野口 悠紀雄、つまり、いまほどに国際的地位が低くなったのは、アベノミクスの期間のことなのである。

日本人は謙虚さを失った

日本の地位がこのように低下しているにもかかわらず、日本人はいつの頃からか、謙虚さを失った。

2005年頃、日本の1人当たりGDPのランクが落ちていると指摘すると、「自分の国を貶めるのか」といった類の批判を受けることがあった。

客観的な指標がここまで落ち込んでしまっては、さすがにそうした批判はない。それでも心情的な反発はある。

日本の経済パフォーマンスの低さを指摘すると、「自分の国のあら捜しをして楽しいのか」という批判が来る。アメリカの所得が高いと言うと、「所得分布が不公平なのを知らないのか」と言われる。つまり、外国にはこういう悪い点があるのだという反発が返ってくる。

韓国の高い成長率に学ぶ必要であるというと、「韓国は日本の支援で成長したのを知らないのか」という意見にぶつかる。

どの国にも良い点と悪い点がある。

自国の問題点を強調するのは、それを改善したいからだ。他国の良い点を指摘するのは、それが自国を改善する参考にならないかと考えるからだ。

事実を正しく認識することは、事態を変えるための第1歩だ。

そして、1960年代の謙虚さを取り戻すことが、日本再生のための不可欠の条件だと思う