雑巾

小学校5年生か6年生か

掃除の時間、雑巾を絞っていた。

一緒にいた藤嶋くんという友達が
「この雑巾一滴も出なくなるまで絞ろうぜ!」


僕は力いっぱい雑巾を絞り、
何回も、何回も絞り、
5分ほど絞り続けたとき、
とうとう水が一滴も出なくなった

「一滴も出なくなったよ!」
僕はそう言い、自分が成し遂げた事への達成感に満ち溢れていた。

藤嶋くんがその雑巾を手に取り、絞った。
水が止めどなく溢れた。

僕の時は姿を隠していた水が
藤嶋くんの手首をつたり、バケツにどんどん落ちていった。
バケツから聞こえるバシャバシャという音は


「君は今も、これから先も、人より劣っている人間なんだよ」

とまるで僕に語りかけているようだった。

28歳、夏、僕は雑巾を絞り続けている

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