Trans、トランス、とらんす。 - 3 変わったのではなく、気付いただけ(1)

 わたしの現在のセクシャリティは

・MtFトランスジェンダー かつ GID(性同一性障害)
・パンセクシャル
・ポリアモリー

ですが、最初からそうだったわけではありません。
今回はその辺りの経緯を、お話しします。
 

性自認について

わたしは、両親の間に『長男』として生まれました。
(上に姉が1人います)
思春期くらいまでは特に大きな問題なく、男の子として過ごしていたように思います。

問題なくと言っても、別に他の男の子達と同じようにしていたわけではないです。
おとなしいし、引っ込み思案で泣き虫だし、甘えん坊だし。
びしっとしたワイルドな格好より、きれいなひらひらした服の方を好んでいて。
格好いいロボットのおもちゃも好きだけど、可愛いぬいぐるみも大好きで。
周りの大多数の男の子達とは、やはりどことなくキャラクターが違っていました。

ただ、そんなわたしを周りが緩やかに受容して、誰も「男の子なんだから○○しなさい!」と言わなかったのです。
(いじめに遭った時期もありますが、それもどちらかというと自己表現が下手なことが理由で、男らしさを強要されることは稀でした)
何が男らしくて何が女らしいとかよく分からず、なので、自分の気質とかそういうものにあまり強い疑問も抱かないまま、わたしはすくすくと育ちました。

思春期になると第二次性徴を迎え、制服も分けられ、さすがに何かもやもやした違和感を感じだします。
それでも、行事以外は私服OKの学校でしたし、学生生活の基盤がジェンダー(性役割)の男女差が緩い文化系クラブだったので、自分の性というものをガチで直視しないままゆるゆるとやり過ごしてしまいます。
というか、部活では明らかに女子扱いされてましたね。
お茶会とか、スカート履かされたりワンピース着せられてたりw
 

そのまま何度か女の子と恋をして、卒業して、就職して、結婚して、子供を2人もうけました。
ここで初めて、自分の性に関する大きな発見をします。

我が子を抱いてあやしている時、自分の中からもやもやと「母」の気持ちが沸いてくるのを感じたのです。
それは「母かも」くらいの薄もやみたいなぼんやりしたものから次第にハッキリとした形を取り始め、ついには、心象風景的に「母」という数メートルの立体ゴシック文字が目の前にそびえ立つくらいのハッキリした感覚になりました。

生まれて初めて明確に感じた、自分の性に関する自覚が、「母」。

‥‥。

この期に及んで、一体どうしろと?(^_^;
 

母(女)というアイデンティティが自分の中にあると分かったところで、今更人生の軌道変更ができるわけではありません。
自分の中の大切な部分に気付いた喜びと同時に、それをどう受け止めていいかという戸惑いや、何やら言い知れぬ不安と恐さを感じてしまって。
わたしは一時的に、その気持ちに蓋をすることを決めます。
これはこれとして置いておいて、そのままの生活を続けることにしようと。

それに、漠然とですが、自信もありました。
これまでも、わたしの男らしくないキャラを周りは「個性」として受け入れ、活かしてくれました。
きっとこのまま上手く行く。上手くやっていける。
うろたえなくても、大丈夫だ、と。
 

けれど、そういう楽観に反して、周囲はわたしにとって不利な状況に変わっていきます。
職場でルーキーの頃は髪を伸ばしても性別不詳な格好をしても「まぁ若いしね」といって許されていたのが、中堅と言われるくらいの経験を積むと、じわじわと周囲からの圧力がかかり始めるのです。

曰く、
「もう人の上に立つ立場なんだから」
「お客様も見ているし」
「男性としてきちんとしないとね」

それに、子供が生まれたことで
「お父さんとしてもしっかりしなくちゃ」
というのも付け加えられます。

ことある毎にそういうことを言われ、ストレスを募らせていく日々。

時期を同じくして、わたしは「トランスジェンダー」という言葉を知ります。
服装や振る舞い等の、ジェンダー(性役割)の枠組みをトランスする(越える)者。
なんかよく分からないけど、格好イイ!(・∀・)
男が女みたいな格好するっていうと、なんとはなしにいやらしいとか、背徳的とか、忌むべきものみたいな印象を植え付けられつつあったわたしは、その言葉に一筋の光明を見出します。

ネットで知り合ったトランスジェンダーの友達の何人かは、トランスを「ライフスタイル」だと言いました。
人生に根ざした女装。
生き様としての女装。
そうか、これは「生き方」なのか!
それは、わたしにとって福音のような響きでした。

そうした嬉しい発見の裏で、周囲からのジェンダーの押し付けは日を追う毎に強くなっていきます。
増えていく仕事の量。責任者としてのプレッシャー、子育てとの両立。トランスジェンダーとしての自分を表現できないストレス。
色んなものが重なって、わたしは鬱病を患い、倒れてしまいました。

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