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下天の内をくらぶれば

10/28 ファニーさんひとり芝居『スケルトンマンの夢の精』を現地で見なかった。
もしも、現地で見て「もう見てられん」と絶望したら、感情は後戻りのできないところに行ってしまうと思ったので。

配信で見たところ、その心配は杞憂ではあった。(ただし単純な賞賛だけで終われないのは、ご容赦いただきたい。そして、とりとめもないのも、ご容赦いただきたい。)

コントも含め、ファニーさんは「救いようのない人物」を描いて演じるのが上手い。そういう人物に対する観察眼が優れているのだと思う。

今回の一人芝居において、メタ的要素は期待していなかった(メタ要素があるものとして身構えていなかったので食らった)。というかむしろ、メタ要素はアンフェアじゃないか? 「フィクションです」と念押しする割に、終幕に映されたあの映像は何だ? たしかに演出としてはとびきり刺さるものだけれども。初戦にして伝家の宝刀を抜いてしまった感がある。

「一生お笑いを続けること」がスケルトンマンの夢だとして、ファニーさんの夢は何なのだろう。ファニーさんもお笑いを続けたいのかな?

今回のライブが「一人芝居」だとして、やっぱりお客さんは「お笑い芸人のファニーさん」のライブを見に来ている点があるから、流れでなんとなく笑ってしまうところがある。笑いどころでなくても、惰性で。それは演劇として考えるとちぐはぐなんだけど、その居心地の悪さが今回は功を奏したかもしれない。

私が演劇(俳優が出演する舞台)を見る時に思うのは、実は「泣かせる」を始めとする「感動させる」系の演技・脚本よりも、「笑わせる」方が数倍も難しいということだ。
※これは、お笑いの方が演劇よりも難しいという話ではない。「笑わせる」を主眼に置いたお笑いと演劇とは比べられない。演劇という一つのジャンルの中で比較した際に、「笑わせる」の方が「泣かせる」よりも難しいと私は考えている。

メタで勝負するのは、最初で最後にしてほしい。禁じ手じゃないか。でも「芸人さんがやる芝居」を見に行くならそれでいいのかな、わからない。

そして、案外「怪演」「狂気」って身近なものだよ。怒ったり、キレたり、そういうのではなくて、次はもっと自然な演技のファニーさんが見たい。静かに、ひっそり、こちらの魂を震わせてほしい。

とかなんとか悶々としていたが、上記の河野さんの日記を見て、素直にそうだったなあと思えた。共感できる感想だ。私の中にもこの想いだけがあればよかったのに。
でもそういうわけにはいかないので、まだまだ続きます。

「そんなことがやりたくて芸人になったんですね」とは思わない。でも「何がやりたくて、9月17日まで待つことができなかったのですか?」とは一生思い続けていくだろう。一生は言い過ぎか。私がファニーさんとブレンドさんのことを思い出さなくなる日まで、永遠にこの質問は私の中でリフレインし続ける。

人間を刺しているにしては水っぽいSEなのは、何か意味があるのでしょうかね。

「表だけ見るな」を、興行を見に来ている人に対して使うことに違和感がある。興行に表も裏もあるものか。ただ、「安易に手に入る情報で、人を誹謗中傷するな」であれば、多少の納得はいく。

夢の一部は、現実だし、私たちにとっても現実の、同じように過ぎていく時間なんだ。誰かが夢を実現させるために藻掻いているのを見ていた(「応援していた」と言ってもいい)人間の時間も、藻掻いていた本人と同じように過ぎ去って、二度とは戻らない。

終演の影ナレで、コマンダンテを思い出してゲボ吐きそうになった。せっかく収録してもらったのに、使えなくなってすみません、スタッフさん。せっかくせっかく。大宮の顔の一つとして認めてもらったのに。色んな人の積み重ねた「お手数」を踏みにじって、日々は続いていく。苦しくて申し訳ない。別に私が謝ることじゃないんだけど。あの穏やかな日常がどうして今も続いていないんだろう。


11月2日 大宮19時公演

トットの桑原さんが、坊主になったファニーさんに拒否反応を示していたのが、印象的だった。(私は桑原さんが大好きです)

「まじでお前誰やねん。オレ知らんてコイツ」「ウソであってくれよ」

https://x.com/omiya_yoshimoto/status/1720041767612076361?s=20

桑原さん(とダイタク)は、本当に5月2日直後から解散いじりをしてくれれいると、私の観測範囲からは見えていたけれども、いわゆる「一座」である桑原さんがそういう反応だったのが、衝撃的だった。

また、多田さんが一人芝居の感想として「ファニーの想いが伝わった」と言ったところ、ファニーさんが「スケルトンマンの想いね」と即座に訂正していた。だからあれは概ねフィクションで、ごく一部はファニーさんの心情を脚本と演技に託したものである……って飲み込めますかね?
そこにラインを引くにはあまりにも現実を想起させる要素が強いので、次回は、本当に、全然リアル要素とは無縁の芝居を観たい。ファニーさん自身も今回の公演について「サッカーで言うなら『ずっとハンドしている状態』」とおっしゃっていたことだし。

何か思い出したら追記します。

なお、11/1幕張『親友』と11/3大宮オフラインは見ていません。


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