しゃは社畜の「しゃ」 2

手に持ったサンプルを振り振り、部長がスキップしながらめろんのデスクの横にやってきた。
「めろんくん、この商品の貼り付け用シールを作ってくれるかなー?」
「はい。何を載せるんですか?」
「まぁ、何でもいいよ。適当で!」
「適当で原稿は作れません」めろんは怪訝そうな顔で眉根を寄せた。「記載事項を箇条書きにしてください」
「えー。めんどくs」
『きっ』と音がするほどの眼光で、部長をにらみ付けるめろん。
「‥‥分かった。書くよ。書くよ。しょうがないなーもー」
さささっと、部長はペンをメモ用紙に走らせた。
「じゃぁこれでお願いね」
「分かりました。15分ほどで原稿を仕上げるので、一応内容を確認してください」
 

「できました部長」
プリントアウトした原稿を差し出すめろん。
「ありがとう。仕事早いね!」
「いえ、これくらいは」
原稿に目を通して、部長は「あ」と声を上げた。
「何か抜けてましたか?」
「これ、ライセンス表記入ってないよね」
「‥‥」めろんは始めにもらったメモ用紙と、部長の手から取った原稿を見比べた。「どこにも、そんなことは書いてないですけど。」
「この商品は特注品だから、ライセンス表記要るんだよー」
はぁ、とため息をつくめろん。
「だから、記載事項を書き出してくださいって言いましたのに‥‥」
「いやぁ悪い悪い。うっかり書き忘れちゃってさ! ここだけ、ちょっと足してくれるかな?」
「‥‥分かりました」
しぶしぶという感じで、めろんは自分の席に戻った。
 

「はい部長。修正しましたよ」
「ありがとー! さすがめろんちゃんだなぁ♪」
「気持ち悪いんで『ちゃん』付けははやめてください」
「んー?」原稿を見て、首をかしげる部長。
「まだどこかおかしいですか?」
部長の手元を覗き込むめろん。
「これ、シール貼るの側面だから、横長で作ってもらわないとダメだわ。縦長じゃなくて。」
「‥‥それ、最初から分かってたんですか?」
「そこはほら、この商品の売り方というか、雰囲気というか!」
とぼけた顔でしれっと言う部長。
めろんはメモ用紙もろとも手に持ったボールペンを握り、へし折った。
 

※この物語はおおむねフィクションです。


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