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夢に向かうスタートライン。     先生との出会いが私を変えた。        私、リコ。ムショ帰り。

初めまして。
私、リコです。

 少し前まで、和歌山刑務所に入っていました。刑務官とかじゃないです。すみません、ここで一回笑ってください。でないと、先が読めなくなってしまうから。刑務所の文字で不快になる人は、ここで読むのをやめてください。だって、それが、私だから。受け入れられない人は、ここでやめてください。

 ムショ帰りの一文無しの私が、今普通の生活が出来ています。手に職も付けました。それなりに裕福(だと自分で思っているだけかもしれない?)な暮らしをしています。
それは、ある人と出会ったからです。ある人に出会い、そこからまたいろんな人に出会い、今日がやっと来たと思っています。
これは、そんなことを書いた実話です(ちょっと自分を良く書く癖はあるけれど)。

 私。運がいいんです。今、刑務所も定員オーバーな時代。男性刑務所と違って、ある意味男女差別か!ってほど女性刑務所ってそんなにないから、定員オーバーはある意味当たり前、慢性なんです。そんな狭き門を突破して2回も入れた、エリートが私、です。笑わないとやっていけないです。
まともな両親なんか、いない。
仲の良い兄弟・姉妹も、いない。
信頼できる友達なんか、いない。
尊敬できる恩師なんか、いない。
学歴、ない。
貯金、ない。
長続きした仕事なんか、ない。
行きつく先が、狭き門だって、あなただって理解できるでしょう。

 最初に出てきた時の保護司さん…堅気の人にはわからないかな。
ムショ帰りは、保証人とかも必要だけど、生きる機会をちゃんと学ぶために「保護司」って人の厄介になるんです。毎週とかだんだん期間は長くなるけど、保護司さんのとこに行って、どんな生活しているとか、どんな悩みを持っているとか、しゃべりたくないことまで話さなきゃならないんです。
時に住むところがないと、その保護司さんちに、居候させてもらうことがある。
 立派な保護司さんが多いです、たぶんね。私が最初に当たったのは、悪いけどクズです。住まわせてやるから、修業と言う名の「お手伝いさん」をさせられた。仕事じゃないですよ。確かに住居費や食費は払えなかったけど...
 目がとてもいやらしくてね。いや求められれば、させてやってもいいですよ。そんなの今までに比べたら、そんなに大したことじゃない。でも、そういうことしないのが、私が一人でも食っていけるようにするのが、国から任命された保護司って仕事じゃないのかな、と思っていた。ああ、この人に当たった人は、更生なんかできないだろうなと思った。

で、二回目があった、って流れです。

 次の保護司さんは、ちょっと変わった人でね、いい意味でね。女性は女性同士でないと言いにくいこともあるだろうからって、「先生」に引き渡された。ニ回目となると手厚いです。
「先生」は、保護司じゃないです。大学で教鞭取りながら、企業インストラクターとかいうちょっと理解できないことを仕事にしていた。保護司でもないなら、誰からも評価されないし、まったくおめでたい人だと最初は思った。きっとまた、私は和歌山に戻るんだろうな。三回目のラッキーがありますようになんて、思いながらね。

 しょっぱなから「面倒はしっかり見させていただきますが、今のところ私はまだあなたを信用していません」と言われました。なんて奴だろう、と正直思った。でも、考えれば最初から信用なんて、人である限りできないよな、と思った。だって、私もその「先生」つう人を信用していなかったし、お互い様。
 ただ、少なからず、変態でもない限り、女だから、いやらしい目では見ない事だけは、助かったと思った。

 その「先生」はかなり変わっていて、部屋を借りる保証人や仕事に就く保証人にはなれないけど、部屋は貸してやるからそこに住め、って。3LDKのマンション。
 こんなとこ住んだことも、遊びに行ったこともないや。どれだけ豪華かっていうと、二時間の料金が高い駅前のラブホより豪華…すいません、他に比べられないんで。


 ガーデニングが行き届いた高そうな鉢植えが、いくつも置いてあるベランダがあった。カーテンは、キレイなピンク色の花柄で、フリルまで付いている。カーテンを止めるの…タッセルつうの、シルクのリボンだった。ベッドは、アンティーク。さらに木製。高そうなものばっか。セレブかよ!。
布団、違う!、ブランケット?と枕は、出所祝いにと、私専用のを買ってくれた。
 どこまでお姫様なんだよって思った。ただ、物だけで、人が信用が出来るほど、私もだてに二回も入ってきたわけじゃない。

 その晩の夕飯は、歓迎会してくれた。
そのマンションには、先客、いや、ムショ帰りの先輩が二人いた。さすがの私も、ちょっとビビる怖さを持っていた。この人たちと喧嘩すると追い出されるのかなと、ぼんやり思った。「今日だけは、お客さんしていていいよ」と、先生が言った。先輩たちが、料理作ってくれた。美味過ぎた~。
その怖いお姉さんたちが、茶碗とコップ、お箸、買ってくれてた。嬉しかった。素直に嬉しかった。聞こうとは思わないけど、この人たちも、私ぐらいキツかった人生送ってきたんだろうなと思った。

 「これからは、人から何かしてもらったら、必ず自分も何かを返すように」。先生が言った。本能レベルで、今度は違うとわかった。今度は何かが変わる。きっと、私は変われる。そう思った。

 ただ、はじめは、先生に嫌われない事ばかり考えていた。嫌われたら、ここは出される。信用していないんだから、当たり前だ。
でも、もうムショは、絶対に嫌だ。三回目がラッキーなんか、嘘。そして、最初の保護司のとこに帰されるのもごめんだ。猫を被ったような、ビクビクした毎日だったように思う。

 このまま書いてしまうと「はじめに」なのに、全部私の出来事を書きそうなので、ここで終わりにする。
期待せずに読んでいってよ。人って、やり直しは何回だってできる。あ、何回もやり直してはダメ。できるだけ一回でまっとうになることが望ましい。でも、スタートラインはいつでもどこにでも引けるって先生に教えられた。

この話は、私にどうして三回目がないのか、そんな話。

愛犬メグは保護犬です。メグの里親になってから劣悪な環境下にいる保護犬・保護猫の存在を知りました。そして、その子達を助けようと寝食を忘れてお世話しておられる方々の存在も知りました。私は少しでも小さな命とそれを守ろうとしておられる方々のお力になれるような活動をしたいと思っております。