お祭り男

私にはお祭り男の血が流れている。

私の実父はお祭り男であった。

父は中学校の体育教師だった。
赴任先で任される部活は様々で、剣道、柔道、バスケット、サッカー。

夏休みは部活で忙しかったようだが私たち子供が寂しかったかは覚えてない。
夏休みになると我が家にBBQをしに部員を連れてくる。まるでお祭りだ。それはそれは楽しかった。歳の離れたお兄さんお姉さんが可愛がってくれ、遊んでくれるのが、従兄弟のいない私たちは楽しかった。
部員から下の名前で呼び捨てにされてるのが娘ながらに「お父さん、好かれてるんだ」なんて思って、慕われてる父を見るのがとても嬉しかった。
だから今でもホームパーティーはわくわくする。

父は教師をしながら町内会の役員もしていた。町内会といえば夏になるとお祭りだ。
屋台では焼きそばを焼き、カラオケ大会の司会をし、櫓の上で太鼓を叩く。

町内会での役員の仕事は大変だったらしい。やりたくない人も、面倒な人もたくさんいる。母は率先して面倒がって手伝わない。父自身仕事が終わってからや、休み返上での作業だったし、家族も巻き込まれた。
だから役員が終わった後はせいせいした、みたいな話をしていた。役員を終えたくらいから、部員も家に来ることはなくなった。お祭り男はいなくなった。ただの男は1人で趣味を楽しむようになった。

しばらくして父は癌になった。癌になって56歳で亡くなった。

今でも夏祭りを思い出しては胸が熱くなる。夏の夜の匂いが、ぬるい風が好きだ。

このご時世、町内会の祭り、なんてものはもうないかもしれない。
あの文化祭に毛が生えた手作りの、商売の匂いがしない、あの感じが好きだ。

私ももう大人になった。子供も赤ちゃんじゃなくなった。あぁ…地域のお祭り、参加したい…!あわよくば私も太鼓なんて叩いたりして、下手な司会もやったりして、終わったら打ち上げをしたい。父のように楽しんで地域貢献がしたい。

父が亡くなってこないだ10年になった。夏の夜、焼けた肌で思いっきり笑う父が今でも目に焼き付いている。

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