【恐怖】宗教勧誘ラーメン店(後編)

 (いつか書こうと思っていましたが伸ばしているうちに忘れていました。続きです。)

 席に着いてしばらくすると奥のカウンターにいる70代くらいの男性客が私の存在に気づいた。

「聖水だよ」

 手元にお冷やがなかったためウォーターサーバーから水を汲んできてくれた。男性客が配慮してくれたが、まさか「聖水」と言われて渡されるとは思わなかった。

 私の中で「聖水」といえば戸田真琴や上原亜衣から放出される尿のことしか頭になかった。今考えればあのウォーターサーバーの中に戸田真琴か上原亜衣か、もしかすると橋本ありなが入っていたのかもしれない。

 「ありがとうございます」

 一応は受け取ったものの怖くて一口も飲まなかった。小さい頃から親や学校の先生に教育された「知らない人から食べ物を受け取ってはいけません」が役立った瞬間である。だが、今考えれば橋本ありなか戸田真琴らの聖水なら「飲んでおけばよかった」と後悔している。

 気づいたら私の頼んだ醤油ラーメンがカウンターの上に提供されていた。

 怖かったので急いで店の外に出たかったので勢いよく食べることにした。割り箸で麺を掴むと硬さがわかった。とても硬かった。イメージとしては耳鼻科で鼻に突っ込む細長い管のような感じである。渋々食うことにした。

 スープに目をやると魚介系のスープということはわかった。

 スープに麺を絡ませ、いざ実食。めちゃくちゃ硬かった。結論から言うと半分以上残した。クソ不味かったからだ。チャーシューまで不味かった。

 2名の男性客とおばちゃんはウクライナ情勢の話で盛り上がっていた。「祈れば世界平和」だの「プーチンも入信するべき」だのと宗教的な考えで話していたため信者同士であると考えられる。この件に関しては突っ込みたい事は山ほどあったが「どう退店するか」を考えていたため当時はそれどころじゃなかった。

 「聖水」を注いでくれた男性客がビールを頼み、店主のおばちゃんがサーバに手をかけた。それを狙い

「ご馳走様でしたァ!」

 半分以上残してめちゃくちゃ勿体なかったが身の安全を考えて逃げることにした。するとおばちゃんが

「あっお兄ちゃん」

 と声をかけた。私は「お前の兄ではないしお前は妹でもなんでもない」と思ったのも束の間

「これ持っていかない?」

 おばちゃんの手元を見ると経典のような書物とマスクだった。しかし逃げたかったため無視した。手動のガタガタのスライド式のドアを開けてロケットスタートを決めるように逃げた。

 気づいたら知らぬ土地の路地を抜けて駅ビルまでたどり着いた。逃げて疲れていたので飯を食おうかと思い結局その日の昼は総額1000円の牛丼を食べることとなった。

 

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