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完全房室ブロックと洞不全症候群・予後が悪いのはどっち?

よく、心臓内の電気刺激の繋がりが途絶える or 伝わりにくくなる疾患として完全房室ブロック洞不全症候群があります。

  • 完全房室ブロックは心房と心室のつながりが途絶えてしまう不整脈

  • 洞不全症候群は洞結節と心房のつながりが途絶えたり、洞結節の機能低下により徐脈となる疾患

では、どちらのほうが予後が悪いのでしょう…?どちらも心臓の中の電気経路の繋がりが切れるので悪い気がしますが?


予後は完全房室ブロックが圧倒的に悪い

実は、洞不全症候群はQOLは下がります。しかし生命予後自体にはほとんど影響が無いことが知られています¹。逆に完全房室ブロックは治療をすれば予後は良いですが、突然死する場合もあり、危険な状態とされています。
なぜこのような違いが生まれるのでしょう?

洞不全症候群では心室収縮はまず問題ない

実は洞結節からの電気信号が来なくなっても、心房が勝手に興奮して仕事をしてくれます
当然、心房から心室へ指令は問題なく来るため、心室収縮が無くなることは無く、心停止したり突然死はしません。そのため予後良好と考えられます。

では、完全房室ブロックはどうでしょう?

完全房室ブロックでは心室が停止する危険あり!

完全房室ブロックでは心房→心室のつながりが切れているため、心房は洞結節からの電気信号で問題なくリズミカルに収縮します。
一方、心室は信号が来ないので、「指示が来ないから、こっちはこっちで頑張ろう!」と心室の中の一部の頑張り屋さん心筋が心房の代わりとして仕事をします(心室がリズムを作るので心室調律といいます)
この頑張り屋さんが、電気信号を頑張って心筋全体に出すことでかろうじて収縮できていますが、なにかの弾みで頑張り屋さんが力尽きるとそのまま心停止(≒突然死)してしまいます。

生き死にが、一部の心筋の頑張りでかろうじて維持されている状態が完全房室ブロックと考えると、確かに危ない状態だと分かりますよね。

参考
1)Shaw DB, Holman RR, Gowers JI. Survival in sinoatrial disorder (sick-sinus syndrome). Br Med J. 1980 Jan 19;280(6208):139-41. doi: 10.1136/bmj.280.6208.139. PMID: 7357290; PMCID: PMC1600350.

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