あざらしさんと非結核性抗酸菌症(NTM症)について

北海の魔獣あざらしさんとはLineスタンプで人気のキャラクターであり、そのファンをまじゅら―と呼ばれ作者のグレーさんはとてもファンの方から愛される方であったらしい。

先日亡くなられたとtwitterでのtweetをみて始めてグレーさんを知った。その後あざらしさんを知った。あざらしさんはとても可愛いく、特徴あるセリフなどもあってすぐに引き込まれた。いろいろ他の方のツイートなども見た。愛された方なのだなと。自分はまだまだ全然グレーさんのことを知らない新参者であるが、亡くなった年齢が若いことが気になって本人のツイートをさかのぼると思いもしないtweetが。

それは10年以上闘病しており肺MAC症であることのツイートを見たからだ。自分は曲がりなりにも医療者であり薬剤師として肺疾患のある患者にも関わってきた。でも、肺MAC症を含めた非結核性抗酸菌症(NTM症)の患者は多くはないが処方なども見てきた。その時の印象では、NTM人を若くして死に至らしめるような病気であるという認識ではなかった。ただ長期で抗結核薬とクラリスロマイシンの内服をしている結核に似ている症例ぐらいの認識で人が急変して亡くなるようなものではないと思っていた。認識が甘かった。

すぐに肺MAC症を含めたNTM症について調べ始めた。原因菌は日常生活の水道水、風呂の水、家庭内の鉢など水場などに存在するM.aviumを含めたMycrobacterium avium complexというのがMACの正式名称である。最も起因菌として多いのがM.aviumで8割を占め、次にM.kansasiiが1割、その他1割の頻度という事である。

M.kansasiiが原因の肺カンサシは50代前後の喫煙男性に多く薬剤感受性が良好で結核と同様の3剤併用療法が望ましく陰性化も期待できるよう。

標準治療はINH(イソニアジド) 5mg/kg(300mgまで)/day分1、RFP(リファンピシン) 10mg/kg(600mgまで)/day分1、EB(エタンブトール) 15mg/kg(750mgまで)/day分1を喀痰培養陰性化から12ヵ月の治療期間を要する3剤併用療法でkeyDrugはRFPである。

一方、グレーさんの患っていた肺MACは中高年の女性に多く、薬剤に感受性が低い。治療は、抗原回避、副腎皮質ステロイド、抗結核薬による治療といろいろ必要になるらしい。MAC症の治療にはRFP(リファンピシン)、EB(エタンブトール)、CAM(クラリスロマイシン)の3剤による多剤併用療法基本で必要に応じて更にSM(ストレプトマイシン)またはKM(カナマイシン)の併用を行う。CAMがKeyDrugでこれに耐性が生じると難渋するよう。また、CAM単剤治療は推奨されない。RBT(リファブチン)はRFPより強力だが副作用も強く推奨はされていない。標準治療は以下。

RFP10mg/kg(600mgまで)/day分1、EB15mg/kg(750mgまで)/day分1、CAM15~20mg/kg(600~800mg)分1または分2(800mgは分2)、SMまたはKMの各々15mg/kg以下(1000mgまで)を週2回または3回筋注の多剤併用療法がガイドラインの標準治療である。

最近の知見でCAM以外にもAZM(アジスロマイシン)250or500mg/dayの長期投与が可能となり海外はAZMベースであることから置き換わる可能性あり。最近発売されたリポソーム化アミカシン(ALIS)やアミカシン吸入は初期治療からは治療開始せず6ヶ月以上行ったうえで治療が失敗した症例について推奨されている。もっと早くに承認されていればグレーさんももう少し症状の進行を抑えられたかもしれない。

ただ現在も耐性菌などの問題から有効といわれる治療がないのも事実。ナナホシさんというかたが生前のグレーさんと新薬開発や完治するための治療法を研究機関にクラウドファンディングで寄付するという話をされていたらしい。

そして、今後そういうクラウドファンディングを企画される予定であるとnoteをみた。これは現在の医療では延命治療しかできないので医療者としても応援したいし、個人としてもいろいろな方のお話を聞いていてグレーさんのことを好きになりつつある個人としても応援したいと思った。

きっかけは些細なことだけど今後大きく動くかもしれない。応援しその動向を見守りたい。

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