見出し画像

『鏡の中のシャーロット』から考える徳川まつりの理想郷

人間のことばかり考えてるメルロ=ポンてゃです。
突然ですが、最近徳川まつりというアイドルを一つの宗教として認識し始めました。突然すぎるしボリュームが鬼になったので別記事にします。


●はじめに

筆者の知識量

筆者は2023年9月中旬にアイドルマスターミリオンライブシアターデイズ(通称ミリシタ)をインストールしました。(この記事は2023年10月初旬に書いている)
現時点で読破したのはストーリーコミュ33話、イベントコミュ(思い出ピースにて解放)、デフォ所有Nカードのコミュ、「フェスタ・イルミネーション」SSRカードのコミュのみです。

当然のことながら、このドラマCDが発売された前後の背景や関連する限定カードやコミュについての知識は特にありません。
あくまでもドラマCDにおいて描写された内容から感じ取れるものを書き記していきます。

執筆背景

徳川まつり姫について知ったきっかけは、ミリシタを始める前にTwitter(現X)でTLに流れてきたキャラクター診断を行った結果が彼女だったことです。
知らないため性格などについて調べたところ、自分自身の理想を体現するようなキャラクターであることを知り、彼女のコミュを実際に体験することで理解を深めたいと思いアプリをインストールしました。

実はゲームを始める前からまつりP様方の記事を読むこともしており、特にまつりP兼絵師の羽落さん(@urakukun)の沼体験記を拝見してインストールする気が湧いた節もあります。
今回の記事作成についても、羽落さんをはじめとする親しい間柄の人達との対談を重ねて得た着想を基に書いております。いつもありがとうございます。今回は我が物顔で書いていきます。


●『鏡の中のシャーロット』について

あらすじ

病弱な箱入り娘のシャルロット(役:徳川まつり)が今は亡き実母の形見である姿鏡やティーカップを用いて一人遊びをしていたところ、鏡の中にシャーロット(役:エミリースチュアート)が現れた。双子のように仲良くなる二人だが、継母から寄宿学校へ通うようにと告げられ、夢のような時間に変化が訪れる。

ネタバレ考察

※まだ本編を履修してない方は然るべき対応をしてください※








筆者がこの作品を見て最初に感じたのは「卒業」です。具体的には少女期(イマジナリーフレンド)やどうにもならない過去(実母との死別)、絶対的な味方である存在(愛着形成に関わる母)などがあると思います。

最近読んだ心理学者兼精神医学者ユングの入門書にはこんな感じのことが書いてありました。

「一見現実離れした空想の世界の話が実は話者の精神世界とその葛藤を表しており、そこに(心理士などが)向き合い対話を続けることでトラウマ等から解放され現実に向き合うことができる。」

(うる覚え)

物語の流れとしては空想の理想郷が脅かされる→現実への対処→認識の変化、和解→別れ(過去からの解放?)のため若干異なりますが、シャルロットなりに自分の心と向き合ったからこそ訪れた結末なのかなと思います。


では、シャルロットの精神世界とはどのようなものだったのでしょうか。
大枠は「同じ考えを持つ姉妹のような存在とずっと一緒に遊んでいられる」世界。そんな彼女の背景や願望を想像してみました。

  • 病弱で孤独→一緒に遊べる存在が欲しい

  • 幼少期の実母との死別→母が恋しい、味方が欲しい

  • 父の単身赴任→道を示す者の不在、継母への不信感

  • 自分の力ではどうにもならない現実→魔法でなんとかできる世界

わざわざ箇条書きすることなのかはさておき、彼女が特に向き合ったことは2.3項目なのかなと思います。むしろそれらを乗り越えたからこそ心が健やかになり体の調子も回復したと考えたくなります。
母親という存在は愛着形成において受容の姿勢を示したり絶対的な味方がいることを教えてくれます。筆者自身の生活を鑑みると、友達のような感覚で色んなことを話せる存在でもあります。
また、継母はあくまでも彼女のためを考えた上での発言をしていますが当たりが強めです。父の単身赴任がちな生活からか、よく長女がやりがちな「私が一人でなんとかしなきゃ」の精神を発動させて切羽詰まっているのではないでしょうか。意図の汲み取れないシャルロットにとっては、自分に都合の悪いことを口煩く喚く存在程度にしか思えてなさそうな印象を覚えます。

また、冒頭では月の光の魔法を使って野薔薇の柄のティーセットを直す描写がありますが、ラストで金継ぎを施されてることもあり魔法でなんとかならなくて現実ではなく夢の中でお茶会をしていたのではないでしょうか。幼稚園児がおままごとでご飯を食べるのと同じように。
しかしシャルロットの心情に寄り添いリアルな体験として受け止めるのであれば、あの夢のような日々は確かに存在するのでしょう。

収録された2曲について

A面『だってあなたはプリンセス』B面『ミラージュ・ミラー』の2曲について、まさにこれだと思う考察があったのでここでご紹介します(2曲以外の部分も執筆にあたり大変参考になりました、ありがとうございました)。
https://note.com/taneri0325/n/n5999799bfd4f

敬意を込めてざっくり言うとA面は母親視点、B面はシャルロット視点の曲なのではないかというものです。それな。

特に私が話したいのはB面です。
これは徳川まつり姫が歌ってるからこそエモい説があるのですが、それは後述しようと思います。

対称的なふたり

イベントコミュ3話では「今二人がお互いにやりたいと思ってることは何か?」という質問に対して、「シャーロット/シャルロットになること」と答えて正解します。
よく考えると相手が自分になりたがってると自信を持って話す二人すごいなと思うのですが、ここで話したいのはそんなまつり姫とエミリーの対称性です。

まつり姫はお姫様キャラを征く独自路線のアイドル。実家は徳川家(本家か分家かは不明)であり、歴史ある家で育った子のようです。一方エミリーは大和撫子に憧れるイギリス人アイドルであり、実家が太そうないわゆるお嬢様。
実はこの二人が求めている、しかし絶対に変えられない出自や体の部分で理想の相手とも言えるのではないか?と羽落さんから言われた時は目から鱗でした。

筆者の中で理想とは現実の自己否定から来るものが少なからずあるものだと思っています。
その上で徳川まつり(姫になりたい)(純日本人な姓名と体と生活)⇔エミリースチュアート(大和撫子になりたい)(英国的な姓名と体と生活)は成立しそうな気がしてきます。

個人的に徳川まつりは分家で実家は一般家庭な気がしています。上流階級の生活があるなら「姫になりたい」というありがちな願望は生まれませんし、全体がうまく回るよう他人のために影で努力する泥臭い生き方は現場で皺寄せを食う人間らしいからです。
また、珍しい上に有名な苗字は人目を引きます。きっと小中の授業で某将軍が扱われた時なんかはさぞ周りが騒がしかったことでしょうし、「徳川のくせに育ちは一般家庭なんだ〜❤️」とかメスガキに煽られてそうだなと思います。

エミリーは立派な日本家屋に住んでいることや父が外交官だったりと、姫とまではいかなくても「いい所のお嬢様」として優雅な生活をしていることでしょう。紅茶がよく似合いそうですが、大和撫子を目指しお抹茶を嗜むその姿は大変奥ゆかしいです。
(ミリシタのことはあまり知らないため、同じような人がいるならその人でも良かったのかもしれませんが、私は姫とエミリーちゃんがイチャイチャしてるの可愛いなと思うのでこのまま進めます。)

お互い相手に嫉妬することはないとしても、自分にない物を持っている者同士魅力を感じることはあるのかもしれません。鏡の先に自分の理想の姿を思い浮かべて見えたのがお互いなら、なんて美しい話なのでしょう。対称的なのに同じような心理が働いて相手を想い、自分を重ね心を通わせる...。まさに「あなたは私で 私はあなた」です。



●徳川まつりの理想郷

『エンディング』での匂わせ発言

ドラマCDの『エンディング』にて、まつり姫がこんなことを話しました。

「お話の中ではお別れしなければいけなかった二人ですけど、アイドルになればずっと一緒にいられるのです!」

THE IDOL M@STER
MILLION THE@TER GENERATION14

お前さぁ...。(クソデカ感情)

この発言を深堀りする前に、まず考えたいのは徳川まつりという人間が姫、そしてアイドルを目指した理由です。
きっかけとなる出来事とそれを描いたコミュが「フェスタ・イルミネーション」ですが、彼女は妹のために理想のお姫様になり、果てはアイドルとして夢を届ける存在になっています。

また、筆者にとって彼女の夢や理想とは「相手を尊重した上で全てが丸く収まること」そして、その結果「皆を楽しませる(=誰も悲しませない)こと」だと思います。メインコミュでの彼女は、自身がセンターを飾るステージのサポート役として集ったメンバーに対して細心の注意を払い、それぞれの性格や得意不得意を把握した上で役割を与えて準備を進めます。
全体でできることは全員が集まってる時であり、個人のことは1人でいる時にこなす...。日中のメンバーが集まる時は全体を引っ張る行動を取り、自身の伸び悩む部分は夜遅くまで居残り練習。ブラック企業が喜びそうな働き方で筆者としては色んなものを思い出して涙を禁じ得ないです。
それでも彼女が過労死をも厭わない努力を続けられるのにはもちろん理由があります。


Pが彼女に対してできることは、彼女にしかできない彼女のやりたいことを最大限実現できるよう、しかし決して途中で壊れることのないようにそれ以外のあらゆる業務をこなして彼女を支えることのみです。
だからこそ姫はPをナイトと称し、筆者は徳川まつりを宗教として捉え始めたのですが、それは別記事でまとめます2。


さて、問題の「アイドルになればずっと一緒にいられるのです」発言について話を戻そうと思います。
この発言について考えを深めたのも「妹のことを考えた上で発言してたら尚更エモい」と話してくれた方がいたからです。いつもありがとうございます2。(こういうのをいちいち挟むと話の腰が折れるから冒頭に感謝の意を述べるんですね。勉強になりました。)

彼女にとってアイドルが妹のため、そして自分の願望を叶える可能性を秘めた場所として捉えているのであれば、彼女の夢や理想を体現したアイドルである限りはシャーロットとの時間もそこに存り続けるということなのではないでしょうか。


徳川まつりは夢を見たい

彼女は妹のためにお姫様になることを選んでいますが、それは自己犠牲的な要素を孕んでるように見えて実はエゴも多分に含まれると考えます。
彼女もまた、自身の描く夢の世界をこの目で見るために血の滲む努力をしているように見えます。

先程、彼女の夢や理想とは「相手を尊重した上で全てが丸く収まること」そして、その結果「皆を楽しませる(=誰も悲しませない)こと」だと仮定しました。
とてもロマンに溢れて危うい理想です。現実はそう甘くなくて、妥協して生きてる人間が大半であり筆者もその内の1人だからです。
しかし彼女はそれを体現し続けようと努力を重ねる。それは自分自身の求めることもそこでなら叶うと信じてるからこそ縋ってるような印象すら受けます。もしかしたら、とても不器用な形で自分を尊重してもらえるための居場所をアイドル活動に見出してるのかもしれません。
ここらへんは素敵な考察があったのでここにリンクを載せておきます。
https://note.com/triacontane/n/n5dda1cc25906

姫という人格はある種の虚構を孕んだものです。
あり得ないと知っているからこそあそこまで堂々とできるような節もあるでしょう。しかしながら、彼女の嘘(まつりは嘘なんかつきませんが?)は誰の心にも優しく届き穏やかな時間を生みます。
そんな時間に彼女が一番救われているのかもしれません。自分の描いた夢を信じた周りの人がいれば夢はもう夢ではなく現実に確かに存在するし、その状況の中で彼女はやっと理想の夢を見ることができるのではないでしょうか。


演じるからこそ出力できる感情

徳川まつりは姫という人格を完璧にこなすために全てをハックしているため、そこには本音も嘘もない代わりに不可侵領域の謎が深まるばかりです。しかし、やりたいことや行動から彼女の内面を想像することだけはできます。

ただアイドルとして夢を叶えてその世界観に浸るだけならシャルロットになる必要はありません。
それでもシャルロットとして夢のような時間を過ごしたくなる理由はいくつかの可能性がありますが、筆者は今回自身の願望を込めて「シャルロットを演じる中でやっと素直になれる感情がある」説を推します。

彼女は姫として生きることで理想を完璧にこなします。それでも彼女は人間、しかも19歳の女の子。感情を本当の意味で殺すことができてるのは解脱してるとしか思えないです(まつり教については後述します3)。
そんな彼女の、姫としてあるまじき感情の部分をあそこでなら存分に吐き出せたのではないでしょうか。
そう考えながらシャルロット視点で歌詞の紡がれる『ミラージュ・ミラー』を改めて聴くと、彼女の声に妙な"力み方"を感じられます。

『鏡の中のシャーロット』では、永遠にこのままでいたい、けれど成長と共に卒業する「相互理解に対する幻想」が描かれているとも感じます。
姫はそれが夢だと知っていて、もしかしたら相互不理解の現実に絶望さえ覚えてるかもしれません。
それでも、作り込まれた優しいおとぎ話の中では確かにシャルロットとシャーロットは双子であり、私はあなたであり、あなたは私なのです。
アイドルになれば、ずっと一緒にいられるのです。







●「さぁ、お茶会を始めましょう?」

以上、個人的な解釈を交えて『鏡の中のシャーロット』および徳川まつりについて考察しました。

羽落さんとの対談の中でこんな話がありました。
「異なる言語を話す人と『りんご=apple』のように単語の共有をすることは容易かつ地道で大切な作業だが、それだけでは言語の学習は成り立たない。とある事実や出来事に対する認識や解釈をお互いに語らい、その差異から相手の文化や思考を捉えることがとても大切なのだ。」と。
『鏡の中のシャーロット』にも、さまざまな解釈が存在します。本当に魔法が起きていたと話す人、王子様がいないシンデレラパロディ、イマジナリーフレンドや亡き母親からの卒業...。
一つの作品に対しての認識が乱立し、其々誰かの半生を物語るようなものになっており、その全てが私にとって美しいです。嘘です。皆全然分かってないです、俺だけが彼女のことを分かってあげられます。対戦よろしくお願いします。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?