「時間差一夫多妻」が男余りを促進。「男余り現象」の要因の大部分は、出生性比の違い。出生男女比は105:100と男が多い。1956~1995年の出生数の男女差は男子3389万人、女子3197万人、差引き192万人、男が多く生まれてる。余っている300万人の男性のうち3分の2は出生数の男女差によるもの。

この「男余り現象」の要因の大部分は、出生性比の違いです。出生男女比は平均して105:100と男が多い。国勢調査の2015年時点での20~50代が生まれた年である1956~1995年の出生数の男女差を見ると、男子3389万人、女子3197万人となり、差し引き192万人男が多く生まれています。つまり、余っている300万人の男性のうち、3分の2は出生数の男女差によるものなのです。

「時間差一夫多妻」が男余りを促進!?

そして、出生性比以外の「男余り」要因として考えられるのが、再婚です。現在、離婚数の増加と連動して再婚数も増えていますが、再婚が増えると、なぜ未婚男性が余るのでしょうか。それは再婚によるアンバランスなマッチングのせいです。

再婚するバツあり男は、初婚の女性と結婚する傾向があるため、それによって未婚女性の絶対数が減ります。したがって、何度も結婚離婚を繰り返す男がいればいるほど、押し出されるように生涯未婚の男が増え続けることになります。これを私は、「時間差一夫多妻」と呼んでいます。結婚したいソロにとって、これは由々しき問題ではないでしょうか。再婚数と生涯未婚率の推移を並べてみると、完全にリンクしているわけではありませんが、なんとなく連動しているように見えます。

日本の結婚は再婚者によって支えられている

今回は、その再婚事情について少し詳しく掘り下げてみたいと思います。婚姻数が減り続けていることは、みなさんご存じのとおりです。ピークは1972年、109万9984件の婚姻数が最大でした。それ以降は減り続け、2015年には63万5156件まで激減しました。

この婚姻数とは、初婚数と再婚数を合算した数字です。初婚同士の婚姻に限ると、1972年に約98万件で最大値を記録していますが、2015年には約46万件と半分以下になっています。

その一方で、再婚数を同じタームで比較すると、1972年の12万件から、2015年の17万件と、1.4倍になっています。婚姻全体に占める再婚の割合も、11%から27%へとほぼ3倍に増えています。言ってみれば、日本の婚姻数は、再婚者によって支えられているわけです。なお、再婚数が増えているのは当然離婚数が増えているからです。

再婚の組み合わせは「再婚同士」「再婚夫×初婚妻」「初婚夫×再婚妻」の3種類に分けられます。組み合わせ別の再婚件数を時系列でみると、1960年には「再婚夫×初婚妻」の組み合わせは5万4168件と、再婚件数の50%を占めていました。「バツあり男が、若い初婚の女性と再婚する」のが大多数だったわけです。しかし、やがてこの組み合わせは、件数も比率も減少。1986年には4万2500件と最小値となり、「再婚同士」の組み合わせにいったん抜かれます。ですが、その後1993年にはまた「再婚同士」を抜いてトップに返り咲いて、以後2006年には7万件を突破しています。

とはいえ、「再婚夫×初婚妻」の組み合わせだけが伸びているわけではなく、「再婚同士」および「初婚夫×再婚妻」の組み合わせ数も全体的に上昇していることは確かです。

ちなみに、戦前1939年の人口動態統計をひもとくと、「初婚夫×再婚妻」の組み合わせは、年間でもたった1万4251件しかなく、再婚内構成比も16%に過ぎませんでした。それが、戦後に夫を亡くした妻の再婚や1980年代後半ころからの離婚数の増大したことに伴って増加しました。

では、皆婚時代の1980年から、2015年までの36年間の累計はどうなっているのでしょうか。

期間総婚姻数は2648万組(千人以下は切り捨て。以下同じ)、離婚数は770万組、特殊離婚率(離婚数/婚姻数で算出。人口千対の普通離婚率とは異なる)でいえば29.1%になります。その770万組中の再婚組数は549件で、離婚者の7割が再婚しているという計算です(※ちなみに、この数字はユニーク数ではありません。同じ男性が何度も離婚をして、初婚女性と複数回結婚しているという例もあると思われます)。

そのうち、お互いが再婚同士のカップルは197万組で、再婚全体の35.9%の構成比です。それよりも多いのが「再婚夫×初婚妻」のカップルで、約200万組、構成比は36.4%です。

これがどういうことを意味するかといいますと、再婚夫が、この36年間に延べ200万人もの未婚女性を妻にしているということです。結婚適齢期といわれる20~34歳の女性全体(有配偶含む)の人口はいつもだいたい1000万人程度(2015年では約968万人)ですから、なんとその20%にあたります。

しかし、一方で、「初婚夫×再婚妻」のカップルも最近増えていて、累計152万組もいます。意外にも、「時間差一妻多夫」の再婚妻も少なくないわけです。つまり、未婚女性が再婚夫とマッチングしている数は、実質的に差し引き約48万人多いという計算になります。

直近の2015年の実績では、未婚女性と再婚夫の組み合わせは1万8000人ほどです。一見少ないように思えますが、初婚同士の年間婚姻数の約4%に相当します。このように毎年これだけの人数の未婚女性がいなくなるわけですから、「結婚したい未婚男性」にしてみれば苦々しいかもしれません。

しかし、未婚男性が結婚できない原因は、再婚夫だけのせいではありません。今後も、再婚数は増えるでしょうが、むしろそれは今まで生涯未婚だったかもしれない男女が再婚夫・再婚妻と結婚するチャンスが増えると、前向きにとらえることが重要です。

男女とも、断トツの1位が滋賀県でした。ちなみに、滋賀県は離婚数の上昇率でも1位です。だからといって、滋賀県の人たちが「浮気な男女が住む県」だということではありませんが、この36年の間に、滋賀県でいったいどんなことが起きたんでしょうか? 正直、よくわかりません。

滋賀県といえば、真っ先に琵琶湖が思い浮かびますが、それだけではありません。忍者で有名な甲賀があり、現在大河ドラマをやっている井伊家の彦根藩があったところでもあります。その前には、関ヶ原西軍の実質大将石田三成の居城佐和山城があり、織田信長の安土城が建てられ、豊臣秀吉が初めて城持ち大名となった長浜城があったところでもあります。最澄が比叡山延暦寺を開き、天智天皇の時代には大津宮があり、京都・奈良と同等に歴史的価値の高い場所です。

さらに、「売り手よし、買い手よし、世間よし」の三方よしとして知られる近江商人を輩出しています。もしかして、結婚をひとつの経済生活として考えるならば、離婚や再婚もその手段としてドライに割り切れる、という近江商人の血が影響しているんでしょうか。

「離婚=不幸」という考えに縛られてはいけない

離婚と再婚が増えることは悪いことだとは思いません。もちろん、良好なパートナー関係が続くことはいいことですし、離婚をお薦めするつもりもありません。が、「離婚=不幸」という規範に縛られ、やり直しの機会を自ら排除する必要はないと考えます。「『夫婦は一生添うべし』が当然ではない理由」という記事にも書いたように、「夫婦は離婚すべきでない」という規範は、明治期以降のもので、江戸時代まで日本人は離婚再婚を自由に繰り返す人たちだったわけです。人生100年時代と言われている中で、仕事もひとつの会社で勤め上げるという形が常識ではなくなっていきます。結婚に関しても同じことが言えるのではないでしょうか。

ちなみに、滋賀県はシングルマザー世帯率が東京に次いで2番目に低い県であり(2015年国勢調査より)、総務省が今年5月に発表した「統計トピックスNo.101」によれば、人口に占める子どもの割合が高い県の2位も滋賀県です。滋賀県の人たちは、「子どもたちにとってよりよい環境は何か?」を考えたときに、再婚もひとつの前向きな選択肢としてとらえているのかもしれません。

中年の若い子好きと「未婚化」は関連性がある

このおっさんの若い子好きという意識と昨今の未婚化は、実は関連性があるのではないでしょうか。

宝くじを買う感覚で説明します。たとえば、100円払えば必ず10円もらえるくじAと、同じく100円だが、100分の1の確率で1000円当たるけれど、はずれはゼロ円というくじBがあったとします。どちらを選びますか?

大抵の人はBを選択すると思います。確率的には、まず当たらないのにも関わらず。確実に10円をもらうより、「もしかしたら」という期待で人はBを選んでしまいます。これが宝くじを買う人の心理です。

ところが、これが1枚100円ではなく1万倍の1枚100万円のくじだとするとどう思うでしょうか?

確かに、当たれば1000万円もらえるかもしれないが、手元の100万円を失う可能性が大きい。こうなると、人はそのリスクを恐れ、Bを選択しなくなります。要は、自己リスクとの兼ね合いなんです。金額が高いとどうしてもそれを失いたくない気持ちが勝ちます。それが冷静な判断力というものです。

これをおっさんの結婚にあてはめてみましょう。ここに、婚活にいそしむ40代のおっさんがいたとします。今まで、さんざん婚活してきましたが、ずっと結婚できませんでした。しかし、もはや贅沢は言っていられない。次、決めなければ生涯独身確定だという状況だと仮定します。

そのときに、「あなたがOKすれば確実に結婚できるが、ほぼ同年代のアラフォーのAさん」と「その子を狙うライバルもたくさんいて、あなたがプロポーズしても結婚できる可能性は低い20代女子のBさん」の2人がいたとします。さて、おっさんはどちらを選ぶでしょうか? もちろん、実際は年齢だけで相手を選ぶわけではありませんが、便宜上シンプルにしています。

理屈で考えれば、間違いなくAでしょう。だって確実に結婚できるのですから。若いとかかわいいとかそんな条件を言える立場ではないのです。でも、このおっさんはBを選んでしまいます。そして、当然のごとくフラれます。

もうこのおっさんでいいと言ってくれるAのような女性は2度とあらわれることはないでしょう。生涯独身確定です。お疲れ様でした。

なぜ、このおっさんは無謀な選択をして玉砕してしまうんでしょう? 実は、こうした選択をしてしまうことは、サルの実験でも立証されています。

少量の果物を確実にもらえるAか、大量の果物かもしくはもらえない可能性のあるBのどちらかを選ぶか、という実験をしたところ、サルはどんなにBの確率を下げても(ほとんど果物はもらえなくなる状態)、一貫してBを選び続けたそうです(2005年米デューク大学プラッツ博士の実験より)。

サルはリスクを認知できないのでしょうか? いいえ。サルの脳の後帯状皮質という神経細胞で、リスク自体は感知していたそうです。つまり、リスクがあることを承知で、サルはBを選び続けたということになります。

確実な“報酬”より、リスクの先の快楽を選ぶ

話をおっさんに戻します。このおっさんにとって「Bを選ぶこと」がリスクであることは百も承知ですが、確実な報酬よりもリスクを乗り越えた先の大きな快楽への誘惑に勝てなくなるのです。

おカネだと冷静に判断できるのに、結婚や恋愛だと、それがすっ飛んでしまう。そして、延々と同じミスを繰り返します。それでも、おっさんたちは「いい夢を見させてもらった」と強がり、これっぽっちも反省などしません。それこそが、結婚できないまま一生を終える男の特徴ではないでしょうか。

しかし、実は本質はこうかもしれないのです。
確実な報酬であるAを選ばないおっさんは、結局そもそも「結婚するつもりがないのだ」と。こうしたおっさんは、自分が40代になろうと50代になろうと、選ぶ相手の年齢は変わっていないはずです。結果自分が歳を重ねるごとに歳の差が開いていっているだけというのが実情でしょう。決しておっさんになったから、若い子好きに変化したわけではないのです。

若い子との結婚を希望するおっさんたちが結果的に生涯未婚になっているのは、自業自得というより、本人の潜在意識が選択した能動的な決断なのかもしれません。

ちなみに、40~50代のおっさんが初婚で20代の女性と結婚できた確率を、全年代の男性初婚数から割り出すと、1%以下。ほぼムリなようです。