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映画「枯れ葉」に見た優しさのエッセンス

※以下、映画「枯れ葉」のネタバレを含みます!



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シネコヤさんにて

アキ・カウリスマキ監督の「枯れ葉」を見ました

全国ロードショーが2023年12月15日
人から聞いたのが今年の4月終わり
見れると思わなかったのですが

小田急は鵠沼海岸駅最寄り
「シネコヤ」さんで見ることができました

映画館「シネコヤ」


選んだ座席から撮った写真

「この映画なら一番前か後ろ、
私なら前で見るかな、おすすめですよ」

優しいスタッフさんに教えてもらい
ちょうど悩んでいたところで
ありがたく前の席を選ばせていただきました。

お店の雰囲気が良くて別世界のような空間でした。
次は上映の予告で見た
パーフェクトデイズを見に行こうかな。



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アリ・カウリスマキ監督の「枯れ葉」
どこか虚しいような、でも笑ってしまうような
不思議な作品でした。

知らない国が舞台なはずなのに
なぜか没入してしまう。
少しドキドキしながら最後まで楽しみました。


主人公、ホラッパが依存症をもっていて
oasisもびっくりの
「cigarettes and alcohol」(酒と煙草)。
何かというと煙草をふかし
何かというと酒を呑んでいる。

職場でも酒を隠し持ち、
ヒロインの家に招かれた時でも
酒と煙草を常に摂取するような人。

後日、ヒロインのアンサは
友人に愚痴をこぼす。
「私の家をパブと勘違いしたから追い出した」



主人公を見ていて、(う〜ん、この人は…)
と少し頭を抱えてしまうのですが
最後は酒を絶ち、秋の黄金の枯葉の中を
二人でを歩いていくシーンで幕を閉じます。



ざっくりというとこのようなストーリー
なのですが、この映画
「あ、やさしいやさしい!」
「え、このひとも!」
「みんなやさしいな!」

というくらい
「優しいキャラクター」がたくさん出てきます。

一人一人ご紹介させてください。




まずホラッパの同僚。

ホラッパは人とあまり
コミュニケーションをとろうとしない。
仕事が終わった夜に仲間たちは
夜の街へ繰り出して行くが、
ホラッパは専ら一人で本を読んでいる。

そんなホラッパを
カラオケにいくぞ!と誘ってくれる。

やさしい


この誘いがなければ
ホラッパとアンサは出会うこともなかった。

職場でお酒を隠れ呑んでいたのがバレて
クビになったホラッパを気にかけてくれ、
その後も関係は続いていた。



ホラッパが入院した際にも
ヒロインのアンサに真っ先に伝えてくれる。


ただその際に
「君の友人は僕の歳を誤解している。
誤解を解きたいから彼女と話をさせてくれ」

(お、お前…
それが目的ではなかっただろうな…?)

誘ったお店で「美声を披露する」
と言って歌ってもなんかパッとしなかったり、
ちょっとコメディリリーフなキャラが彼。


彼を見ていると、かつてここまで
人を気にかけてくれるのが上手な人
いただろうか…と考えさせられる。

私もそんなタイプの人間ではない。
どちらかといえばホラッパのタイプ。
自他共に認める根暗。
私にもこんな友人がいたらな、とも思うし
私も相手にとってこんな人になれたら、とも思う。




ヒロインのアンサ。
そしてアンサのスーパーで働いていた同僚たち。


勤務先のスーパーの裏手。
賞味期限切れの品物を廃棄しているアンサ。
そこにくる身なりの良くない男。
その人が言う。

「なにかいただけますか?」
「どうぞ」
答えるアンサ。
廃棄物を手に取りバッグに入れる男。

その一部始終を見ている警備員。



就業後、足を上司に止められるアンサ。
カバンの中を改めさせられ、食べ物が出てくる。

「廃棄物を人に渡しているのも見た」
「君はクビだ」
「どうせ賞味期限切れよ」



そのやりとりでアンサの脇を固める同僚二人。
一人が言いながら賞味期限切れの品を机に置く。
「私も持ってるわよ」
「そうか、君もクビだ」

もう一人が言う。
「あぁ、それは私が担当してるコーナーね
廃棄し忘れた私の責任よ
「君は正直だな、首にはしない」
「結構よ」

結局三人で首になることを選択する。

やさしい


この三人に共通する優しさは
「弱者の為」というところ。

この優しさを出力した理由は他にもある。

そもそも優しさという感情もないかもしれない。
どうせ賞味期限切れだから。
廃棄物が勿体無い。その程度の感覚。

結果的に弱者の為になっている。
それだけの結果論。

でもそれが優しさなのではないか。
やってあげた、してあげた、
そんな思考だと見返りなどを期待してるようで
あまりクリーンな感情ではとも思う。
見返りがなかった時の精神衛生上も問われる。

(あぁ、こうすればこの人は結果的に助かるかもな)
そんなフラットな感覚が優しさのように思う。

なんとなく相手のためを思う。
前述のホラッパの友人は
その為にたくさん相手と話して
意思の疎通を図っていた
のではないか。

自身のできてないことばかり。
優しさの第一歩は
やはりコミュニケーションなのだなと
改めて思った。


他にもアンサは

野良犬を保護して飼ったり、
(この時に犬を洗うシーンで
犬が体を震わすのだが、そこで初めて
アンサが歯を見せて笑うのが印象的だった)



ホラッパを家に招待した時に
ウキウキでお皿やフォーク、
食前、食後のお酒まで用意
して…。

やさしい

そしてかわいい


主要人物以外のキャラクターも優しい。


ついに酒を絶ったホラッパ。
アンサに電話をして会いに行くにあたり
どうしても正装したい。
住んでいる部屋の隣の住人を訪ねるホラッパ。
そこでスーツを借りたいと申し出る。
大事な会合があるとか吐かして。

結局見透かされるのだが、
相手は快く送り出す。
「持ってって良いぞ、俺はもう着ないからな」

やさしい


椅子にかかっていたジャケットを手に取り
外へ出るホラッパ。
カメラ外からも出たところで響く
クラクションと衝撃音。


病院へ見舞いへ行くアンサ。
その時の病院の受付で
ホラッパとの関係性を訊かれ返答に詰まる。
身分証を見せても関係性を証明できない。

「彼の妹です」
「信仰上の」


(無理あるやろ…)


みえみえの嘘に対して受付は
「わかったわ、良いわよ」と。

やさしい


足の骨折を残してはいるものの
退院することになったホラッパ。
しかし、退院するにも服が無い。


アンサも込みで一通りの登場人物には
「プロレタリアート」(労働階級)
という共通点がある。


何をするにも人物一人一人が
生活もやっと、という側面があり、
それが随所にあるのがこの映画の特徴でもある。


ベットに腰掛けるホラッパに歩み寄る看護師。
「これ使って」
「サイズが合うかはわからないけど」
「旦那が使っていたものよ」

やさしい



飼い犬と迎えに来ているアンサ。
ホラッパは松葉杖をつきながら、
二人と一匹、黄金の秋へと歩み出してゆく。



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ラストの枯れ葉舞う一面落ち葉のシーンは圧巻。

色々あって結ばれた
二人がかっこよかった

劇中でロシア・ウクライナ情勢を伝えるラジオが
終始流れるシーンがあるのですが
少し暗くなってしまいました。
早く終わって欲しいものです。

でも珍しい演出ですよね。
どういった意図があったのだろう、
リアリティを持たせる為でしょうか。
冒頭で言った没入感なども
こういったところに理由があるのかもしれません。


私も裕福な人間では無いので
そういったところにも自身を投影してしまったり。

一つの映画を見るとそのどこかに
自身が一生懸命になれる、元気になれる
要素があるなと思います。

この映画を見て私も
「一つのことを思い続ける」ことを
改めて認識し、頑張ろうと思えました。

もしこのノートを見て映画に興味を持った方は
ぜひ「枯れ葉」を見ていただきたいし、
映画館に足を運んでみてくださいね。


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