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日本の地方創生の「いま」

こんにちは!

皆さん地元は好きですか?

久しぶりに帰ってみたらなんだか街にシャッターが増えて活気がないな、、、なんて思ったことありませんか?

2014年に「地方消滅論」が唱えられ、同時に「消滅可能性都市リスト」が公表されました。当時の全国の自治体数のおよそ半数の896の市区町村がこのリストに含まれ、当時は大きな反響を呼んだようです。。。(当時高校三年生だった私は受験でそんなこと露程も興味なかったですが、、、笑)

この地方消滅論に端を発し様々な地方創生政策が立ち上がり、地方創生総合戦略なるものも策定され2015年から全国各地で展開されています。

今回はそんな地方創生の「いま」について小生なりにゼロから調べてまとめてみましたので「地方創生について最低限のことは知っておきたい!」「ふと昼食時、地方創生の話題になったときドヤ顔でそれっぽいこと言いたい」なんて人は続けて読んでみてください。(所要時間約20分)

「成功」しない地方創生政策

皆さん地方創生ってうまくいってると思います?「東大卒の国のお偉いさんたちやら有識者が集まって計画を立ててたくさんの税金を使ってるんだから何かしらの成果は出てるんじゃないの?てか出てなかったらやばくね。」僕もそう思います。

ですが実際は成功してる例は決して多いとは言えません。たとえば「プレミアム商品券」。このプレミアム商品券政策も地方創生政策の一環として行われ、日本全国の1741市区町村のうちの99.8%にあたる1739の自治体がこのプレミアム商品券を発行し、国から1589憶円の予算が出されました。

ではこのプレミアム商品券で地元が少しでも活気づいたなと思いますか?おそらくほとんどの人は実感がないでしょう。それどころかプレミアム商品券て何だっけって人も少なくないと思います。私もその一人です。それでもいまだに多額の税金がこの「効果のない地方活性化策」に費やされています。

地方創生政策は基本的に「戦略策定→国の認可を受ける→KPI設定→PDCAを回す」という流れで行われます。2016年までに全国200都市で認可された「中心市街地活性化政策」もこの流れで行われました。しかしこの政策で目覚ましい成果をあげた自治体はゼロです。それどころか青森市なんかはこの政策による補助金で建てた中枢施設「アウガ」が大失敗してしまい市長が辞任にまで追い込まれてしまいました。

全国各地で失敗が繰り返されるのはどうしてなのでしょうか?そこには「地方創生」だけに限らない、あらゆることに当てはまる「構造問題」が潜んでいます。

以下ではこの構造問題を

・「事業」~取り組むネタはどうやって決める?~
・「資源」~ヒト・モノ・カネの使い方~
・「組織」~組織の活かし方~

という三つの観点から考えていきます。

「事業」~取り組むネタはどうやって決める?~

数年前、ゆるキャラがすごく盛り上がっていた時期がありましたよね。「ひこにゃん」が火付け役となって、「くまモン」でそのブームは一気に広がりゆるキャラグランプリなるものまで開催されるようになりました。

図1

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2013年当時のくまモンの「経済効果」は1000憶円とまで言われ全国の自治体がこれに便乗しようと多額の予算をゆるキャラの開発にあてました。しかしヒットするのはごく一部の自治体でほとんどのゆるキャラは厳しい競争に勝てずに消えていきます。

ここで注意してほしいのが経済効果というワナです。よく聞く経済効果という言葉ですがこの数字の根拠は実に怪しいと言わざるを得ません。我々が聞く経済効果はプラスの効果のみを計上したものです。しかし現実には増えるものがあれば必ず減るものもあります。ゆるキャラの例でいえば、キャラクターがヒットして関連グッズが売れたとしても、その分それまで店頭に並んでいた商品は店頭から下げられ売り上げが下がるというマイナスの効果もあるのです。したがって、「本来の経済効果=プラスの経済効果-マイナスの経済効果」となるわけです。

それにも関わらず多くの自治体が偽りの数字に踊らされ、ゆるキャラのような一過性のもの(図1)に多額の予算を費やしているのです。

大事なのは、地域活性化のネタを選ぶにあたって経済効果のような根拠に乏しい数字に頼ってはいけないということです

また、地域創生においてよく陥る失敗のパターンが他の自治体の成功事例をそのまま持ってきて実行してしまうということです。そもそも地域の活性化とは、ほかの地域にないものを生み出すことでその地域に来てもらう理由を作ることです。したがって他の地域の真似事などまさに愚の骨頂であり、大事なのは、自分たちが持ってる資源でできることを考え特化した「ネタ」を作ることです。


「特化」して成功した一例として、岩手県紫波町の民間資金のみで建設された「オガールアリーナ」というバレーボール専用体育館があります。この体育館はバレーボールでの使用に特化したことで不利な立地に関わらず全国から利用者か来るようになり、合宿なども行われ周辺の宿泊施設も賑わっています。

他にも広島県尾道市の「ONOMICHI U2」などがあります。

ここで知ってほしいのは上記の「オガールアリーナ」「ONOMICHI U2」とも完全に民間による事業だということです。どちらも40代の中堅経営者によって運営されています。

このことからもわかる通り、地方創生におけるメインプレイヤーのバトンは「国→地方自治体」から、自治体を飛び越えて地方の活気あふれる経営者に渡されるときが来ているのかもしれません。

「資源」~ヒト・モノ・カネの使い方~

ヒトの捉え方

まずは地方創生においてヒトをどのようにとらえるかについて述べたいと思います。地方活性化分野におけるヒトの捉え方は主に「人口」と「人材」の二つがあります。ここでは人口について考えていきます。

地方創生の議論においてよくあるのが人口減少を諸問題の原因と捉えることです。地方人口の減少はあくまで地方に魅力的な仕事がないことの結果であり原因ではありません。それにも関わらずなんでも人口減少のせいにして人口を増やせばすべてが解決すると思われがちです。しかし本当に重要なのは地方自治体の経営を見直すことです。人がいなくなったから自治体の経営がきびしくなっているのではありません。夕張市は破綻したから人がいなくなりました。地方自治体は、都市部から人を移動させることを考えるよりも先に、自分たちの財政状況と向き合うべきでしょう

そもそも人口というものは増えても問題、減っても問題とされるのです。事実、大正時代は米騒動などにより人口抑制が唱えられるも、戦争になると戦力のため「産めよ増やせよ」方針に変ります。そして戦争が終わると食糧難の中ベビーブームが訪れ再び人口抑制が唱えられました。

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つまり、重要なのは人口は変化するものという大前提のもと、変化に対応できる仕組みを作ることなのです。人口に左右されない生産性の確保、財政の仕組みの構築が急務となっています。

人口論について考えるなら「交流人口」も忘れてはいけません。交流人口とは平たく言えば観光客の数のことです。外部からいかに観光客を呼ぶかというのはまさに地方創生の核となる話です。ここで重要なのはその地域に行く「理由」を作ることです。例えば軽井沢は宅地としての魅力を基本軸にしており、人々は避暑などの明確な目的をもってそこに行きます。人々に選んでもらえる街づくりが大事なのです。

カネについての考え方

「カネ」に関しては重要なのは、とにかくカネを生み出す好循環を作り出すことです。「補助金を用いた地方創生の事業でカネを稼ぐなんてけしからん!」なんていう人もなかにはいるかもしれませんが、この考え自体があまりに古いし、そのような考え方に基づいていたら地方創生なんて実現できません。地方創生において何より大事なのはお金を継続して生み出す強力なエンジンを作ることです

というより、そもそも地域活性化において補助金はむしろ失敗要因になりかねません。税金が入ることで事業の責任の所在があいまいになり、初期投資も回収する必要がなくなるから経営がずさんになる。補助金に頼ってもなにもいいことはないのです。

民間がひたむきに利益と向き合い地道に経営努力を積み重ねることが地方創生の成功への第一歩なのです。

「組織」~組織の活かし方~

組織が大きな失敗をするときは、新たな挑戦に失敗した時ではありません。それは「失敗することが分かっていて撤退しなかったとき」です。しかしながら現実の各自治体の地方創生基本戦略などを見ると撤退戦略について書かれているものはほぼ皆無です。そして失敗だと分かっていても責任を取りたくないから表面上だけでもなんとか取り繕おうとして追加で多額の税金が投入され取り返しのつかない事態になってしまうのです。青森市のアウガの例はまさにこれで、施設の経営の失敗が判明した後も自治体が場当たり的な投資を続け施設完成後から合計200憶円を投じてしまいました。

大事なのはこの目標をこれだけ下回ったら撤退する、といったような具体的な撤退戦略をあらかじめ初期の計画に盛り込んでおくということです。

計画の立案について加えて重要なのが「自前主義」ということです。

地方創生が騒がれるようになってから、全国に「名ばかりのコンサルタント」があふれかえりました。自治体は、詳しい人に任せておけば大丈夫だろうという他力本願の姿勢でコンサルタントに計画の立案を依頼します。しかしそもそも、責任を負わない人に計画を任せて果たしてうまくいくでしょうか?彼らはそれっぽい計画を立ててしまえば報酬はもらえますから、計画が成功するかどうかなんてどうでもいいのです。そんな人たちに任せてうまくいくはずがありません。

計画を実行する人たちが当事者意識をもって計画の立案をすべきなのです。そして事業を進めていく中でトライ&エラーを繰り返し少しずつ本物の知恵を身に付けていけばいいのです。紫波町の「オガール」の例も自治体職員が一から知識を身に付け計画を立案しました。自分たちですべて行うことで事業にもより一層力が入るのです。

組織の運営において忘れてはいけないのが、集団意思決定の落とし穴です。

そのひとつが合意形成です。日本人はついついその場の全員が合意するということを重視してしまいがちです。しかし、全員が賛成した案が成功するなんて保証はどこにもありません。それなのに地域が活性化する案を考えることではなく、みんなが合意してくれる案を考えることが目的になってしまっているのです。

その他にも集団意思決定には確証バイアス、共有情報バイアス、集団浅慮など多くの落とし穴があります(詳しくはググってみてください)。多くの人で話し合えはすぐれた案が出せるというのは全くの間違いなのです。むしろ最低限の人数でスピーディーな意思決定を行い、とにかくトライ&エラーを繰り返すことが大事です。

組織においてはなにより、挑戦する人を尊敬するという空気感を作ることがかなり重要だったりします。

100人で考えるより、一人の挑戦者を100人が信じて支えるということが組織には求められるのです。

さいごに

私はアニメが好きで中学生の頃なんかはそのシーズンのほとんどすべてのアニメを見ていました。中でも当時友達と一緒にはまっていたのが「ガールズアンドパンツァー」です。かわいい女の子たちが戦車に乗って戦うアニメで、茨城県大洗町が舞台になっています。当時このアニメはかなり盛り上がっていて、舞台となった大洗町で「大洗あんこう祭り」なるものをやるということで当時私も友達と一緒に参加しました。イベントはすごい賑わいで、大洗駅にはアニメの特設コーナーが設けられたり、お祭りには自衛隊の十式戦車が展示されたりと、今さらながらこれも立派な官民連携の地方創生事業だったんだなと思います。

当時の私はまだ中学生でしたが電車で結構な時間をかけてイベントに行ったのを覚えています。当時の私にとってこのコンテンツは大洗まで交通費を掛けていくほどの魅力的なものだったということです。

アニメに限らず日本には、様々な魅力的な資源があります。これらの資源を生かすも殺すも地域の人たち次第です。

自分たちの課題は何なのか、自分たちにできることは何なのかということ、そして「稼ぐ」ことに徹底的に向き合い、できることから少しずつ始めていくことで地方は必ず変わると思います。





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