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南国から故郷を思ふ

コロナコロナコロナで時は過ぎ、気づけばパプアから出られなくなってから2年が経ちました。
それまでのわたしたちのルーティンといえば、1,2ヶ月おきに海外に出て用事を済ましたり休暇を取ったり。それが、2年もパプアから出られなくなっているんです。

何が一番辛いかと言われれば、行動範囲があまりにも制限され過ぎていて、引きこもりがちになってしまっていることでしょうか。
わたしが車で行動できる範囲は、半径5キロ圏内。毎日この小さな領域で、公園を1人で歩くことも、ぶらぶらと買い物に行くことも許されない環境にいることは、本当に参ります。日本だったら、気晴らしにコンビニでも言って雑誌を立ち読みしたり、新しいお菓子をチェックして試してみたりできるでしょう。ショッピングセンターでぶらぶらしながら美味しいアイスクリームをこっそり食べたりするだけで、ホッとするでしょうね。
でもわたしにはそれができない。基礎化粧品や生理用品、下着や本すら買うことすらできないこの国で缶詰になってる。でもわたしは、そうさせられてるのではなく、だけに、ここにいるという選択を自らしているだけにさらに悶々としている。

日本に住んでいる人から見れば、なんのこっちゃな話でしょう。海外旅行に思うようにいけず、悶々としている人もいるでしょう。でもわたしからしたら、コンビニもあるし、定食屋もある。通販もあるしユニクロだってある。家には追い焚きのお風呂があるだろうし、公園を1人で歩くことだってできるでしょう。それだけで、すごくいい気分転換になるだろうなあ、とよく考える。外に出たいのに出られないわたしからみたら。

先日、ちょっと体調を崩して、このご時世のため家の中に引きこもっていた私。数日間寝込んでいた間頭の中に浮かんだのは、昆布出汁のお粥とお味噌汁。漬物に梅干し。シャケの塩焼きに佃煮。こんな御前を「はいどうぞ」と今目の前に差し出されたら、わたしはきっと涙を流して喜ぶだろう、と布団の中で想像していた。でも想像が現実になることはなく。重い体を引きずりつつ、なんとか和食を作った。

出汁が体に染み渡って、梅干しの塩味が頭をスカッとさせてくれる。さしすせそのシンプルな味付けで日本食のほとんどが美味しく感じる。和食とは本当に素晴らしい。シンプルかつ美味しい。日本にいたら、こんなご飯をちゃちゃっと作ってくれる人がごまんといるのに、パプアなんて辺境にいる自分を時々呪いたくなる。

その夜私は日本に帰国する夢を見た。
ああ、やっと日本に帰れる。母に会って、母の手作りのご飯がやっと食べれる。そんな安堵感をものすごく感じた夢だったので、目が覚めた時にはしばらく鬱になってしまったほど。

日本に近々帰れることを心から信じている。でも妥協して帰ることはしたくない。
感情に任せて、勢いで帰るようなことはできない。今この激動の時代に、感情に振り回されて行動することは命取りになることもあるのだと感じているからだ。

暑い国から寒い故郷を想う。わたしの心は、何十年経っても生まれ育った故郷にずっといる。

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