Gracious


 出産予定のカズヒコが、両親のもとに挨拶に行く。

登場人物:カズヒコ(以下、カ)、父、母

チャイムの音

明転

カ「すみませーん」

母「はーい」

 母、ドアを開ける

カ「どうもこんにちは。明日生まれる僕です。」

母「お待ちしておりました。どうぞお上りください」

カ「失礼します」

 カ、用意されたスリッパを履く。ピヨピヨ音の鳴るスリッパ。

母「お父さん!カズヒコ来ましたよ!」

父「おお、カズヒコか!初めまして!」

カ「カズヒコ?」

父「お前の名前だよ。」

母「遅かったわね。」

カ「はい、混んでいまして。あ、これ、つまらないものですが…」

 カ、持っていた手土産を母に渡す

父「手土産!随分気がきいてるな」

母「赤ワイン!」

カ「はい。『ワインが好きだ』と話していたのを、お腹の中でしっかり聞いていました。」

父「そうだったのか。いい子に育ちそうだなあ!まあ座りなさい」

カ「失礼します」

父「で、どんな人生になるんだ。」

カ「はい、将来は医者になるため、医学部に進みます。お金はかかってしまいますが、就職したら仕送りしますのでご安心ください。それから、28歳の時、大学時代に出会った彼女と結婚します。」

父「おお!素敵な人生だなあ!」

母「お腹すいてない?ご飯の準備してあるのよ」

父「カズヒコが母さんのお腹の中にいる、最後の晩餐だからな。」

 母、ハケ。ご飯を持って入り。テーブルに並べる。

父「せっかく持ってきてくれたんだ。赤ワインも入れよう。カズヒコは何を飲むんだ?」

カ「僕はぷちグルト。」

 母、父と自分のグラスに赤ワインを、カのグラスにぷちグルトを入れる。

父「では、カズヒコの出産の無事を祈って!」

三人「乾杯!」

母「あ〜おいしい!」

父「あ!母さんまだお酒飲んじゃまずいんじゃ…」

母・カ「あっ…」

暗転

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?