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冬の柑橘

母は昔、冬に風邪が流行ると蜜柑をストーブで焼いて熱々を皮ごと食べたと言っていた。苦いけれど皮がいいらしい。調べてみると柑橘には風邪予防、免疫強化、血流促進など様々な薬効がある。世界中に分布する柑橘には皮ごと利用したレシピが山程あり、それぞれの国で健康に役立てられている。そんな中でも信州の伝統食である柚餅子は秀逸なレシピだと感動を覚える。柚子をくり抜き味噌、胡桃、地粉、蜂蜜などを詰め数時間蒸し和紙で包んで軒下などに吊し寒風にさらす。中身はジュースやポン酢、種は焼酎や日本酒などに漬け化粧水と余す事なく利用。3月頃まで干して出来上がった柚餅子はラップで包んで野菜室などに入れておくと何年も持つ保存食になる。このレシピの優れた点は砂糖や塩、油、アルコールなどを使わずに長期保存が可能な点、柑橘の皮の苦みを茹でこぼしたり水に晒すこと無く食べ易くしている点。それらは北風と言う厄介者を利用する事によって生み出されている。マイナスをプラスに変える日本人の知恵である。全く無駄が無い。

冬の雪国では蜜柑、柚子、橙、金柑、など複数の柑橘が常備され、炬燵の上にはいつも蜜柑が転がっていた。寒くて曇天の続く北陸の冬は気分も沈みがちになる。冬季鬱と言うらしい。そんな鬱を柑橘の色や香りは一気に払ってくれる。柑橘は雪国の厳しい冬の暮らしを心身共に助けてくれている。




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