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【📰文系×医療🩺】門脈ってどこの血管?門脈圧亢進症


今回の問題はこちら👇

疾患と治療の組合せで正しいのはどれか。

a. 多発肝細胞癌 ー 経カテーテル的動脈化学塞栓術〈TACE〉
b. 胆石合併胆嚢癌 ー 腹腔鏡下胆嚢摘出術
c. 特発性門脈圧亢進症 ー 門脈内ステント留置
d. 膵管内乳頭粘液性腫瘍 ー 膵管ステント留置
e. 急性化膿性閉塞性胆管炎 ー 胆管切除術

門脈とは

門脈圧亢進症は門脈の圧が異常に上昇する病気です。そこでまずは、門脈について説明します。

門脈とは、は胃、小腸、大腸、膵臓、脾臓、胆嚢などの消化器から流れ出る静脈が集まって肝臓に注ぐ部分の血管のことです。

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腸管で吸収されたアミノ酸、膵臓で作られたインスリンをはじめとしたホルモン、脾臓から排出された分解物などを肝臓に運ぶ役割があります。

肝臓は、代謝と解毒をつかさどる臓器であり、肝臓内の全血液の内3/4から4/5を運ぶ大事な血管です。

門脈圧亢進症とは?

門脈圧亢進症とは、門脈の血圧が高くなる病態です。この原因は様々であり、原因の違いにより名前も変わります。

流れの悪くなる部位が肝臓に入る手前・肝臓自身・肝臓から出た後のどこにあるかで、肝前性・肝内性・肝後性に分類されます。

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肝前性の場合は、肝臓外の門脈が閉塞してしまう肝外門脈閉塞症が原因疾患となります。

肝内性の原因で多いのは肝細胞が破壊され硬くなってしまう肝硬変です。また、寄生虫が血管を詰まらせてしまう日本住血吸虫症や、原因が分かっていない特発性門脈圧亢進症もあります。

肝後性は肝臓から流れ出る血液を運ぶ肝静脈か、その先の心臓へと連なっている肝部下大静脈が閉塞または狭窄することによって起こるバット・キアリ(Budd-Chiari)症候群があります。


症状
①食道・胃静脈瘤(りゅう)
肝臓へ入る門脈の血の量が多くなると、新たな血の流れ道である側副血行路を作ります。胃や食道の表面を通る血管を通りやすく、その血管は太く脆くなります。それを静脈瘤と呼びます。
静脈瘤が破裂すると多量の出血が生じ命に係わる非常に危険な状態になります。

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②脾臓腫大
脾臓からの血液は門脈へ流れますが、圧が上がり流れにくくなると、脾臓が腫れ(脾腫)、血液がたまります。脾臓は古くなった血球を破壊する臓器なので、血液量に応じて脾臓が過剰に働き、血液の成分である赤血球、白血球、血小板が破壊され、貧血、易感染性、出血傾向などの症状が出ます。

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③腹水
門脈圧上昇により、毛細管圧の上昇につながり、肝臓の表面や肝外門脈枝から水分が漏出しお腹の中にたまるものを腹水と言います。お腹が張って苦しくなったり、栄養分の喪失になります。

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④肝性脳症
本来肝臓で代謝されるべきアンモニアなど神経障害物質が脳へ流れ込むことによって意識障害が発生する病態です。

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https://ssl.kotobuki-pharm.co.jp/guide/guide03-27


特発性門脈圧亢進症とは

特発性門脈圧亢進症とは、肝内末梢門脈枝の閉塞、狭窄により門脈圧亢進症に至る症候群のことをいいます。

詳しい原因は分かっていませんが、自己免疫病を合併する頻度も高いことからその病因として自己免疫異常であるとする説が有力になっています。

治療
特発性門脈圧亢進症に対する根治的治療はなく、門脈圧亢進症に伴う食道胃静脈瘤出血と異所性静脈瘤、脾機能亢進に伴う汎血球滅少症に対しての対症療法を行います。


ここで問題の選択肢cを見ていきます。

疾患と治療の組合せで正しいのはどれか。

c. 特発性門脈圧亢進症 ー 門脈内ステント留置

ステント留置術とは、狭窄した動脈を血管の内側から再開通させるためニチノール、ステンレス鋼、あるいはコバルトクロム合金で作られたメッシュ状の極小チューブをカテーテルを通じて血管内に永続的に留置する術式です。

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肝内末梢門脈枝の閉塞や狭窄であるため、門脈ステント留置では解決しません。
特発性門脈圧亢進症は原因が分かっていないため、対症療法となります。
よって選択肢は誤りとなります。


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