何が善で何が悪なのか、何が優秀で何が劣等なのか。そんなものはただの感覚にしかすぎない。登場人物の彼らは、僕らとは逆の感覚を持っているのだ。 

真ん中にテーブル。下手側のイスには父、真ん中のイスに母、上手側のイスに息子(以下:息)が座る。下手は台所。息子はいかにも悪そうな風貌。父・息子板付き 

 明転 

 父「なあ黙っていたら分からないだろ。」 

 息「…。」

 父「こないだのテストはどうだったと聞いているんだ。」 

 息「…。」 

 父「どうなんだ!?」 

 息「父上には関係ない事でございましょう」

 父「父上って…。親に向かって何だその口の聞き方は!」

 息「…。」

 父「いいから見せなさい!(息子、渋々渡す) お前、100点が4科目も…!しかも、学年1位じゃないか!」 

息「それがなんだって言うんですか!」 

父「恥ずかしくないのか!普通高校生なら赤点ギリギリだろ。それが何だこの点数。こんなんじゃ平凡な人生送れないぞ。」

 息「平凡な人生を送る気なんてございません。」 

 父「何だと?」

 息「動物愛護センターで働きたいんです。動物をこの手で救いたいんです。なので、勉強しないと…」

 父「馬鹿にするのもいい加減にしろ!動物なんか救って何になるって言うんだ。お前は、困っているものを見ると助けたがる節がある。悪い癖だぞ!(この辺で母下手からおぼんを持って入り。テーブルに皿や茶碗を並べる) こないだも、階段で困っているおばあちゃんの荷物を持ってあげたそうじゃないか。」

 息「大地の恵みに感謝して、いただきます。」

 父「おい聞いてるのか?」

 母「今日の三者面談も、先生が『こんな優秀な生徒、私の教師人生で初めてだ』なんて。もう恥ずかしくて恥ずかしくて。」

 父「そうだったのか。お前をそんな風に育てた覚えはないぞ!」

 母「ねえ聞こえてるの?何か言いなさいよ」 

息「いや、咀嚼中ですので。」

 父「(息子を見て)お、おい!三角食べじゃないか…。」 

母「いつからそんな行儀よくなったの。」

 父「もっと高校生らしくヤンチャになれよ。」

 家の電話が鳴る。母がでる。

 母「もしもし。はい、そうですけど。(家族に)…警察。」

 父「(嬉しそうに、息子に)なんだよ!高校生らしいことしてるじゃん!何だ?万引きか?」

 母「強盗犯を捕まえてくれた感謝状を渡したいって」 

父「(がっかりして)あぁ(←ため息的な)、もう勝手にしろ。」

 父ハケ

 母「ちょっと!(息子に)お父さん困ってたじゃない」

 息子「(『困ってた』って言葉に反応して、父を追いかけながら)わりぃ親父!○○○(←悪そうな、チャラそうな言葉を一言。)

 母「いいとこあるわね。」 

 暗転

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