【ヤマムラメグミノエッセイ】#2 東京の母
入院中、よく隣のベッドになった広島出身の岡野さんは、人工関節にする手術を受けるために入院していた。70代くらいだろうか、ピンと伸びた背筋と手入れの行き届いたショートカットのグレイヘア、丁寧な話し方から品の良さをひしひしと感じた。
入院中、暇を持て余した私たちに時間はいくらでもあったから、いろんな話をしてとても仲良くなった。初めて聞いた原爆体験は岡野さんからだった。
ある日、横倉先生から病棟のカンファレンスルームに呼ばれた私は、手術の結果、更に抗がん剤の治療が必要だと言われ