2024/04/24からのM君とのこと②

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M君に名前や家や職業を教えた私は、M君にも聞いてみた。
「私に名字を教えてくれること、出来る?」

すると、

『名字を教えると、Facebookとか見られてしまうのが嫌なんだ』

という返事。
私は、実名登録のFacebookはやっておらず、今後も一切やる気は無い。
以前は、登録していなくても人様のを覗き見出来たFacebookは、
いつからか、登録しないと見られなくなっていたので、
「登録してないから、見られないよ」
と言ったのだが、それでも名字を教えてくれようとはしなかった。
まぁ、自分は聞かれたわけでもないのに勝手に教えたのだから、無理やり教えろというのもおかしなことか……

私の職業は、同業の人があまりおらず、
専門的なことでもあるため、
聞かれた人に教えると
「すごいね」
などと言われることが多いのだが、
不思議なM君は、職業について教えても、それについては一切触れることはなく、
住んでいるマンションの所有者について尋ねてきた。
なぜ、まず最初に疑問に思うことが、そこなんだろう?

家に来たがるM君に、好きな食べ物を聞いてみた。
どの時間に来たとしても、1食何かご飯を食べる時間にはなるだろう。
私は料理が得意だから、好きな物を聞いて腕を奮いたかった。
するとまた、想像とはかけ離れた返事がきた。

『手料理は比較的 苦手かも』
『普段 母の料理しか食べてないからね』

そこまでは良かった。
その後は、想像もしないものがじゃんじゃん送られてくる。

『唯一 この女性の料理だけは食べられたんだよね』
というメッセージとともに、
本屋で撮ったツーショット写真。

「だあれ?」
と質問すると
『20○○年〇月〇日から20○○年〇月〇日まで付き合っていた恋人』

8年前に別れたという彼女の写真だった。
なぜ本屋で写真を撮ったのかと聞いてみると
『いつでも撮るよ』

そして、彼女と撮ったプリクラ、
彼女の部屋の中、
彼女の作った手料理、
の写真が次々と送られてきた。
見たいとも、見せてとも、一言も言っていないのに、勝手に次々と……
好きなはずではないM君だけれど、元来嫉妬心が強い私は、胸が苦しくて仕方がなかった。
付き合い始めた日と、お別れした日まで知りたくなかった。
彼女はなかなかの美人だったし、とてもホッソリとして、スタイルが良かった。
胸の谷間が見えるような服を着ている写真では、細い割には胸は大きいことがハッキリわかった。
『ふくよかな女性が好み』
と、言っていたのに……。
そして、私は太っているのに……。

何より、
『母以外の手料理が食べられたのは、元カノだけ。
あなたの作ったものは食べられない』
と、遠回しに言われたのだ。
こんな屈辱的なこと、あるだろうか……
それに、8年も前に別れたという彼女の写真を、こんなにも大事に携帯のフォルダに保存しているのだ。

とはいえ、
私は彼女ではないので、怒る権利もない。
それでもそんな夜はやっぱり、食事があまり喉を通らなかったり、なかなか眠れなかったりした。

家に来たがる割には、M君の方から日程の提案は無い。
こちらからお誘いしても
平日は仕事で疲れてしまう…
私の家までは遠い…
などと言ってくる。

それでも、来たときにどうする?という会話はしてくる。
『部屋に行ったら、気持ち良くなることしてくれる?』
「例えばどんなこと?」
『全身を舐めて欲しい』
「いいよ」
『ありがとう!』

『生でしてみたいな』
「もう生理もないから大丈夫だと思う」
『本当に?生のHはほとんど経験ないから、嬉しい』

アラフォー独身の男性に、これだけ人参をぶら下げているのに、
すっ飛んでくる気配も無い。
本命の彼女がいるわけでも無さそうなのに……

やっと、M君が来る日が決まり、
私は本格的に掃除を始めた。
まずは模様替え。
居間に不必要な家具がいくつかあった。
不必要だから捨てたくても、そこに収納されている物達を整理しなければならない。
収納されている物は書類などの紙類が多く、今後必要な物か、そうでない物かを確認するのには相当時間がかかりそうだ。
とりあえず、確認作業は後回しにするとしたら、それらを保存しておく入れ物と、それを置いておく場所が必要になる。

娘達が使っていた部屋は、物置状態になっていたから、そこに置くしかない。
毎日休まず働いている私には、隙間時間にそれをやることは、本当に大変だったけれど、やっとM君が来てくれる!会える!
と思うと、それほど苦にはならなかった。
いつかはやらなければならないことだったんだし。

睡眠時間を、一般の人より多く必要として生きてきた私が、
眠れないのに元気でいられて不思議だった。
ショートスリーパーと呼ばれる人達は、こんなに時間があるものなのか!

家の場所と、車を停めて欲しい場所をGoogle mapで知らせた。
するとまた、想像もしない文字列が並んだ返信が送られてきた。

『娘に怒られそうなお母さんだね』

は?どういう意味……?

『なんでもかんでも教えちゃダメだよ、って娘に怒られました、
って人がいたな。モテますね、私』

家の場所を教えて喜んでもらえると思いきや、心を逆撫でされるような返事……

とはいえ、
久しぶりに会えるのはなぜか嬉しくて仕方ない。
まだまだ部屋の片付けには時間がかかるけれど、約束した日は仕事を休み、早起きして頑張ろう!

M君が来てくれると約束した日は、偶然にも新月だった。
新しい事を始めるのに良い日。
M君とお付き合いをするつもりはないけれど、来てもらえる事で、何かが変わればいいな……

そんな気持ちだった。


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