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センパイがゼッタイ

4月18日 大宮で2公演を見た。先行販売の通し券だったが、G列というそこそこ舞台から遠い座席で、この日に寄せられた期待の高さが窺えた。

私も指折り数えてこの日を待っており、特に2公演目の「石井ブレンドpresents『先輩が絶対』」を楽しみにしていた。

石井さんがかつて有楽町で開催していたスーパーバイオレンスライブ「絶対に面白いライブ」が好きだった。プロデューサーXが有楽町に着任する前に、石井さんが無双していたライブだ。しずるKAƵMAさん・囲碁将棋根建さん・ジェラードンアタックさんの3人に石井さん1人がひたすら罰ゲームを課していた。
レモン汁の目薬、足つぼマットの上に飛び降り、チョコファウンテンのマシンを利用したあつあつあんかけが無限にかかり続けるジェンガ…… スレスレの罰ゲームはどれも凄惨の一言だった。
詳細は忘れてしまったが、一度だけ、石井さんも罰ゲームされる側になるか否かを賭けてゲームをしたことがあった。結局勝利してその場を切り抜けたあの時の石井さんには、罰ゲームの神がついていた。

とまあ、そんな展開を期待していたし、おそらくそのようなライブが準備されていたようだったが、手のひらの上で転がしやすい有楽町の3人とは違い(根建さんは共通だが、この日の根建さんは最初から最後までかかっていた。明らかに誰よりもテンションが高かった)、その日の大宮は曲者揃いだった。

思い通りにならない面々に、戸惑い、嘆き、声を荒げる石井さん──それもまた、見られて嬉しいものの一つだった。ここは2021年か???

飛び蹴りや輪ゴムパッチンの怪我の危険を、さりげないチームワークで回避していくお馴染みの皆様(GAG・タモンズ・囲碁将棋)には痺れた。石井さんはおそらく普段あまり暴力を振るわれない方なので、力加減がわかっていない。そんなところも昔から変わっていない。駄々をこねて自暴自棄になるところも。
※そんな末っ子な石井さんが好きです。たとえ舞台に後輩がいたとしても国民の末っ子は健在です。

あと、根建さんと石井さんがビリビリペンの後に相撲の体制になった時、さっと大波さんが石井さんのカンペとマイクを預かりに行ったのは、最高にかっこ良かった。素晴らしいフォローだった。

引っ込んでいる人が引きずり出されるのではなく、自力で前に出る形で全員に見せ場があって、本当に面白かった。
おっとりとした雰囲気の原田フニャオさんがとんでもない提案をしたのは最高だった。原田さんのベビーフェイスに似合わない立派な体型と砂鉄のようにはびこる胸毛も、とんでもなかった。

文田さんが終盤に言った「夢みたいなライブだね」、まさにそのとおりだった。

原田さんと安部さんがとんでもないことをしてスタッフさんに怒られていたはずなのに、次のターンにはパンツ一丁で立ち尽くすただの背景(前景は石井・根建の相撲)になっていた。展開が早くて軸になる人物が次々と変わって、ぐにゃぐにゃとした脈絡のない、実に夢みたいなライブだった。でも、とても愉快な夢だった。

大宮から帰って、興奮冷めやらぬまま、配信を買ってライブを見直した。改めて見ても興奮と熱狂の時間だった。『絶対』のタイトルに求めていたのはこれだったのだ。

次の朝目覚めて、あれは昔のことを夢に見たみたいなものだなと切なくなった。ああいうライブが毎週あった頃の思い出が、夢に出てきたのだと。

しかしG列のチケットは手元に残っていた。文田さんが嫌いな「夢から覚めて『夢だったのか〜』と思うけど夢にリンクした物体が手元にあってはっとするオチ」みたいだと思った。

とりあえずチケットを三つ折りにして財布に入れた。
いつかまたgoodfeeling coffeeに行く時のために。別に石井さんから詫び値引きを受けたいわけではないけど、というかこのライブのことを話しかける勇気もたぶんないけど。まあ、お守り代わりに。


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