見出し画像

ポケモンSV(バイオレット)感想

 ポケットモンスターSV(バイオレット)のストーリーをクリアしました。TLに山ほど流れてくるチリちゃんの実際の活躍とフォローしてる実況者のポケモン動画を見るためにという不純な動機で申し訳なかったけどシナリオがめちゃくちゃ良かったです。

 私はポケモンは初代の赤緑とその次は剣盾(シールド)をやっていまSV(バイオレット)というポケモン遍歴でシナリオ上のセオリーというのがよくわかんないんですが、チャンピオンロード・レジェンドルート・スターダストストリートという3つのルート、最後のザ・ホームウェイと結構なボリュームで見ごたえがありました。

 SVやってて思ったのは、メインターゲットを子供に据えてお話を作るときに、子供の冒険だけを華々しく描くとなんか読者(特に大人)は「こんな時に大人は何やってんだ?」という気分になってしまうという話です。(まあ、子供をメインターゲットにするなら大人の視点なんか捨ておいてもいいとは思うけど、困ったときに大人なんて頼れないと子供に思わせてしまうのもよくないので。)かと言って大人がなんでもかんでもやって危険から遠ざけると、SVのシナリオで語られた「自由と冒険のすばらしさ」を子供から奪うし、子供の読者も自分たちの活躍の場がないと感じるんじゃないかな、このバランスが難しいなと。私はもういい大人なのでポケモンSVが現代を生きる子供にどう映ったのかはわかんないんですが、少なくとも作中の大人のほとんどは自分の責任を果たして子供たちを見守りつつ、メインの冒険は子供たちだけで成し遂げていたのが良かったなと思いました。

 ミライドンは伝説のポケモンという割に最初から一緒に居て主人公を背中に乗せてくれるなんて随分気安い存在なんだなと思ったけど、シナリオ終盤でミライドンはタイムマシンで未来から連れてこられたからこの時代では珍しいだけで未来の世界ではありふれているポケモンであろうということで納得しました。しかも未来からやってきたもう一匹の個体に縄張り争いで負けちゃった方で、つまりは「たった1匹しかいないすごく強いポケモン”ではない”」という意外性。

 これってペパーくんとマフィティフの関係性とも近くて良いなと感じました。マフィティフも別にプレイしてればそこいらを歩いてて簡単に捕まえられるポケモンで代わりがいくらでもいる。でもペパーくんと一緒に暮らして、秘伝スパイスみたいなオカルトに頼ってまで何とかしてあげたいと思えるのはあのマフィティフだけで、その愛着は伝説のポケモンの貴重性にも匹敵するんだよという話でしたね。

 縄張り争いに負けた弱い方の個体だというのも、ボタンちゃんに最初から妙に懐いてたことに説得力を持たせてて良かったです。いじめられっこだったミライドンが立ち上がって、仲間の応援に力を貰って最後の戦いをやり遂げてくれたのも王道で胸が熱くなりました。

 ミライドンにとって自分と同じ存在が今の時代には同種のもう一匹しか居ないという点はネモちゃんに掛かっていたんでしょうか。ネモちゃんは戦闘狂な部分がネットミーム的に取り上げられてた(作中でボタンちゃんに「マジ ネモいな…」とか言わせてるあたり制作側も狙ってるところあると思う)けども、自分と対等に戦えるライバルを求めてて、そうやってチャンピオンにまでなってくれた主人公のこと本当に嬉しく思ってるのが素敵でした。主人公とのポケモンバトルでは、負けて悔しいはずなのにそれをぬぐって「やったー!」って言える気持ちの良さが好きです。それとネモちゃんを配置することでシナリオが暗くなりすぎないよう調整されてると感じました。

 最後のフトゥーAIがペパーくんを置いて旅立って行ってしまったところは、ペパーくんのやりきれない気持ちに胸が痛くなりつつも、フトゥーAIとしては親の形をしたものが目の前で壊れてしまう(死んでしまう)ところをペパーくんに見せたくなかったのかな、そういう愛情もあったのかなと感じました。その愛情を受け入れるのかどうか、どう吹っ切るのかはペパーくんに委ねられてるし、最初は反目しあっていたボタンちゃんが気づかう言葉を掛けてくれて良かった。友達は宝です。

 ありふれたものの中の一つに愛着を持ち懐くこととか最後に旅立っていった博士がどうなったかは想像に委ねられるところとか、なんとなく『星の王子様』を感じるお話でした。人生という冒険は続く。(これは星の王子様をオマージュしたアニメの台詞だけど。) ボン・ボヤージュ!