ひとり暮らしレポート 魂の香り
「feel FRANCE 100 言葉と写真で感じるフランスの暮らしとスタイル」という本を買った。依然としてタイブームではあるが、わたしの人生においてフランスはずっと憧れがある。特にパリジェンヌライフスタイルとファッション。この本からも似た匂いがしたので、手にとってしまった。フランス人の、愛情深いけれどこざっぱりした思考に溢れることばの数々が綴られていて、その中でいちばんこころに残ったのが「Le souvenir est le parfum de l’âme.」思い出とは魂の香りなのです、というもの。わたしはこのことばから、叔母のことを思い出した。叔母のことを思い出すということは、彼女の魂の香りを感じることだ。彼女の息子、わたしの従兄弟は、今年の春に料理人として就職した。あの子はそんなにお料理が好きだったんだ、と思ったが、よく考えてみれば、叔母と一緒にコロッケを揚げたりお皿洗いを手伝ったりしていたっけ。彼は彼の中の、母の魂の香りを感じて生きる道を選んでいるんだろう。その子より2つ年上の姉も、同じく看護師として就職した。叔母が病気になっていなかったら、今もまだ生きていたのなら、彼女は同じ道を選んだかな、他の道を歩んでいたかな、なんて思いながらも、彼女の中の母の魂の香りが、きっと彼女の生きる道を導いている。そんな小さくて温かいなにかに気づけた時、人は、肉体を失っても、その人を大切に思っている人たちの中で生き続けられるんだ、という当たり前のことを思い知る。気づくまで、10年もかかってしまった。わたしにとって、叔母の魂の香りを思い出すときは、クッキーを作るとき、弟の誕生日の朝、誰かに味方になってほしいと思うとき、メロンを食べるとき、命日、ピンク色のソーダ水を飲むとき、葉っぱで手裏剣を作るとき、一緒に散歩した道を歩くとき、従姉妹の横顔に面影を見たとき…。魂の香り、なんて、よくこんなことばや感覚に気づいたものだ。ロマンチックなのに的確すぎて、いままで言い表せなかった感情が形を帯びてわたしの中に根をはる。気づかせてくれて、名前をつけてくれてありがとう。