マッチングアプリで出会った男性のこと⑥の1

7人目の男性は、またまた一回り年下だった。
あちらからの【いいね】に応えてマッチング。
住んでいる市は、30kmほど離れていた。
でも、仕事で行くこともあるし、私にとっては、そんなに遠くない距離だった。
【お笑いが好き】とプロフィールにあったので、
笑いのツボが一緒だといいな……と思った。
毎日仕事ばかりの日々で楽しいことが無い生活をしていた私は、
せめてテレビを観ながら笑いたいと、お笑いの番組はよく観ていた。

好きなお笑い芸人や番組を聞いてみると、
『特に推しはいないけど、毎週観てるのは水ダウかなぁ?』
とのことだった。
私も、質問してはみたものの、特別に「絶対この人達が大好き!」っていう芸人さんはいなかった。
けれど、水曜日のダウンタウンは毎週観ている。
『いつか一緒にみたいですね』と、言ってくれた。

早めに会いたいと伝えると、すぐに日程を提案してきて、
こちらがどこで会うかと聞く前に
『このお店かこのお店かこのお店の中で、気になるところある?』
と聞いてきた。
こちらが聞く前に、先にお店の提案をされたのは初めてだったし、
3つのお店を具体的に挙げてきたところも、良かった。
「どこでもいいです」
との返事に
『じゃあ、僕が決めちゃうね!』と、さっさとお店も決めてきた。
12才も年下でも、リードしてくれそうで頼もしい。

会ったのは、M君とお別れした4日後だった。
  (気になりましたらこちらへ)
約束の時間は最初20時半だったけれど、
『仕事が早く終わりそうだから、もうちょっと早く会える?』
と連絡があり、19時に私の家の方に近いカフェで待ち合わせをした。
行ってみると、爽やかめのプロフィールの写真とは全然違う、
小柄だけどガタイのいい、口ひげを生やした男性が、携帯を手に立っていた。
白いTシャツにハーフパンツにサンダル。
建築設備関係の会社をやっているとのことだったけれど、
それっぽすぎる……
「え~~~、めっちゃ苦手なタイプやん……」

車を停めて降りてみると、
「今日貸し切りみたい。他のお店でいい?」と、
最初に提案してきた3つの中の、別なお店の名前を言ってきた。
「はい。では、そちらに移動すればいいんですね?」
と返事をして車を走らせたものの
「このまま帰っちゃおうか…?」なんて気持ちも一瞬よぎった。
でも、真面目な私はそんなことも出来ずに、
指定されたお店に移動した。

お店に入ると、席に着くなり、その男性は
本名をフルネームで名乗ってきた。
そんなことをしてきた人は、もちろん初めてだった。
名字をもじって学生時代からそう呼ばれているんだと、
ニックネームの由来を説明してきた。
聞いてないのに。

「ご飯食べてきた?お腹すいたな。何にする?」
と、メニューを広げて、
「あ、もう決まった」とすぐに言った。
そのカフェには、あまり食事の種類は無く、
私もいくつかのパスタの中から、食べたいものはすぐに決まった。
「これがいいかな」と言うと
「やっぱり!?俺も同じ!」
カボスが入ったトマトの冷製パスタだった。

パッと見の第一印象とは違って、話してみると、
やっぱり爽やか系の真面目な感じの人だった。
中学・高校とサッカー部だったそうで、よく見るといかにもサッカー部っていうイメージに見えてきた。
キャプテンで、フォワードだったらしい。
私は野球部の人と仲が良かったので、サッカーをやっていた人とはほとんど縁が無かった。
(正直に言えば、サッカー部の人達って軽そうで苦手だった。大人になってもその印象は変わらずで、一時期はサッカーが好きだというだけで印象が悪かった)

子連れでバツ1だった元奥さんとの間に子供が生まれて、
一軒家も建てたのに、浮気をされて離婚したらしい。
子供は奥さんが引き取り、実家で育てていて、
その実家はすぐ近くにあるとのこと。
奥さんの連れ子は女の子で、もう高校生だけれど、
今も仲良くしているし、自分の保育園児の息子ともマメに会わせてもらっているらしい。

私とマッチングして会っているというのに、
「胃袋掴むといいよ」などとアドバイスしてきたり
「アプリでうまくいくコツを教えて欲しい」などと言ってきた。
おいおい。女性として見る気はないってことかね?
と思ったけれど、特に腹が立つこともなく、楽しくお喋りができた。
M君とお別れして心も沈んでいたから、数日ぶりに心が晴れる時間が過ごせた。
それに、M君には、食事を作って食べてもらうことはなさそうだったから、
「胃袋を掴むといい」と言われ
「いや、掴みたいし、掴む自信はあるよ」と思ったし、
彼にそう話した。

あっという間に2時間ほど経ってしまい、帰ろうかと席を立つと、
さっさと伝票を持ち財布を出して、レジに向かってくれた。
2人目と4人目の男性は、帰ろうかとなってから
「トイレに行ってくる」と席を立ったので、じっと待っていると奢られるのを待っていると思われそう?と思い、自分が飲食した分のお金を用意した。
2人ともトイレから戻って来てから「いいのに」と言ってくれたけれど、
だからといってそれを返してはくれなかった。
真っ直ぐレジに向かってくれるのは、気を使わなくてありがたい。
財布を開けようとしたけれど、もちろん
「いいよ」と言ってくれたのも、男らしくて良かった。

外に出るとすぐ
「LINE交換しよう」と、言ってきた。
本当は1回会っただけで交換したくなかったけれど、
彼が当たり前のように言ってきたので、断る気にはなれなかった。
会社も始めたばかりで忙しいとの話を、食事をしながら話してくれたけど
「巻き込んじゃうかもしれないけど」などと言ってきた。
え、それってもうお付き合いするってことなの…?
次会う日は……とまで、先に言い出した。
こちらがどう思ったかは聞かないんかい?
まぁ、悪くは思ってないけどさ……
「心配になっちゃうから、家に着いたら連絡してね」と言ってくれた。

これまでに会った人には、家に着いてから、
どう思ったかを改めてアプリのメッセージで送ったし、
相手の気持ちも後で聞いたけれど、
その人とは改めてそれを確認することは無かった。
かといって、もちろん、もうその日からお付き合いがスタートしたわけではないんだろう。
7月末だったし「お盆は仕事忙しい」と言っていたので、
とりあえず次に会うのはお盆過ぎだね、っていうことになった。


 【⑥の2はこちら


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