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切断、暖かい

人付き合いの苦手な私にも、好きな人はいた。

私も彼女もいわゆるメンヘラだった。それぞれ東京と兵庫に住んでいて、ネットや懐かしの携帯メールでやり取りしていた。

いつか会うことになっていたのだが、会えそうになるたびに、何故かおかしくなる彼女。何回目か、メールアドレスも電話番号も通じなくなり、それきりだった。

何がどうなったのかわからなかったが、風の便りでこう聞いた。「私は傍にいちゃいけない」と思ったらしい、だからいなくなった。そして、その行為は彼女にとって苦しみだったんだと。

そのことをもとに進む方向を考えて生きてきたが、どうにも私自身いつまでも苦しい。とある気功の先生のところに通ううち、こう指摘された。

「あなたは、彼女の偶像で大きな胸の穴を埋めている。偶像と現実のギャップが、妨げとなっている。」

「絆、和、絆、輪、世の中そればかりじゃないか、繋がるばかりで何もかもうまく行くと思っているのか?」私は常々、こう憤っていた。だが、自分自身、切断が足りなかったようだ。

共依存で虐待やDVをしたり、そういう激しいことをしないでも、ナアナアでいつまでも問題を抱えたまま一緒にいる、または同じ会社に通っている、そういう人間が多い中で、自分から切断をしていった彼女は凄いと思う。その切断を生かしきっていなかった。

先生に指摘されてから、布団の中で「切る」イメージをしてみたら、体が暖かいもので包まれた。

切断は、暖かい。

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