Kir〜GLver.〜

【あらすじ】
バーで1人寂しく飲んでいるダリア。
そこに現れた、妖艶な女性レイチェル。
2人はお互いに一目で恋に落ち、口説きあう。
色気漂うラブストーリー。

読み:キール
カクテルの意味:最高のめぐり逢い

利用契約について
 https://note.com/merrow15/n/n6802d670f4df

性別不問不可。
BLver.は別日アップ予定。
NLver.はすでにあります。
人数変更不可。

【キャラ設定】
《ダリア》
40前後の女性。
キャリアウーマンなイケ女子のイメージ。

《レイチェル》
30前後の女性。妖艶なイメージ。
色気漂う声。

ーーーーー

【本編】

ダリア:(煙草吸う)

(レイチェル、店に入ってくる。)

レイチェル:…あら。今日はとても素敵な方がいらっしゃるわ。

ダリア:ふふ。…そういう貴女こそ、とても美しいわね。見惚れちゃうわ。

レイチェル:見惚れてくれるの?光栄だわ。
 ねぇ、せっかくですし、お隣に座ってもいいかしら?

ダリア:ええ、もちろんよ。どうぞ。
 …貴女こそ、こんなオバサンの隣で退屈しないかしら。

レイチェル:何を言うのかしら。
 ひと目見てとても魅力的で素敵な方だと思ったから、隣に座りたいと思ったのに。

(レイチェル、ダリアの横に座る)

ダリア:それは光栄ね。
 マスター、彼女にキールを。

レイチェル:あら、ロマンチックね。

ダリア:受け取ってもらえる?

レイチェル:ええ、もちろんよ。

ダリア:それはよかった。

(レイチェル、キールを受け取る)

レイチェル:二人の出会いに。

ダリア:運命の出会いに。

同時:乾杯。(お酒を飲む)

レイチェル:…美味しいわ。今日は格別に。

ダリア:ええ、そうだね。
 でも、大丈夫?そのペースだと、すぐに酔いつぶれてしまうんじゃないかしら。

レイチェル:別に構わないわよ、貴女の隣なら。

ダリア:あら、それはとても熱烈なアプローチに聞こえるわね。

レイチェル:うふふ。

ダリア:ところで、あまり人のこと言えないけれど、こんな時に女性一人で夜遅くに出歩くなんて、最近この辺りで事件があったのを知らないの?

レイチェル:事件?
 もしかして、連続怪奇事件のことかしら。

ダリア:ええ、そうよ。

レイチェル:それなら大丈夫よ。
 彼女が狙うのは若い男性だけだもの。

ダリア:そうなの?

レイチェル:ええ、そうよ。

ダリア:確かに、今の所亡くなっているのは若い男性だけのようだけど…。

レイチェル:ねぇ。せっかくの素敵な出会いの席に、物騒な話をするのはやめない?

ダリア:え?ああ、ごめんなさい。
 つい、くせで。

レイチェル:くせ?

ダリア:いえ、なんでもないの。
 そうだわ。まだ名前を聞いていなかったわね。
 私はダリア。貴女は?

レイチェル:レイチェルよ。
 レイって呼んでちょうだい。

ダリア:レイはいつも一人でここに?

レイチェル:いいえ。
 今日はどうしてもお酒を呷(あお)りたくなってね。
 それでこの辺りを歩いていたらなんだか雰囲気のいいバーを見かけたから入ってみたの。

ダリア:なるほど、どおりで見かけないはずだわ。
 こんなに美しい女性、一度でも目にしていたら絶対に忘れるはずがないもの。

レイチェル:あら、お上手ね。
 そういうダリアはここにはよく来るのかしら。

ダリア:そうね。私はここの、所謂(いわゆる)常連なの。一人で飲むのが好きなのよね。
 ああ、でも、貴女のように素敵な人と飲むお酒は、もっと好きよ。

レイチェル:あら、その口ぶりだと今までもこうして魅力的な人と飲んでいたことがあるのかしら?

ダリア:残念だけど、数年ぶりよ。

レイチェル:モテそうなのに?

ダリア:そんなことはないわよ。
 それに、初めて会った人を落としたいと思ったのは…レイが初めてよ。

レイチェル:まぁ、それはとても嬉しいわね。

ダリア:それで?

レイチェル:…?

ダリア:さっき貴女、お酒を呷(あお)りたくなったと言っていたけど。何かあったのかしら?

レイチェル:…。

ダリア:言いたくないのなら、無理には聞かないわ。

レイチェル:…いいえ。聞いてほしいわ。

ダリア:そう。それで?

レイチェル:あのね、私、つい最近まで恋人がいたのよ。
 でも、「君の趣味についていけない」と言われて別れを告げられてしまったのよ。

ダリア:そんなに変わった趣味なの?

レイチェル:ええ、まぁ…。

ダリア:…あまり、深くは聞かなれたくなさそうね。

レイチェル:ごめんなさい。
 あまりにもショックで、まだ立ち直れていないのよ。

ダリア:それほど恋人を愛していたのね。

レイチェル:そうかも、しれないわね。

ダリア:自信がないの?

レイチェル:ショックを受けているのが、恋人と別れたことより趣味を否定されたことのほうが大きいのよ。

ダリア:誰だって、好きな相手に趣味を否定されたら傷つくに決まっているわよ。
 …私なら、どんな趣味でも受け止めるのに。

レイチェル:口説いてるみたいな言い方ね。

ダリア:口説いちゃだめかしら。

レイチェル:やだわ、本気になっちゃいそう。

ダリア:なら、本気になってちょうだいよ。

レイチェル:…。
 ねぇダリア。貴女のことも教えてくれないかしら。

ダリア:私?
 そうだねぇ…。
 私はここ数年、恋人がいたこともないし、口説こうとしているのも貴女が初めてよ。

レイチェル:慣れているように見えるけれど。

ダリア:こう見えて必死なのよ。
 貴女によく思われたいじゃない。

レイチェル:あら、可愛らしいことを言うのね。

ダリア:気に入ってもらえるなら、猫にでも犬にでも…トラにも、狼にもでもなるわよ。(後半は色っぽく)

レイチェル:…ふふ。(色っぽく笑う)

(二人、手を取り合う)

ダリア:…ん?レイ、この手は?

レイチェル:ああ、包帯ね。
 これは、ちょっと手を切ってしまってね。

ダリア:手を?大丈夫なの?

レイチェル:ええ。紙で軽く切っただけなのに、大げさに巻かれちゃったのよ。

ダリア:巻かれた?…誰に?

レイチェル:友人よ。
 貴女こそ、左薬指に変わった痕がついているようだけど。

ダリア:え?…ああ、これは…若い頃の…タトゥーのようなものよ…。

レイチェル:本当かしら。私、不倫はしたくないわよ。

ダリア:不倫じゃないわ。私は独身だもの。
 でも、今、目の前にいる可愛らしい人が恋人だったらいいなとは思っているわよ。

レイチェル:まぁ、そんな幸運な人は誰かしら。羨ましいわ。

ダリア:意地悪言わないでよ。

レイチェル:私、好きな人はイジメたいタイプなの。

ダリア:なるほど。なら、それは、イエスと受け取っていいのかしら?

レイチェル:好きに解釈してくれていいわ。

ダリア:それは最高ね。

レイチェル:どう解釈したのかしら。

ダリア:わかってるくせに。

レイチェル:うふふ。

(次の日。ホテルのベッドで横になっているダリア)

ダリア:ん…。(目が覚める)ここは…。
 …そういや、昨日はバーで飲んでて…。
 彼女はシャワー…かしら?…頭痛い…。

(ダリアの携帯が鳴る)

ダリア:…ん?
 誰よ、こんな朝っぱらから電話なんて…。
 …。

(電話に出るダリア)

ダリア:…もしもし、ジェシー?
 昨日の夜にメール?ああ…ごめんなさい。
 昨日は立て込んでいてまだ読めていないのよ。すぐに確認するわ。
 …ええ、わかってる。愛してるわ。
 家のことは、よろしくね。

(電話を切る)

ダリア:…。メール…メール…。
 ん?速報のニュース?
 …これは…。

レイチェル:はぁい、ダリア。

ダリア:っ!…レイ、チェル。

レイチェル:あら、私のことはレイって呼んでちょうだいと言ったはずだけど。

ダリア:…いいえ、レイチェル。貴女に、聞きたいことがあるのだけれど。

レイチェル:何かしら。

ダリア:昨日バーで、連続怪奇事件の話をしたのは覚えているかしら。

レイチェル:ええ、なんとなくだけど覚えているわ。

ダリア:そこで貴女は、犯人の事を「彼女」と呼んだわね。
 あの時は場の空気に酔っていたし、貴女に夢中で深く考えていなかったけど、今、ニュース速報で怪奇事件の犯人の特徴を見て思い出したのよ。
 犯人の正体は、今朝までハッキリしていなかったことを。

レイチェル:あら、そうだったかしら。

ダリア:昨晩、貴女がバーに入ってくる数時間前、また近くで若い男性が襲われたらしいわ。

レイチェル:そうなの?怖いわね。

ダリア:ただ、今回の被害者は犯人から逃げ延びることができたそうよ。
 今まではなんの目撃も得られなかった中で、初めて犯人が「女性である」ということがわかったんですって。

レイチェル:勇敢な男性だったのね。

ダリア:そしてその時に争った拍子に、犯人の右腕にナイフを刺した…とも言っているらしいわ。

レイチェル:…そう。

ダリア:…。貴女の、その…怪我をして包帯で巻かれた右腕、紙で切っただけにしてはさすがに大袈裟過ぎないかしら。

レイチェル:何が言いたいの?

ダリア:レイチェル、貴女は…。

レイチェル:…え?まって。まさか、私を疑っているの?

ダリア:…。

レイチェル:え、嘘でしょう?

ダリア:…どう、なの?

レイチェル:…ぷっ、ふふっ…あはは!

ダリア:れい、ちぇる?

レイチェル:ふふふ。ごめんなさい。
 バカにしているわけではないの。
 ただ、あまりにも面白くって。

ダリア:面白い?

レイチェル:だって、貴女があまりにも突拍子もないことを言うもんだから。

ダリア:いや、だって…。

レイチェル:レイチェル・ブラウン。
 聞いたことないかしら。

ダリア:…いいえ。

レイチェル:貴方、小説はお好き?

ダリア:まぁ、多少は。

(レイチェル、ダリアの横に座る)

レイチェル:じゃあ、「秘められた扉の夢」というタイトルに見覚えは?

ダリア:…あっ!

レイチェル:うふふ。そう、その作者が私。

ダリア:じゃあ、貴女は…。

レイチェル:レイチェル・ブラウン、ミステリー作家なの。
 この右手は作業中に紙で切ってしまって、私の大ファンであり信者である担当編集者が大慌てで治療した結果よ。

(包帯を取り、手の傷をダニエルに見せる)

レイチェル:ほら、見て。大したことのない傷でしょ?

ダリア:本当だ…。じゃあ、貴女は…。

レイチェル:犯人なんかじゃないわよ。

ダリア:なんだ、よかった…。

レイチェル:はぁ。(ため息)急に何を言い出すかと思えば、思わず笑っちゃったじゃない。

ダリア:ごめんなさい。私ったら、馬鹿なこと考えてしまったわね。
 …でも、笑ってくれるのね。
 普通なら怒っていいことなのに。

レイチェル:面白いことは好きなの。奇妙なことも。
 でも、そういうとこが理解できないって前の恋人には言われてしまったのだけどね。

ダリア:…なるほど、趣味というのはミステリーにまつわること、だったのね。

レイチェル:ええ。そうなの。

ダリア:じゃあ、貴女はどうして昨晩の時点で犯人が女性だと知っていたの?

レイチェル:もっと前から気づいていたわよ。
 被害者の特徴や被害のあった場所、殺害方法を見れば予想がつくの。
 「若い男の血を浴びたい女の犯罪」ってね。

ダリア:なぜ、そんなことを?

レイチェル:若さを保つ秘訣ってやつよ。

ダリア:貴女は聡明なのね。

レイチェル:職業病よ。
 ところで、私もあなたに聞きたいことがあるのだけれど。

ダリア:なぁに?
 もう、貴女には何でも話すわ。

レイチェル:うふふ、ありがとう。
 …ジェシーって誰かしら。

ダリア:!…聞いていたのね。

レイチェル:聞いていたのか、じゃないわよ。
 私、昨日言ったわよね?不倫は嫌だって。
 もちろん浮気だって嫌よ。
 それなのに、これはどういうこと?

ダリア:いいえ、違うの!

レイチェル:何が違うのかしら。

ダリア:だから、それは、その。

レイチェル:貴女、ついさっき私には何でも話すって言ったわよね?はっきりさせてちょうだい。

だから:あー…その。ジェシー…ジェシカは、私の娘で…。

レイチェル:娘?!娘までいるの?信じられない、最低ね。

ダリア:いいえ、違うの、話を聞いてちょうだい!

レイチェル:だから、どう違うのよ。

ダリア:それは、その…。
 …結婚してすぐ、夫とは別れたのよ。

レイチェル:…別れた?

ダリア:ええ。離婚の原因は、彼の浮気。
 でも、元々彼の父親の会社に努めていた私は、会社も追い出され、娘も奪われ、何もかもを失った。
 それ以来、あのバーに入り浸るようになったの。

レイチェル:…そうだったの。

ダリア:今はもちろん、立ち直って別のところで働いているのよ。
 でも、たまに色々考えたくてあの店にはまだ通っているわ。

レイチェル:私ったら誤解していたのね、ごめんなさい。

ダリア:いいのよ。紛らわしいことをしていた私にも否はあるわ。

レイチェル:そんな事情があったら、そんな簡単には打ち明けられないわよ。

ダリア:…。
 ジェシーは月に一度だけ、私の家に来て掃除や洗濯をしてくれるの。
 その日だけ、会うことができるわ。

レイチェル:…。

ダリア:ただ、私はいつかジェシーを取り返したいと思ってる。
 ジェシーと一緒に暮らせる日が来ると信じてるのよ。
 …でも、そんな大きい娘がいること、その娘を取り返したいと思っていることを知れば、貴女のような若い女性には重荷になると思って、ね…。

レイチェル:言い出せななかったの?

ダリア:…ええ。

レイチェル:それは、私とずっと一緒にいたいって思ってくれてると捉えていいのかしら。

ダリア:できれば、そうしたいと思っているわ。

レイチェル:うふふ。貴女のしおらしい所が見れて嬉しいわ。

ダリア:…もしかして、面白がってる?

レイチェル:ええ、とっても!

ダリア:…。

レイチェル:それに、ね、ダリア。

ダリア:なぁに?

レイチェル:実はね、私、子供が産めない体なの。

ダリア:…え?

レイチェル:そういう体質なのよ。
 でもね、子供は好きなの。

ダリア:レイチェル…。

レイチェル:うふふ。私のことは、レイって呼んでちょうだいって言ったわよね?

ダリア:えっ、ええ。でも…。

レイチェル:ねぇダリア。
 今日、貴女の家にお邪魔していいかしら。

ダリア:いえ、だから今日は娘が…。

レイチェル:紹介、してくれないかしら?
 未来の可愛い娘を、私に。

ダリア:…いいの?

レイチェル:ええ。私、貴女が好きなの。

ダリア:会って間もないのに?

レイチェル:あら、貴女は私のこと、好きじゃない?

ダリア:…いいえ。好きよ。愛してるわ。どうしようもないくらい、愛しいと思ってる。

レイチェル:そう。なら、問題ないわね。

ダリア:そうね。
 きっと、過去にも未来にも、貴女以上に素敵な人は現れないわ。

レイチェル:貴女のように面白い人もなかなかいないわよ?

ダリア:それは褒めているの?

レイチェル:ふふふ、どうかしらね。
 少なくとも、私にとっては…貴女は、運命の人よ。

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