麻雀Jewelの進化した宝石達 番外編1
俺はメンリー、ジュエリストだ。
嘘だ、スマン。「俺は高校生探偵、工藤新一」みたいなテンションで言ってるが、ただの麻雀好きなそこら辺に山程いる有象無象のアマチュアだ。
さて、土曜日である。数多の雀士達が活動的になる日だ、天気が雨だとか俺達には関係ない。
今日もジュエリストとしての勤めを果たす、休日をサクリファイスしてJewel上野店に向かうのだ。
最近はラピスパールの導入に伴い、1局でゲームセットとなることもしばしば。この過酷な環境で生き残るためには気合いを入れて臨まなければいけない、まずは元気な挨拶から。
「おはようございます!」
腹の底から声を出してJewelの門を潜ると、既にジュエリスト達がアツイ闘牌を繰り広げていた。素晴らしい光景だ、やっぱこうじゃねぇとな。
「ツモォ!リーヅモ一盃口裏裏!マンセブン!」
「キチー!」
「ちくしょー!俺も一盃口テンパイしてんだよ!」
「プレートバック!」
なにやら今日は若干場末風の雰囲気である。でも裏裏はキチーよな、わかるよ。
ん?マンセブン?
「メンちゃんおはよー!」
松本店長だ、普段新宿メインだが時々上野店に出没する。
メ「ザス、もう7月ですねー」
「7月キチーよ。昨日なんて新宿店勤務で2局連続純チャンツモられたよ」
メ「そ、そうですか。キチーですね」
プロの対局じゃなくて新宿店でツモられたなら全然耐えてるんじゃないか?Jewelの祝儀麻雀で純チャンなんかアガられても、むしろ「おめでとうw」くらいだ。松本店長は普段狂ったようなことしか口にしないのに、今日はなんだか急に真の麻雀打ちみたいなこと言うじゃないか。
そんな無粋な言葉が喉元まで出掛けたが、ぐっと飲み込んだ。店長の機嫌を損ねるわけにはいかない、俺の本走番手を下げられて立ち番なんてやらされたら最悪だ。第一本走枠の座は誰にも渡さないぞ。
「メンちゃんおはよう」
おっと、これは志岐パイセン。
出勤の都度、俺のまかない食である渾身の志岐うどんを作ってくれるシェフである。空き時間俺の下らない麻雀話にも真剣に付き合ってくれる、打ちたがりで隙あらば席を奪おうとしてくるのが玉に瑕。ラス半が入った東ラスの卓に張り付くのが少しでも遅れると気付いたら志岐パイセンが笑顔で卓に接近している、恐らく学生時代椅子取りゲーム無敗である可能性が高い恐ろしい男だ。
「メンちゃん、聞いてくれよ。俺だけアガれないんだよ……一盃口」
メ「い、一盃口ですか……キチーですね」
「皆不思議とツモるんだよな、しかもアメシスト入りで。許せねぇよ、一盃口とかいう役が。というか7月が許せねぇよ」
何やら自分だけ一盃口をアガれないことにしっかりブチギレてるパイセン、店長といい何があった。いつからここは至高の競技麻雀愛好家雀荘になったんだ、目をギラギラさせた宝石愛好家雀荘じゃなかったのか。
「メンリーさん、モンスター下さい」
メ「あ、かしこまりました」
プロスタッフ達の唐突な競技麻雀熱に困惑していると、待ち席でスマホを眺めながらJewel上野店が誇る最強のジュエリスト宮副選手がエナジードリンクを要求してきた。この男は気分で要求する飲み物がコロコロ変わるのでスタッフとしては少々面倒な存在だ。
メ「モンスター、何味にします?」
倒れるまでウチで麻雀を打ってください、というアツイ想いが伝わってきそうな程に様々な種類のエナジードリンクがギチギニに詰められている冷蔵庫を指刺すと、宮副選手はノータイムで
「紫のヤツで」
と、パープル色のモンスターを選択する。
メ「珍しいですね、美味しいんです?」
「ヌルいですね、今日はアメジスト5pデーですよ?めちゃくちゃアメジスト来ますよコレ」
得意気にそう言い放ち、カシュッとモンスターパープルの蓋を開けてグビグビ飲み始める。宮副選手はこういうところがある、これもまた彼が最強のジュエリストたる所以なのだろう。
しかしどうやら現在勤務している雀荘はJewelで間違いないらしい。先程の純チャンや一盃口の話はなんだったのだろうか。
メ「……ん!?」
壁に貼られていたホップには、まるで「夏限定冷やし中華始めました!」くらいの軽いノリで唐突にとんでもないことが書かれていた。
ああ、そういえばボスが言ってたな……。7月から始まる月替わりの特殊役祝儀、その第一段がコレか。
というわけで何の脈絡もなく急に始まりました、月替わりイベントです。
7月は新宿店でチャンタ系、上野店で一盃口系をアガッたお客様には豪華景品をプレゼント!アガリ役に5枚、もしくは10枚追加!同卓者から貰っちゃってください!
とまぁ陽気なお祭り感と共に突如開始されたこのイベント、初日から大盛り上がりでした。一盃口が1翻5枚役です、ツモなら5枚オールだぜ。二盃口なんてツモったらどうなっちゃうんだ?
「言うても一盃口なんてあんま出ないやろ……ましてや二盃口なんて……」
みたいな気分で出勤した私ですが、困ったことに数分後には脳内で常に一盃口という文字列が駆け巡るくらいには中毒にさせられました。同卓者も様子がおかしく宇宙人のようにイーペーコー…イーペーコー…とボソボソ呟いてます。
確かに出現頻度は低いです、狙って打っても中々出る役ではありません。だからこそなのか、一盃口が炸裂した場面での脳汁との祝儀枚数のバランスが絶妙で堪らない感覚。また、相手の一盃口も「キチー」くらいで済ませられる程度の頻度とダメージなのでイベントとしては抜群に面白いです。
そう、この7月から始まった特殊役祝儀イベントの素晴らしいところは、手牌に宝石がなくても宝石牌を持って手を進めるあの筆舌に尽くし難いワクワク感を味わうことができるのです。
少しばかり戦術的な部分を述べると、466788みたいな形。これは従来のJewelなら宝石と枚数のバランスで基本的には8を切られるのが大多数でしたが、一盃口のせいでやたら4を切られる場面が多い印象です。しかもけっこうダマテンにされます、4切りの後に迂闊に7を投げると5枚という不当な祝儀を要求されます。
アメジストクリスタルトルマリン發ポッチのルールで本走中に466788sから4を切ってリーチした人がクリスタル5sをツモ切ってアガリ逃し発狂していた後、あろうことかゴールド發ポッチを持ってきて真っ黒な汚い手牌から謎に9枚のツモアガリを炸裂させて喜んでいたのを今でも覚えています。被弾した僕はブチギレながらも「5sに宝石が2枚あるルールとはいえ、どちらに受けるのが正解なんだ…?」と悩まされました、難しい。
このルールだと一盃口の種であり尚且つ良形保証の4556みたいな形が普段より愛おしいです、愚形テンパイ取るくらいなら4556の形を維持する場面が圧倒的に増えました。最早1223の形ですら5枚の種として美しく見えます、相当可愛い。
んでまぁ、やっぱシンプルに強いのが34455みたいな平和形。これがかなりの勝負手になりました、「高目一盃口かぁ…」くらいのテンションではなく「ド!ド!ド高目イーペーコゥAhh~↑↑↑!真夏のペコリー!!!」と睡蓮花が脳内で歌唱されるレベルのテンパイに成り上がり。ウー、ハイハイ!
12233とかはあまりに一盃口過ぎて逆に時々ダマテンにされます、1はダマテンにされると中々止まる牌ではないので腰に刺さる。しかもこれ、4切られた後に悪質な見逃しツモ切りリーチ飛んできます。滅茶苦茶です、刺さった時は「誰だこのルール考えたヤツ!」とブチギレながらプレートバックします。
そして何故かこの一盃口ルールにより強化された宝石があります、なんで!?
・ターコイズ5p
『4枚+喰い下がり無し』
喰い下がりがなくなるターコイズですが、基本的にはツモという役が付くのと鳴きリーチが打てるのがメインの効果です。三色や一通が喰い下がらず二翻のままだったり、鳴いていても一盃口が付いたりしますが、所詮タコリーを打つための牌です。タコリーしか勝たん。
しかしこの鳴いていても一盃口が付くという効果が予想外な形でジュエリスト達に牙を向くことになりました。45566pから4pが出てきたら鉄チーです、鳴いて一盃口を確定させるのです。
鳴き一盃口とターコイズで合わせて9枚のテンパイなので、ターコイズ所持者のダマテンが若干増えました。ターコイズ環境は基本的には役があってもタコリーが飛んでくることが多いのでリーチが来てから「はいはい、タコリーね。わかったよ、オリるよ」と危険牌を止めるのですが、タコペコはダマテンでもかなりの火力があるので注意が必要です。やる気がありそうな人がいたらちゃんと牌と相談してオリ気味に打ちましょう。
二盃口が10枚なのですが、ターコイズを使うと頑張ればアガれたりします。組んでる時はノリとハサミを持って一生懸命夏の自由研究作品を作ってる気分になる、ガチャガチャ。
しかし一盃口イベントのパートナーはターコイズではありません。コイツこそが環境の真打ちです。
・アメジスト5p、アメジスト5m
『ドラドラ+1枚+祝儀倍』
なんとこの夏休み限定冷やし中華、アメジスト系の宝石を持っていると大盛2倍になるのです。
アメジスト搭載のメンピン一盃口野郎が急に16枚とか叫んできます。メンピン即ヅモ一盃口アメジスト裏は、一発で1枚、アメジストで1枚、裏で1枚、一盃口で5枚(⁉)。1+1+1+5=8枚は16枚オール!!!何故だ!!!
一盃口+アメジストの組み合わせがあまりに強力。そもそも一盃口が役としてあるということは面前です、リーチや即裏と絡めてアメジストという宝石だけで卓を割るポテンシャル。アメジスト自体も「俺は一体何を倍にしているんだ…」と困惑するレベル、アガリ系を見ても「どこに祝儀要素があるんや…?」と、あまりの砂漠感に戸惑います。
ここまで一盃口が強力だと67と手出しでリャンメンが落とされてもアガリ形にワケわからんカンチャンが出てきて刺さりブチギレる場面は珍しくありません。自分が枚数的に厚く持ってない部分は敵の一盃口が潜んでいる可能性があります、十分注意しましょう。
さて、この夏休みイベントは高目安目のどちらでフィニッシュするかで滅茶苦茶収支に差が出るので必然的にコイツらも強化されたと言えます。
・アメジストポッチ
『1枚+祝儀倍(リーチ後永久白ポッチ)』
・ゴールド發ポッチ
『4枚+役有りテンパイ時ツモオールマイティー牌』
高目安目選択への強引な解答です、要はこれをツモればいいんです。
しかしコイツらポッチ達が真価を発揮するのは、どちらかと言うと7月新宿店イベント。
新宿店では一盃口の代わりにチャンタ5枚、純チャン10枚のイベントを開催していました。頑なに5に寄せるJewel麻雀の醍醐味から逸脱した趣向、不遇役が一気に大出世。
一盃口と異なりチャンタ系は自らの手で寄せるので比較的組みやすい、何より鳴けるので材料さえあればそこそこアガれます。特に純チャンは10枚なのでバカ本手、中々無視できるものではありません。
アメジストポッチを使えばチャンタをアガるだけで12枚、白ヘッド300-500の12枚とか言われてもねぇ…。因みにフィニッシュをゴールド發ポッチツモと仮定してチャンタのみ300-500のMAX火力22枚オールを炸裂させることが可能です。
チャンタ系は打点がやたら下がるので祝儀だけ強奪される感じです、でも点棒自体は安いのでキチーと笑い飛ばせます。そう、チャンタ自体は安いし祝儀枚数も知れてるのでけっこう打たれるんですよね。一盃口と比べて遥かにアガリやすい。
一盃口は他の役とも複合するし打点があるので中々腹立たしいです、祝儀と点棒両方失うのは本当にしんどくて何か言葉を発しようにも中々絞り出せず「……」と、押し潰されるように無言になります。
とはいえチャンタという役はムズかしいです。タンヤオ牌がポコポコ河に押し出されるのは、とてもリスキーな行為であるからです。また、チャンタを進行させることで「コイツはタンヤオ牌をツモ切るし打点も大したことない」という認識を敵に与えるのがマズイのです。
通常、Jewelのルールは宝石が散りばめられている5の周辺が特に危険です。リーチや鳴き仕掛けは勿論、宝石を使い切るダマテンのカン4、カン6といった待ちは常にケアしなければいけません。宝石5単騎でニヤニヤ構えられてるところに飛び込むリスクもあります。
2000点5枚ペン3sで、何もかも未知数な敵に向かって突撃するのはとてつもない勇気が必要です。敵も手が入っていれば無視してフルスイングしてきます。やはり宝石を沢山装備した待ちも打点も計り知れないシンプルなジュエルが一番強いのです。
敵のジュエルを掻い潜って5枚オールをする快感も良いですが、本来出るはずない牌で勝手にダイブして数え役満の34枚とかに飛び込もうなら自殺したくなります。チャンタを進行する際はバランスが大事です、激しい横移動を眺めてる他家は「バカがいて助かったぜ…」と安堵することでしょう。
また、キー牌を喰われてジュエルを成就させてしまうのも大罪です。本来絞るべき牌を鳴かせてしまいカン4pを大声で気味にチーからの気持ち良くタンヤオジュエルパトローナムみたいな呪文を唱えられ20枚クラスを引かれようものなら他家から激しいヘイトの視線がグサグサと集中します。なんなら「何鳴かせてんだよテメー!」と普通に言葉に変換されて罵声を浴びせられます。
この大人気イベント、現在も元気に各店舗でやってます。正直滅茶苦茶面白いです、マジで。
8月は新宿店が一盃口イベント、上野店がチャンタ系イベントです。9月からのJewelも目が離せませんけど一盃口チャンタは8月まで!かも!ジュエルへ駆けろ!未体験なんてノンノンよ!
因みに頑なに一盃口イベントと言い続けているのは理由があるというか、なんというか。ほら、二盃口ってやっぱり出ないじゃないですか。
とか油断してたら7月頭にアッサリと二盃口出たらしいです、しかもメンチン。
噂ではターコイズとアメジストの二大巨頭を使用して二盃口30枚を炸裂させたジュエリストもいるとかいないとか。
現在夏休みイベント期間です、なんと女性はフルバックだぜ!しかも激アツ5勝戦にも参加可能!🔥
上野店は優しいCルールもあるので「打ってみたいけどちょっと怖くて…」というジュエリスト見習いの方にもオススメ。女の子をデートに誘う口実にもなります、密かに流行ってますよジュエルデート。
この夏、麻雀はジュエルで決まり!待ってるぜ!💎
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?