見出し画像

緊急事態宣言との戦い

自然環境リテラシー学プログラム・飛雪の滝ツアー(三重県紀宝町)2021年 1月17-18日

多気町のプログラムで行っている紀北町サイクリングコース作りで「魚飛渓の綺麗な川をテントサウナの水風呂として活用しよう」という案が出てきた。だが私たちはテントサウナを体験したことないので案を膨らますこともままならない。そこで、紀宝町にある飛雪の滝キャンプ場でテントサウナを運営している佐竹さんを訪問することになった。初のテントサウナ体験ができるということで、とても楽しみにしていた。

しかしこれから私はコロナウイルスの猛威に苦しむことになる。

コロナ禍における大学の対応により、私たちは2020年4月入学以来、たったの一度も大学に通学できていない状況にある。講義は全てオンラインで受けてきた。その中において、通常は正規のカリキュラムの一環として行われている「自然環境リテラシー学」は実施中止となった。しかし研究活動の一環として「自然環境リテラシー学プログラム」を2020年10月以降に実施してくださり、それに私たちは参加している。私たちは、実施主体者である坂本竜彦教授の定めた「アウトドア・研究活動における新型コロナウイルス対策指針」にしたがって、徹底的な感染防止対策を行っている。健康チェックと行動履歴を毎日記録し、感染の疑いはないか、リスクの高い行動が行われていないかを先生方が厳しくチェックしながら、これまでプログラムに参加してきた。

今回のプログラムの直前、全国でコロナウイルスの感染が拡大し、緊急事態宣言が発令されることなった。私は三重県外に住んでいる。もし三重県からの緊急事態宣言に「県境を越える移動を制限する」という内容が含まれたら紀宝町のプログラムに参加することができなくなってしまう。

講義が全てオンラインとなってしまったので、同級生とリアルで会うことがまったくできなかった。このプログラムは、仲間と語らいながら学び研究できる唯一の場である。絶対に参加したい。そう強く願いながら、より気を引き締めて健康管理を続けてきた。そんな願いも届かず三重県でも緊急警戒宣言が発令され「県境を越える移動」に制限がかかった。私はプログラムの参加を自粛せざるをえなくなった。

結局、コロナウイルスの猛威には勝てなかったのだ。

自宅待機となったが、Zoomにて紀宝町での様子を配信してくださることになった。しかし、飛雪の滝ツアーに参加するメンバーで唯一県外に住んでいる私だけが紀宝町に行くことができないという事実は変えられない。

プログラム1日目、この日は正直辛かった。配信は夜からだったため、日中1人の時間が長い。今頃他のメンバーは充実した時間を共有しているのだろうなと考え込み、気持ちが下がる。行けるものならいきたかった。そんなことを考えている時、ラインにこの写真が送られてきた。

私はすぐに携帯を閉じてしまった。

うやらましい。楽しそう。行けなかったのはしょうがない。私を気にかけて送ってくれたんだろうな。でも写真を見るのは辛い。

一気に様々な感情が襲ってきた。好意で送ってくれているとわかっていてもこの写真を受け止めきることができなかった。なんで自分はその場にいることができないのだろう…悔しかった。

そんな複雑の気持ちのまま1日目のZoom配信がスタートした。この配信は佐竹さんにテントサウナの運用について質問をするという内容のものだった。紀北町のサイクリングコースを作る際に参考になる、とても貴重な意見交換会だ。各々が気になったことを質問していく中で、私はなにも質問をすることができなかった。複雑な気持ちでいっぱいで、頭の中を上手に切り替えることができていなかったのである。

そのまま時間は過ぎていき、みんなが夜ご飯を食べるために休憩となった。その時の配信の参加者は坂本先生、紀北町のプログラムでお世話になっているガイドの森田さん、多気町のプログラムでお世話になっているガイドの西井さん、そして先輩と私の5人である。みんながご飯を食べながら楽しそうに喋っている声が坂本先生の背後から聞こえる。私がこれ以上辛くならないようにそっと音声を消してくださり、しみじみと優しさを感じた。そこから坂本先生を除く4人だけのZoom会議が始まった。とても信頼を寄せている大人たちに、今の自分の辛い気持ち、不安に思っていることなどを話すことができた。辛かった思いを吐き出すことができ、自然と涙がこぼれ落ちた。一度涙が出たら止まらないのが厄介なところだ。

そしてその後、意見交換会は閉会し配信が終了した。配信が終了しても辛い気持ちは拭えず、涙は止まる気配がない。仕方がないのでそのまま眠りについた。

2日目の朝、起きると森田さんから連絡が来ていた。「熊野の海から元気よ届け!」というメッセージとともに朝日の写真が送られてきていた。

実は励ましの連絡はこれだけではない。1日目の夜に森田さんや坂本先生、先輩からももらっていた。一学生をここまで気にかけてくださってとてもありがたかった。お陰で2日目は朝から元気に行動することができた。

2日目、みんなはテントサウナや熊野川でのカヌー体験をしていた。私は以下の写真のようにズームで視聴しながら、時々写り込みに来てくれるみんなとの会話を楽しんだ。

2日目は完璧に辛い気持ちが抜けていたわけではないが、終始笑顔で楽しく活動することができた。配信が切れるとともに私の紀宝町での活動は無事終了した。

私が今回得たものが2つある。
1つ目は、人や環境にとても恵まれているということである。辛い時に話を聞いてくれる大人や常に気にかけてくれる人が周りにいることはとても幸せなことだ。また今回現地に行けなかったことで、みんなと活動できる素晴らしさをあらためて感じることができた。リテラシー学を通じて、こんなにも「一緒に楽しい時間を過ごしたい!」と思えるメンバーに出会えることができ、本当に参加してよかったと思う。
2つ目は、オンライン配信を受け取る側の視点を持てたことだ。このコロナの時代、様々な情報をオンラインで配信する機会が増えてくると思われる。その時に今回の経験はとても生きてくるだろう。

今はただ早く自由に動けるようになりたいと願っている。みんなのお土産話を直接聞く日が来るのが待ち遠しい。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?