…今は、それで手を売ってあげるよ」

ヨナ
「物分りのいい弟で助かるよ」

ライト
「それで?…これ、どうするの?」

ヨナ
「どうするもなにも。…殺処分でしょ」

ライト
「さっきは手を汚す必要はないって言ったじゃん」

ヨナ
「別に僕達が直接、手を下す必要もないでしょ」

ライト
「…まぁ、それもそうか」

男1
「なっ、なにをさっきからごちゃごちゃ言ってんだよ」

男2
「番がどうした。
 そんなに番が大切なら、おうちに縛り付けて管理しとけよ…」

ヨナ
「それはお前が決めることじゃない」

ライト
「僕だってそうしたいけど、それじゃこの子が苦しむからしないんだよ。
 大切にするって言葉、ちゃんと理解できてる?
 ああ、できないか。脳みそないもんね、お前ら」

男1
「なんだと、ああ?
 言いたい放題言いやがって、やんのかコラァ」

男2
「なっ、なぁ…ちょっと…」

男1
「ああ?なんだよ、止んじゃねぇよ」

男2
「いや、でも、ほらっ…こいつらよく見たら、有名な兄弟なんじゃねぇの?
 あの、頭が切れる…めちゃくちゃ強いっていう…」

男1
「えっ?…あっ…まじじゃん…」

男2
「おい、どうすんだよこれ…」

男1
「どうするったって…謝るしか…」

男2
「謝罪受け入れてくれるようなタマかよ」

男1
「そんなこと言われってよぉ…」

ライト
「…何さっきからそっちで盛り上がってんの?」

男1
「えっ!?いやっ、あのっ、なんて言うか…そのっ…」

男2
「こちらの手違いといいますか…」

男1
「そう!
 こちらの手違いで、ちょっと色々、なんか、その…ご迷惑?をおかけしたみたいでして?」

男2
「とっ、とりあえず、本日はそろそろお帰りさせていただきたく存じまして、ええ…」

ライト
「何言ってんの?」

男1
「ひいいっ!」

男2
「そうですよね!すみませんっ、すみません!」

ライト
「いや、まじで言ってる意味がわかんなかっただけなんだけど…まぁいいや」

ヨナ
「君たち、過ちに気づいて、謝る気になったみたいだね」

男1
「ええそうです、そうですとも!」

男2
「すべて我々に否がありまして、謝罪をして速やかに姿を消させていただきますとも!」

ヨナ
「あはは、そっかぁ」

男1
「ええっ、ええっ!」

男2
「本当にすみませんっ!」

ヨナ
「アハハハハ………。
 (深いため息のあと、静かにキレるように)
 その程度で逃がすかよ」

男2
「ひいいいっ!」

男1
「すみませんっ、すみませんぅぅぅっ!」

ヨナ
「ライト。
 始末屋に連絡してこいつら連行させて」

ライト
「兄貴は?」

ヨナ
「彼女と家に帰る」

ライト
「いいとこ取り?」

ヨナ
「お叱りは僕がされてやるからライトは始末をお願い」

ライト
「ああ。なるほど。
 じゃあ、お言葉に甘えて」

男1
「ひいいっ、お助けをぉ〜っ」

男2
「ごめんなさい、ごめんなさいぃっ」

ヨナ
「君もごめんね。怖かったでしょう?
 家に帰ったら、ゆっくり温かいココアでも飲もうね」

男1
「神さまぁ〜」

男2
「仏様ぁ〜」

ライト
「…ホント馬鹿な奴ら。
 僕らのようなものを神や仏が救うわけ無いだろ。
 僕達は、人間じゃないんだから。
 …あ、もしもし、始末屋?
 ちょっと頼みたいことがあるんだけど。
 ああ、うん。急用。
 とびきり、やばいの連れてきてくれる?
 一瞬じゃ、終わらせないやつ…」

(間を空けて)

リュウ
「買い物」

(少し間を空けて)

(リュウとカイと彼女の3人で買い物を終わらせ、街中)

リュウ
「今日はこんなもんでいいだろ。
 あんまり買いだめしすぎても食料をダメにしてしまうからな」

カイ
「だぁ〜。飲み物って結構重てぇしな」

リュウ
「瓶だと特にな。
 まぁ、うちは瓶じゃないと嫌がるのが2人もいるからな」

カイ
「あの気取り兄弟め…。
 味が落ちるだの何だのギャーギャー言いやがって…」

リュウ
「そう言ってやるな。
 食の趣味はそれぞれだからな」

カイ
「酒なんか飲めればそれでいいだろうが」

リュウ
「お前はもう少し味を知ったほうがいいな」

カイ
「酒なんて全部一緒だろ」

リュウ
「ならアルコールでも飲んでろ」

カイ
「はぁ!?
 アルコールと酒は全然違うだろ!」

リュウ
「…(ため息)」

(少し間を空けて、彼女に向かって)

リュウ
「君は大丈夫か?歩き疲れていないか?
 あまり連れ回したくはないが、さすがに下着となると君自身が選ばないと俺達にはわからないからな。
 でも、いいのが見つかったようで良かった」

カイ
「下着なんかなんでもいいだろ」

リュウ
「お前は少し色々と世間を知る必要性があるな」

カイ
「なんでだよ」

リュウ
「なんでもだ。
 …あ、悪い。ちょっと買い忘れたものを思い出した。
 大丈夫、すぐそこだから俺一人で買ってくる。
 カイ、彼女とここで待っていてくれないか?」

カイ
「ああ、それなら別にいいぞ!なんなら先に帰っても…」

リュウ
「ここで待っていろ。わかったな?」

カイ
「へーい」

リュウ
「それじゃあ、よろしくな」

(少しして)

カイ
「あー…うーん…。
 なっ、なぁ。ちょっと悪いんだけどさ、俺、実はさっきからトイレ行きたいんだよ。
 すぐ戻るから、ここで待っててくんね?
 まぁ、すぐだから大丈夫だろ。
 よろしくな!大人しくしてるんだぞ!」

(カイ、走ってトイレへ)

(少し間をおいて)

男A
「ねぇねぇ。君、1人?」

男B
「可愛いね。彼氏いるの?」

男A
「へぇ。番候補はいるんだ。そっかぁ〜」

男B
「大丈夫、俺達そういうの気にしないから!」

男A
「1度きりの遊びとかも全然オッケーだよ!」

男B
「ワンナイトでも、全然ありだよ!」

男A
「大丈夫、大丈夫!皆やってるから!」

男B
「人生楽しまなきゃ損だよ!」

男A
「ものは試し、レッツチャレンジだよ!」

リュウ
「おい。そこで何をしている(キレ気味)」

男B
「っと、びっくりしたぁ!
 なに、連れいたの?気づかなかったぁ〜」

リュウ
「は?質問に答えろよ。答えられないのか?」

男B
「まぁまぁ、そう怒んなって。
 ちょっと彼女のことナンパしてただけじゃん」

リュウ
「ナンパ…?」

男A
「頭固いねぇ〜。
 嫉妬深い男はモテないよ?オジサン」

リュウ
「おじ…」

男A
「パートナーがいようがいまいが、遊びは大事だよ?
 一人しか知らないなんてもったいないし、リフレッシュは必要だからさっ!」

リュウ
「リフレッシュって…そういうことを言うもんじゃないだろ」

男A
「ほんと頭固いよね〜」

リュウ
「…(唸る)」

カイ
「お待たせ!って…何、なんの状況?これ…」

リュウ
「どこ行ってたんだこの馬鹿が。
 …ナンパだとよ」

カイ
「はぁ!?
 テメェら、なに人の許可なくナンパしてんだよ、ぶっころされてぇのか、ああっ?」

男B
「ナンパに許可はいらないでしょ」

男A
「早い者勝ち、連れ帰ったもの勝ちさ」

カイ
「はぁ?何言って…」

リュウ
「悪い、カイ。俺はどうやらこいつらのノリが苦手なようだ。
 言っている意味が全くわからん」

カイ
「いや、俺にもわからんて」

男B
「まぁ、邪魔されたんじゃこれ以上どうにもならなそうだし。退散かなぁ」

男A
「こういうのは切り替えが大事!」

男B
「それじゃあね、かわいこちゃん」

男A
「アデュオス!」

カイ
「…なんだったんだ、あいつら…」

リュウ
「わからん。さっぱりなにもかもわからん。
 それより…大丈夫か?変なことされていないか?
 …よかった。
 この間、怖い目にあったばかりだというのに、すまなかったな」

カイ
「ほんと災難だったな」

リュウ
「災難だったじゃないだろ、お前」

カイ
「え?」

リュウ
「どこに行ってたんだ。なぜ彼女を一人にした」

カイ
「いや、えっと…トイレに、行きたくて…」

リュウ
「はぁ?
 トイレに行きたかったのなら、先に言えばいいだろう!」

カイ
「いや、すぐ帰ると思って…」

リュウ
「すぐ帰らないとわかったときに、言え」

カイ
「…少しくらいなら、大丈夫かなって…」

リュウ
「………(深いため息)
 お前には一度、長い説教と教育のし直しが必要なようだな」

カイ
「なっ、なんでだよ…」

リュウ
「今日一日のお前の言動をよーく振り返ってみろ。
 治すべき点ばかりで驚きだなぁ?」

カイ
「なんか今日の叔父さん、怖くね?」

リュウ
「俺はオジサンじゃない!」

カイ
「へっ?」

リュウ
「…いや、悪い。叔父で間違いはない。
…とにかく、帰ったら説教だ。わかったな?」

カイ
「えー…」

リュウ
「わかったな?」

カイ
「…へーい」

(間を開けて)

カイ
「暑い夏の日」

(少し間を空けて)

(暑い日、リビング)

カイ
「あー…あっちぃ…。
 あちぃよぉ…あちぃ…」

ライト
「おい。暑い暑い煩いんだよ、暑苦しい。
 あんたの存在自体が暑苦しいんだから大人しくしててよ」

カイ
「あ?なんだと?」

リュウ
「ほらほら。まったやってる。懲りねぇなぁ」

ヨナ
「やらせておけばいいんですよ。
 そうすれば、こっちが彼女に関わる時間が増える」

リュウ
「それもそうか」

カイ
「なんだお前ら、こそこそとあくどい事ばっか考えやがって。
 また隙を狙ってそいつに抱きつく魂胆か?」

ヨナ
「馬鹿言うなよ。
 こんな暑い日にくっついたりなんてしたら、こっちが嫌われる。
 僕達にできることなんて限られてるんだよ。
 はい、アイスティーをどうぞ」

リュウ
「こんな日にまで暑苦しいやり取りはやめてほしいんだがな。
 ほい、アイス食うだろ?慌てて食うなよ」

カイ
「あっ!お前らまたそうやって!」

リュウ
「彼女が最適に暮らすことが最重要だからな」

カイ
「くーっ…」

ライト
「…いいな、アイス。僕もほしい」

ヨナ
「珍しいね、ライトが甘いもの強請(ねだ)るなんて。
 普段はあんまり食べないのに」

ライト
「甘いものはあんまり好きじゃないんだよね。
 でも、こうも暑いとさすがに冷たいものが欲しくなる…。
 かき氷とかないの?」

リュウ
「ねぇよ。
 アイスなら冷凍庫にまだあるぞ」

カイ
「やりぃ!1個もーらい!」

リュウ
「子供かよ(優しく笑うように)」

ヨナ
「僕も1つ貰おうかな」

リュウ
「おお。食え食え」

ライト
「…うーん」

リュウ
「ん?どうしたんだ?」

ライト
「…いや。なんていうか。
 冷たいものはほしいんだけど、甘いものはそんなにたくさんいらないというか…少しでいいなって」

リュウ
「わがままだな。
 アイスコーヒーでも飲んどけよ」

ライト
「んー…冷めたさがなぁ…」

リュウ
「じゃあ、氷でも舐めておけばいいんじゃないか?」

ライト
「味がしない」

リュウ
「じゃあもう知らん」

ライト
「えー…。
 …あ、そうだ。
 …ね。君、一口ちょうだい?
 ねぇ、いいでしょう?少しわけてよ。少しでいいからさ。ね?
 …ふふっ。ありがとう。じゃあ…
 (アイスキャンデーを一口彼女からもらう)
 …うん。やっぱ甘いね」

リュウ
「おおおおお、おい」

カイ
「おまっ…抜け駆けぇ!」

ライト
「あんた、それしか言えないの?芸がないね」

カイ
「うっせ!抜け駆け野郎!」

ヨナ
「さすがライト。やるね。
 すでにアイスを食ってる僕達には真似出来ないからね。
 完璧だよ。我が弟ながら策士だね」

カイ
「くっそぉ…(アイスを食べながら)アイスうめぇ…」

ヨナ
「今日はライトの単独優勝かなぁ」

リュウ
「なんだそれは(冷静に)」

ヨナ
「いかに自然に彼女に近づけるか?」

リュウ
「なんなんだよそれは(笑いながら)」

カイ
「あーあ。にしても、ほんとあちぃよなぁ…」

ライト
「うわっ。急に脱ぎだすなよ変態」

カイ
「別にいいだろ。上くらい」

ライト
「お前の裸なんて害にしかならないんだよ、気持ち悪い」

カイ
「ガミガミうるせぇなぁ…。
 ん?てか…ずっと思ってたんだけどよ」

ライト
「なに」

カイ
「なんか、甘い匂いしねぇか?」

ヨナ
「アイスの匂いでしょ?」

カイ
「なんだよアイスの匂いって。
 そうじゃなくて、もっとこう…甘いけど、うまそうな…」

ヨナ
「ああ、それは…なんていうか…」

カイ
「あ?なんだよ」

ライト
「デリカシーないね、あんた」

カイ
「なんで急にそんな引き気味の態度なんだよ!」

ヨナ
「いや、まぁ…。少し、言いづらいというか…言わないほうがいいというか…」

カイ
「意味わかんねぇ。
 叔父さん、わかる?」

リュウ
「汗の匂いだろ」

カイ
「汗?」

リュウ
「彼女の汗の匂い。
 血と同じで、惹かれるような匂いなんだろうな。俺達には」

カイ
「ああ、なるほど」

ライト
「あんたら、ほんっとデリカシーないね」

リュウ
「別に変なことではないだろ。自然の摂理、生存欲求、健全な食への衝動だ。
 血を飲む時点ですでに俺達は人間からすれば変態なんだ。それに、男は皆、変態なんだよ。
 あとはそれをどれだけ相手に隠すかどうかなだけで」

ヨナ
「一緒にされたくないな…」

リュウ
「言ってろ。
 そこで恥ずかしがってみていればいい」

ヨナ
「え…何を…」

リュウ
「…(彼女の首筋を嗅ぐ)
 やはり、いい匂いだな」

ライト
「へっ…変態だ…」

カイ
「あっ、俺も…(彼女の首筋を嗅ぐ)
 なるほど、この匂いか。
 …なんていうか…たまらなく、美味そうだな」

リュウ
「…なぁ。少し、味見…して、いいか?」

カイ
「いいね。俺も…少し…
 (彼女の首筋に牙を立て、血を飲み始める)」

リュウ
「あっ、お前…。
 ったく。節操のないやつだな」

カイ
「(口を離す)…やっぱり美味い」

リュウ
「待てが出来ない野良犬じゃあるまいし。
 節操を持てないのかお前は」

カイ
「なんだよ。こういうのは早い者勝ちなんだろ?」

リュウ
「そういう悪知恵は働くようだが、彼女の心の準備や気持ちをもっと確認してから動け」

カイ
「なら別にいいだろ?
 ほら、悦んでる」

リュウ
「…まぁ、結果的には、そうだな」

カイ
「だろ?
 それじゃあ、もう少し…」

リュウ
「あっ、またっ…!」

カイ
「(彼女の肩から血をごくごくと飲む)
 …(唇を話す)
 はぁ。…アイスより断然上手いな。
 暖かいけど、嫌じゃない。
 むしろ、熱さがさらに興奮させる」

ライト
「ドᎷかよ」

ヨナ
「粗野(そや)な奴だな」

リュウ
「ほら、そろそろ代われ。
 それじゃあ味見じゃなくて食事になるだろ」

カイ
「俺は食事でもいいんだけどな」

リュウ
「いくら彼女が餌族だからといって、一度に取る量が多ければ貧血を起こす可能性がある」

カイ
「なら、叔父さんは飲まずに今度にすればいいだろ」

リュウ
「断る。
 俺だって、彼女の匂いに当てられて、欲情してるんだ。
 たまには衝動の赴くままにやらせてくれよ」

カイ
「なんだ。叔父さんだって節操ねぇじゃんか」

リュウ
「否定はしないな。
 それじゃあ、飲むぞ?
 (カイが飲んだところと同じとこを噛みつき飲む)」

カイ
「ゲッ。おんなじとこから飲むのかよ」

リュウ
「(飲んだまま)前にも似たようなことを言ったような気が、嫁入り前の女性の体に無闇矢鱈と傷をつけないためだ」

カイ
「でもさぁ…これ、間接キスじゃね?」

リュウ
「(飲みながら)いつものことだろう」

カイ
「え。あんたいつも同じところから吸ってんのか!?」

リュウ
「(飲みながら)そうだが?」

カイ
「うげぇ…」

ライト
「というか、飲んでるの長くない?」

カイ
「確かに!
 俺には散々なんだかんだ言ってたくせに!」

リュウ
「(口を離す)はぁ…。
 俺のはいいんだよ」

カイ
「なんでだよ!不公平だろ!」

リュウ
「飲んだ量はお前とかわらないぞ」

カイ
「はぁ?!」

ヨナ
「お前、ほんと頭悪いな」

カイ
「なんだと!?」

ヨナ
「リュウさんは、少量の血を味わうように少しずつ飲んでいたんだ。
 お前のように野獣のような飲み方とは違って、彼女の体を気遣いつつ、その味を堪能するような繊細な飲み方をしていたんだよ」

カイ
「なんでお前がわかるんだよ」

ヨナ
「見たらわかるだろ」

カイ
「わかんねぇよ!」

ヨナ
「やっぱり馬鹿だな」

ライト
「…僕も、わからなかった…」

ヨナ
「あ、いや。
 ライトはまだまだこれから学んでいけばいいよ。
 学ぶつもりもない、成長しないこいつとライトは大きく違うからね」

ライト
「当たり前。
 あんなやつと一緒にはされたくない」

ヨナ
「あはは、そうだよね。ごめんごめん」

カイ
「お前ら兄弟、まじでムカつくな」

リュウ
「さて。
 言い争いはそのへんにしておけ」

カイ
「なんでだよ…って、うわっ、どうした!?大丈夫か!?」

リュウ
「どうやら、暑さと俺達からの快楽でのぼせ上がってしまったようでな。
 彼女を寝室に寝かせてくる」

ヨナ
「ああ、それなら僕がやりますよ」

ライト
「いや、それなら僕が」

カイ
「馬鹿言え。
 力仕事は俺の役目だろ?」

リュウ
「一番、力があるのは俺のはずだが?」

ライト
「彼女を運ぶくらいの力なら僕にだってある」

カイ
「安定しないだろ」

ヨナ
「僕なら何度もしたことがあるから、僕でいいよね?」

カイ
「いいわけあるか!」

リュウ
「ああもう。キリがないな。
 彼女の体調が優先だ。
 ここは、公平にじゃんけんでいいんじゃないか?」

カイ
「じゃんけん?
 んなことで決められるかよ」

ヨナ
「とはいえ、他に完結に解決できる方法もないだろう。
 僕は賛成かな」

ライト
「確かに。
 それならまぁ…いいんじゃない?」

リュウ
「だとよ。
 カイ、どうする?
 納得できないなら、参加せずに棄権してくれてもういんだが」

カイ
「棄権なんかするか!
 いいぜ、やってやるよ。
 じゃんけんで勝ちゃいいんだろ?楽勝じゃねぇか」

ライト
「じゃんけんって結構、心理戦だと思うんだけど」

カイ
「だからなんだ」

ライト
「…単細胞」

カイ
「あ?」

ヨナ
「まぁ、いいじゃないか。
 弱者がいてくれたほうが、勝率は上がる」

ライト
「それもそうだね」

カイ
「ああん?」

リュウ
「それじゃあ。
 文句なしの一発勝負だ」

ヨナ、ライト、カイ
「ああ!」

全員同時
「じゃーんけーん」

(終わり)

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