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私が1番大好きなライブハウスが無くなってしまうという話。

2022年3月31日。
この日を以て幕を下ろすライブハウスがある。
それは神戸市にある「Event-hall RAT」である。

RATは、阪急三宮駅から
5分くらい歩いたら見つかるビルの
地下一階にある。
少し探さないと見つかりにくいところが
小さい頃に作った秘密基地みたいで、
見つけただけでワクワクさせてくれた。

私がRATに行ったのは大学4回生の冬である。
内定式も終わって、学祭も終わって、
卒業研究やアルバイトで
精神的に削られていた頃である。

卒業研究は思ったような成果が出ず怒られ、
4年間続けていた部活は
私が描いていた終わり方をせず
(何か思ったよりもあっさりしてるような…)、
気持ちのゆとりも無くなっていた。

長年続けていたアルバイトにおいては、
業務ミーティングで上の者と大げんかになり、
事件こそにはならなかったが、
数多くの暴言を吐かれ、
泣く泣く去ることになった。

今まで積み上げてきたものが続々と崩されていく。
このまま生きていたら私はどうなるのか?
そんな私の心の支えがFINLANDSだった。
(今もそうなのだが。)
当時、「BI」というアルバムがリリースされて、
CDを聴いたり、歌詞カードを読んだりしていた。

マイナスの出来事があったからこそ、
自分自身にこのような長所が生まれる。
なので、嫌な自分を否定するのではなく、
一対と捉えることが出来れば
自分自身を肯定出来るのではないか、と。
散々なこと続きであった私が報われた気分になり、ガッチリと心の支えになっていた。

そんな毎日を送る私が受け取ったのは
ミスタニスタというバンドが企画するライブに
FINLANDSが出るという情報だった。

ミスタニスタもYouTubeのオススメで知っていて、
私が知った頃には活動休止中であり、
ライブで見てみたいと思っていた。
このライブは復帰してすぐのライブであった。

これは行かなければ…!と思い、
当時の私はこのライブを生き甲斐に
苦しい毎日を乗り越えていった。

初めてRATに行った時、案の定迷子になった。
「確かここらへんだよな…」
「マークらしきのが見当たらない…」と
探しに探した挙げ句、
タバコを吸いながら雑談している男性2人に
「あの…RATってどこか分かりますか?」
と勇気を振り絞って聞いてみた。

「あっ!このビルの地下です!
FINLANDS見に来てくれたんだ!」と返ってき、
よく顔を確認したら
サポートドラマーの駿介さんと
音響担当の徹さんだった。

「あっ!見たことあります!
そうです!聴きに来ました!
楽しみにしています!」と言い、
RATに入っていった。
まさかメンバーとバッタリ会えると
思わなかったので、ドギマギしてしまった。

予約していたチケット代を払い、
RATマークの判子を手の甲に押してもらうと
入ることが出来た(遊園地みたいだね)。

RATは他のライブハウスに比べると狭い。
キャパは入っても100人くらいだし、
楽屋は1つしかない。
その日のライブも一部は物販の机が並んでいて、
かなりギュウギュウに詰められていた
(このご時世だとありえないレベルには)。

だからこそめちゃくちゃ近かった。
FINLANDSは2メートル足らずくらいの
超至近距離で見ることが出来た。

後ろにあるトイレに行ってしまって
ミスタニスタは後ろの方からしか
見れなかったけど、
そのおかげでオーディエンス全体を
見渡すことが出来た。
見に来たファンだけでなく、
当日の出演者、スタッフ全員が一体になって
めちゃくちゃ盛り上がっていた。

私が描いていたライブハウスの理想を
ミスタニスタが描いてくれていた。

この狭い空間だからこそ、
出演者と観客の距離はとても近い。
FINLANDSのお二方とも話たし
写真も撮ってもらったし、サインも貰った。
地震でヒビ割れていた「LOVE」のアルバムが
この瞬間、かけがえのない宝物になった。

パワハラで得た一万円は
この日のチケットとグッズで全て消えた。
社会人になった今となれば一万円は
2日か3日働けば手に入るかもしれない。
ただ、この一万円は私にとってとても貴重で、
使いたい時に使いたかった。この時しかなかった。

過去のツラい出来事とこの日のライブを
頭の中に混ぜ、泣きながら私は阪急電車に乗った。

そして、今年に予定とまん防の合間を縫って、
RATに行き、まどか店長に挨拶しに行きました。


当時の思い出を語ったり、
閉店が決まるまでの経緯を聞いたり、
元RATスタッフで現FINLANDS照明担当の
金子さんの話や、
FINLANDS、ミスタニスタ、クアイフなどの
出演してくれたバンドの話、
貼られているポスターや
出演パスを見て回ったりなど
当時の思い出を存分に語り合いました。


まどか店長の体調はあまり良くなさそうで、
状況を聞く限り大丈夫そうとは
正直言って思えませんでしたが、
気丈に前向いて進んでいこうとしている姿を
見ることが出来て少し安心しました。
その姿がめちゃくちゃカッコ良かったです。

元々、前の店長と音信不通になって
RATを守るために一人で運営したり、
卒業するスタッフに向けて
別のライブの運営をブッキングしたりと
義理人情に厚い方。
私が神戸RATが大好きなのは、
まどか店長の存在も大きいのかもしれません。
(いや、間違いなくそうだと思う、確信した。)

神戸RATが今後どうなるかは分かりません。
名前が変わるだけかもしれませんし、
全く別の店舗になるかもしれませんし、
とある会社の事務所になるかもしれません。

今後のことは誰にも分かりませんし、
一旦更地になるかもしれません。

もし、生まれ変わるとするならば、
多くの人の心が通い、
一生忘れられない日を作ってくれるような
スポットになってほしいです。

神戸RATは無くなってしまいますが、
私の心の中でRATは永遠に不滅です。
多くの人の心に残りますように。

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