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第一話 「着席」

これは私、四宮慧茄があるポーカールームで出会った人々との記録である。私の趣味はポーカー。金曜日仕事が終わると必ずポーカーをすることにしている。ポーカーを始めてもう6、7年になる。その期間出会った人達は数知れない。年齢、性別、職業を問わず実に色々な人達と出会い会話を重ねた。ポーカールームも毎年増え続け、新しいルームが開店したという話があればその時の気分で訪問してみることにしている。今回訪れたポーカールームもそんな一連の流れで訪れた店だった。然しながら、その店は他のルームとは明らかに違った。不思議でどこか妖しげな雰囲気を持つ店だった。そこの店主、ディーラーは何者だったのか。そこに集まったプレイヤー達はどこから来てどこへ行ったのか。その素性は?思い出し始めると何から何まで不思議な店であった。一言で表現するのは難しいがあえて例えるならば「蜃気楼」であろうか。その幻のような店は現在は無い。一ヶ月前その店を訪れようとしたところ何故か閉店していた。何故閉店したのか。その理由は結局分からずじまいだった。その店に集まったプレイヤーと連絡を取ろうとしたが何故か全員と連絡が取れない。その店があったビルの管理会社に問い合わせてみても何故か従業員が全員入れ替わり、その店の存在を知るものは誰もいなくなっていた。当然ネットで検索してみたがやはり情報は無しだ。あの店は本当に存在していたのだろうか。今となっては私の妄想の産物であったかもしれないと疑うほどだ。これはそんな店で出会ったプレイヤー、ディーラー、店主達との記録である。

会話はいつも着席から始まった。それではこの不思議な体験を綴っていこうと思う。



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