その54:お互い、知らないことがある

思ったこと、感じたことを反射的に書きだしていきます。
読み違えなどはご容赦ください。

クラブのシーン

神谷の性格

神谷の恫喝から始まる54話。時間的には神谷、百目鬼、矢代、七原がステーキハウスにいたときから時間が経っているため、その日の営業終了後か翌日の営業開始前か。
後ろ手に縛って抵抗を抑えた状態で容赦なく制圧していくところに慣れたものを感じます。暴力と恐怖で手っ取り早く情報を引き出そうとしている。
以前、見聞きした情報ですが、こういうときに相手の心を折るには血の匂いが有効らしい。(この黒服のハルト君鼻血出してるし、口の中きれたのか血反吐吐いてるね)たぶん黒服ハルト君はこの時点で余程でもない限り抵抗する気分は削がれてるだろうな。キャンキャン坊主の神谷君は現役なだけあってこの辺のやり方慣れてるね。けれど、一方で「嫌いなんだよなー、チ〇カ」とあるように、威力のありすぎる武器には抵抗があるあたり、行き過ぎる暴力に対して躊躇は抱いているのではないか(単に使用したら自分に降りかかる不利益がでかすぎるという計算なのかもしれないけど)。この武器に対する神谷の心持ちによって、暴力に対して躊躇を抱く小心な部分、または自己利益を考える計算高さがあるように感じました。(どちらのつもりで書かれているのかは今後の展開で変化するかな)

ママのキャラクターについての新情報

名前出ましたね。名無しのモブキャラだった彼女の名前が明かされて、彼女の人となりの新たな情報が付与されましたね。
百目鬼との関係を尋ねられて否定も肯定もしない代わりに、噂話を広げないようにと神谷に頼む泉。「迷惑かかるから」の真意がわからない。銀座(だと思ってるんだけど違うかも)のクラブのママは人気商売のような面もあると思うので、特定の男の影や噂が見えるのはママ自身に迷惑がかかるのではないか。ここで、「百目鬼に」迷惑がかかるというのは、この泉ママ自身が百目鬼の不利益になる存在であることを暗に示しているのだろうか。

優しすぎて向いていない

店の金を盗んだ黒服のことを援護しようとする泉ママ。神谷は彼女に「優しすぎ」「向いてねーよ」と言い放って行きます。
神谷のセリフを補足すると、店の金を盗んだ従業員に対して「許してやって、脅されてやったことだろうから」と温情を掛けて欲しいと頼む態度は、夜の厳しい世界で、諍いの舞台になりかねない店を預かる責任者としては確かに優しすぎる。
ハルトが誰かに脅されてやったのなら、その脅した人間を制しなければまた同じことをやられる可能性がある。ここで強い態度に出なければ、簡単に相手の思うつぼにはまってしまうからだ。
また、もし、裏で糸を引いているのは泉ママ本人で、ハルトを脅した誰かと裏で結託していたとしたら、ここで泉がするべきなのはハルトの切捨てだ。下手にハルトに情をかけるような態度を取ることで自分自身が疑われてしまう。なのに目の前で打ちのめされるハルトに情をかけるような言葉を発してしまう。
こういった、状況を読んで計算して行動するよりも、目の前で部下が痛めつけられている状況に対して情を寄せてしまう態度が「優しすぎ」て、場合によっては男たちの争いに巻き込まれて、うまく立ち回らないといけない立場にある女には「向いていない」ということなのではないか。

百目鬼と泉

神谷がハルトを車に乗せて立ち去った後を見送った泉が「向いてない・・・か」と独り言ちる。噛みしめるように吐き出されたセリフから、神谷の言葉に反発を覚えているわけではなく、また誰かから初めて言われたわけではなくて、自分自身でそう思うところがあったか、もしくはそれ以前に誰かにそう言われたことがあったのを反芻して出たセリフではないか。
もし、それ以前に誰かに言われたことがあるとしたら、その誰かは百目鬼である可能性はないだろうか。
この世界で生きるには「優しすぎる」泉の姿は他の誰かを暗示しているように思えるのはわたしのうがった見方かもしれないが、ここに書き記しておく。

レストランのシーン+矢代の事務所?

矢代の目配りと七原の足りなさと憎めなさ

53話でも出て来た左耳ピアスのボーイ。矢代と七原が見える場所でどこかに電話していて怪しさ満点。矢代はこの店自体も龍頭の息がかかっている可能性を念頭においていたのかな。(場所が良すぎるため。山川を監禁してる建物の正面だなんて)
食事を摂り終え、夜なのに酒も頼まずに長居をする成人男性の客は十分に怪しいとはいえ、客の目に付くところでどこかに電話を掛ける店員もやはり同様に怪しく思う。(まあ、七原のいかにもな格好も悪いよね)そういう店員の動向を目配りできている矢代は相変わらず仕事のできる男だ。

脱線するけど、昔働いていた職場に出入りしていた業者の営業マンが、54話の七原の来ているのとほぼ同じ格好で金色のネクタイを締めて来訪したことがあって、その服装のイカニモさに、893が来た!と初見だった20代前半の女性社員が本気で怯えたことがある。なので、七原の格好は記号として正しすぎて笑ってしまった。

その場では気付かなかったが、エレベータ内での短い会話だけで、なにがしかの状況を理解した七原。さすがだなと思ったのは、「古典的な」突っかかり方をしたニット帽に対して即座に凄んで見せる反射神経は鈍ってないなと思った。(あ、やっぱり細かい状況については気づいてなかったね)
ここからの数ページの矢代・七原vs帽子たちのやり取りは緩急が効いていた。穏やかにそれでいて鋭く躱していく矢代、矢代に害が及びそうになるとすかさず身を挺して躊躇なく攻撃に転じる七原(キャップ男に右から喉元抑えられた瞬間に、相手の右拳が届く前に上から側頭部に振り下ろされる七原の右!腹は出てても感覚はまだなまってない!!)
矢代の理不尽ともとらえられる身の振りにちょいちょいツッコみを入れながらも場を切り抜けていく様子は、これまでなんどもこうやって二人で小競り合いを切り抜けて来たのかな、という七原と矢代のふたりの歴史を感じさせる一連のやりとりでした。
七原、ちょっと物足りないところはあるけど、喧嘩のセンスと強さはあるから矢代も側に置いてるんだろうし、ちょいちょいボケツッコミ入れてくるところが憎めないね。

事務所のシーン

(このプラットフォームってどこまで単語を出して行っていいのかわからないので事務所ってぼかしてますが、矢代の経営する店のこと)
時間的に夜だと思うので、これは休日なのかな。まあ、そう毎日開店させるような業態ではないか。
矢代が山川を追っていることが相手にばれるのは不利になるので、桜一家や道心会を2重3重の隠れ蓑にしてるんだな。いずれ明かされるんだろうけど、矢代は矢代で個別の思惑があって山川を追ってるんだろうな、ケツの毛をむしり取るだけではなくて。百目鬼は矢代のその「三角さんのお使い」以上の矢代の思惑についてどこまで可能性を読んでいるんだろう。少なくとも「ケツの毛をむしり取る」はブラフだと思っているだろうし(ブラフだと気づいていていてくれ)
桜一家が自分たちのメンツに躍起になっている一方で、矢代がでかいヤマを追っている。綱川は矢代の動きを、詳細は関知しないだろうけども予想しているとして、共闘関係を結んでおくことで自分たちはゴク道の道理に集中できるということですね。

山川と「金のなる木」

これまでは単に山川がカ〇ノの運営に慣れていて、従業員を集められるとか、ガサ入れの情報源を持っているとかその程度だと思っていたのですが、その程度だったら矢代が執着する意味あるかな?暇つぶしかな?と思っていたのですが、おそらく山川はそれ以上のリソースを持っているということでしょうね。だからこそ甲斐も山川のことを匿うし、怪しい動きをする矢代と七原に警戒もしている。
作画がモブキャラっぽすぎる、悪人ぽくない、イカゴクではないところにミソがあるんじゃないかと予想しています。大きな出店計画のキーマンにつながっているとかね。親が推進派の要職だとかね。
あんまりこれ以上のことを言うと怖い人に怒られそうなのでやめときます。

百目鬼と井波の対峙

井波の思惑

井波が矢代に依頼されて用意した情報は百目鬼にとっては既知のものでした。井波も言ってたけど自分の会社の元社員なんだからすぐに情報手に入れることできるわな。
甲斐の情報は今回この二人の間では重要なものではなく、要点は他にあった。百目鬼の目的はもちろん矢代の動画であることと、セリフにあったとうり「二度と会うな」と矢代を自分の欲求を解消するためのおもちゃに使うことはやめろという警告であったことがわかる。そもそも記憶媒体に焼いたデータでしかない動画などいくらでも複製可能。クラウドにアプロードされていることぐらい折り込み済み(だよね!?百目鬼!?)動画の抹消が一番の目的ではなく、矢代から井波を遠ざけることがもうひとつの目的だった。
一方で井波としても、百目鬼と二人きりで会っておきたい目的があった。それは百目鬼のいまの立ち位置の把握ではないか。
「矢代んとこじゃなく、桜一家なのはどういう理由だ?こんなもん回収しに来るくせによ」
井波はそれなりに狡猾な人間だと思うので、単にクサレ893になった百目鬼を見下して遊ぼうというだけではなく、百目鬼がどういう立場にいるのかを冷静に見極めようとしているのがこのセリフに出ている。
百目鬼が矢代と何らかの関係をもちながらも、矢代の許で経験を積んで片腕になっているわけではなく、矢代とも道心会とも関係のない三和会の桜一家にいることの理由を問うていることから、井波は、百目鬼と矢代が裏でつながっていて、百目鬼は矢代が桜一家に潜り込ませたスパイではないかと疑っているとここから考えられるからです。
矢代と関係がある(ように井波が思っている)百目鬼が、一方では桜一家で出世して頭角を現しているのは、4年の間それなりに矢代と関わりのあった井波だからこそ、矢代の手玉のひとつだと疑うのでしょう。だとすると、井波にとって百目鬼は美味しい情報源であるわけですよ。矢代のことを自分の嗜虐心を満たすための道具にするほどの人でなしの井波のことなので、矢代を引き合いにして百目鬼からも情報を引っ張ろうとしている、もしくはもっとひどいことを考えていたとしても不思議ではない。

変わらない百目鬼

井波に対して必要最低銀の情報しか開示しない、ウソとも本当ともとれる情報しか渡さないあたり、百目鬼はこの4年間でだいぶ揉まれて来たんだということを感じさせられましたが、「一緒に鑑賞会」と煽られて見せられた画面に、矢代と井波の姿(井波だからね!百目鬼だって言ってた人いたけど、物理的にあり得ないから!)を見せられてすごい瞬発力で井波をぶん殴ってスマホを破壊するあたり、矢代や葵といった、自分の大事なものが絡んだ途端に容赦なくその暴力性を発揮するのは3巻16話の頃と何も変わっていなかった。(それを知らないのは矢代だけというもどかしさ)
そのあとの展開としては、だいたい予想どおりなので割愛(じつはもっとひどい状況で百目鬼にバレると思ってたので案外穏やかでよかった。)井波の言葉を確かめるためにも手に入れた動画を百目鬼が確認するのか鑑賞会するのかは次回に持ち越し(持ち越しするのか?)


補足:百目鬼を責める井波の言葉

井波のレ…プ発言は、井波というキャラクターの残虐性を表現するために敢えて挟まれた言葉かと最初は思いました。ただ、それにしてもわざわざそれを言葉にする必要はどこにあるのかと思っていたのですが、X(旧Twitter)のフォロワーさんの感想を読んで、あれは百目鬼に向けたトリガーだったのだということに気付きました。(その節はありがとうございます)矢代の被害者性とそれを発見する百目鬼について、別稿で書きたいと考えているのでそれはまた後日。


どうでもいい補足

井波の車、カムリで決まりかな。
なんか調子乗ったホイールつけてんな、と思ったけど純正があのホイールなんですね。公務員の中年男性が乗る車として可もなく不可もないチョイス、ヨネダ先生の登場人物の乗ってる車に対する解像度の高さが大好きです。
すっ飛んで来た百目鬼、言葉の通り、車(ハリアー)で来てるんだな。これは次号に向けた備忘で書いておきます。


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