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「彼と僕、橋の上で」

『キャラ一覧』
【彼】
男性。性別変更不可。
記憶がない。年齢は18くらい。

【僕】
男性。性別変更不可。
妹を大事に想う成人済み男性。兄を尊敬している。
年齢は18〜25くらい。

利用契約について https://note.com/merrow15/n/n6802d670f4df


『本編』

彼:
僕には記憶がない。記憶喪失というものらしい。幸い、生活していくのに必要な知識は忘れておらず、こうして平穏に暮らせている。
 …とはいえ、やはり、家族や友人について何も覚えていないことが辛く、不安で…なにより申し訳ない。もし、彼らに会ったとき、僕は、平然でいられるだろうか。取り乱し、彼らを困らせてしまうのではないだろうか。
 そんな風に色々考えていると、僕は人と会うのをやめてしまった。
 ただ一人、こうして、橋から川を眺めている。そして、そんな僕にも声をかけてくれる優しい青年がいた。

僕:
こんにちは。今日もやっぱり、ここにいたね。

彼:
ああ、君か。また来たんだね。

僕:
もちろん。毎日くるって言ったじゃないか。

彼:
君も物好きだなぁ。

僕:
ははっ。よく言われる。
 …んー。今日は、どんな話をしようか。

彼:
なんでもいいよ。君が話すことは、いつも面白い。

僕:
面白い、かなぁ?…まぁ、つまんないって言われるよりは断然いいか。
 そうだなぁ。じゃあ、今日は妹について話そうか。

彼:
こないだ話していた、心配症の妹さん?

僕:
そうそう。目玉焼きに、醤油と間違えてめんつゆかけちゃう妹。

彼:
なんでめんつゆ?(笑いながら)

僕:
わからん。見た目が似てたから、なんて言ってたけど。
 しかも、何気に美味しいから失敗したっていうにはインパクトがない、中途半端な失敗。

彼:
確かに、目玉焼きにめんつゆは悪くなさそうだ。

僕:
なんならその後、僕も真似してみたけどマジで美味かったもん。

彼:
失敗は成功の元、かぁ…。

僕:
しかも調べたら、めんつゆで食べる人が本当にいて、失敗とよんでいいかも不明。

彼:
はは!確かに、食べている人たちに失礼だ!

僕:
まぁ、なんていうか、目玉焼きの話はどうでもいいんだよ。

彼:
話し始めたの、君だよ?(笑いながら)

僕:
とにかく、妹はさ…おっちょこちょいなんだよ。…抜けてるっていうか、ほっとけないんだ。
 昔、ここから落ちそうになったことも、あるし…。

彼:
ここ?結構な高さだよね。

僕:
そう。もし、落ちていたら、命はなかった…。

彼:
じゃあ、助かったんだ。

僕:
そう。助かった。

彼:
そっか。よかったよね、無事で。

僕:
兄さんが助けてくれたからね。

彼:
お兄さん?…ああ、優しい君のお兄さん。

僕:
そう。頼りがいがあって、優しい、兄さん。勇敢で…かっこいいんだ。

彼:
君は本当に、お兄さんが好きなんだね。

僕:
うん。大好きだ。だから僕は、兄さんのように妹を守れる男になるって誓ったんだ。

彼:
なるほどね。
 …ふぁぁ。あれ、なんだか、眠くなってきた…。

僕:
眠く?…急、だね。

彼:
うん、なんでだろ…。起きたばっかなのに…。
 …んー、ごめん。ちょっと寝るよ。

僕:
ん?…ああ、わかった。おやすみ。

彼:
ん。おやすみぃ…。

僕:
そう言って彼は、姿を消した。
 橋の上を歩く人達の目線が痛いけど、僕にはそんなこと、気にはならない。
 だって、僕は、いつか、彼が全てを思い出す日がくることを信じているのだから。

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