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ヤマムラメグミノエッセイ

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今まで出会った人や出来事、忘れられない心の記録
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#旅立ちの手紙

受賞作品【ヤマムラメグミノエッセイ】#4 はじめてのひとり旅

「メグちゃん、リハビリの時間だよ。」 毎朝、同じ時間にカーテンが開く。 抗がん剤治療の真っ只中でも容赦ない。ベッド上でぐったりした私の足が力強く掴まれ、先生の手によって勝手に動き出す。 (スパルタだ...鬼だ。) 気持ち悪さに耐えながら、そんなことばかり頭を巡る。 23歳で右腸骨骨肉腫と診断。 身体障害者になる自分を受け入れられないまま、手術で骨盤の1/3と中殿筋、小殿筋の一部を失った。 立ち方すらわからなくなった自分に震えが止まらない。 歩けない自分が悔しくて許せ

【ヤマムラメグミノエッセイ】#3 オーバーサイズ過ぎる空みたいなシャツ

空みたいなシャツを着た今日は空がとても美しかった。サイズミスにより飾るだけにしておけと言われながらプレゼントされたオーバーサイズすぎるデニムシャツ。 なんで生きるために治療してんのに 身体を破壊するんだよ。 ここは治すとこなんじゃねーのかよ。 今まで1万人治療してきてこんなに 酷くなった人いない? なってんじゃん。説明してくれよ。 納得なんてできねーよ。 毎日怒りと悲しみに震えていた。 目が覚めると必ず朝が来ていた。 朝が来ると病院に向かわなければならない。 放射線を当て

【ヤマムラメグミノエッセイ】#2 東京の母

入院中、よく隣のベッドになった広島出身の岡野さんは、人工関節にする手術を受けるために入院していた。70代くらいだろうか、ピンと伸びた背筋と手入れの行き届いたショートカットのグレイヘア、丁寧な話し方から品の良さをひしひしと感じた。 入院中、暇を持て余した私たちに時間はいくらでもあったから、いろんな話をしてとても仲良くなった。初めて聞いた原爆体験は岡野さんからだった。 ある日、横倉先生から病棟のカンファレンスルームに呼ばれた私は、手術の結果、更に抗がん剤の治療が必要だと言われ