国民負担は、税金と社会保険で構成されている。税金は応能性、負担できる能力に従い税金を課す。社会保険は応益性、その人に利益があるから保険料として支払う仕組み。

稲田朋美(自民党・幹事長代理):岸田首相は国民全員で単純に割った金額を出したのだと思う。ただ、医療保険の制度とか、所得とか、いろんなことが(支援金制度に)関わってくるので、やっぱりとっても説明がわかりにくいというのはその通りだと思う。これから法案審議に向けて、わかりやすい形でしっかり説明していく必要があると思う。

松山キャスター:(医療保険の)加入者ベースで考えるか、被保険者で考えるかで、かなり額が変わってくるようだが。

市川眞一(ピクテ・ジャパン シニア・フェロー)
そもそも論として保険から払っていいのかどうか、という問題があると思う。国民負担は、税金と社会保険で構成されているわけだが、税金というのは基本的に応能性、つまり、負担できる能力に従って税金を課すということになっているが、社会保険っていうのは応益性で、その人その人に利益があるから、だから保険料として支払うという仕組みになってる。

子育て支援は確かにすごく大事なことだと思うが、
支払うということと、
負担するということと、それから、
受益するということでは必ずしも一致はしていない
わけだから、
これを仮に社会保険をこういう裁量的経費に使っていくっていうことになると、新しい「うちでのこづち」になりかねないわけで、そういう意味で、本来であれば、こういう裁量的経費というのは正々堂々と必要性を訴えて、税で対応すべきではないかと思う。

なぜ?「財源=保険料」

松山キャスター
医療保険の増額分を少子化対策に充てる概念そのものが違うのではないかとの指摘だが。

橋下徹(番組コメンテーター、弁護士、元大阪府知事)
それはその通りだ。子育て政策というのは税でやるのが本筋であり、保険というものを使うのは完全な流用だ。今回の岸田首相の説明は、民間企業であれば完全に不当表示になる。行政指導を受けるような、やってはいけない説明だ。国民全体で薄めちゃってるわけで。本来なら支払う人の人数で割らなきゃいけない。

もう一つは、自分は反対だが、保険料というものを使っている以上は、事業主も負担してる。会社の方の負担額が増えてるわけで、本来なら、従業員の給料に回すことができる分になる。だから、もしきちんと説明するのであれば、払う側の方の企業負担、事業主とそれから被保険者のその全体の負担額を説明する。わざと負担額が少なくなるように全国民で割るなんてことは絶対やっちゃいけない。これは不誠実な政治の説明だと思う。

負担は増えるので、しっかり説明していく必要がある

稲田氏
ただ、少子化対策は、子育て世帯だけではなく全世代というか、社会保障という意味においても、受益者という意味で、将来世代含めて重要な問題だと思う。原理原則でいえば(橋下氏の言う)その通りだ。ただ、岸田首相も、すごく早い時期に「これは税ではやらない」ということを言った。やっぱりでも3.6兆円という非常に大きな塊(少子化対策の財源)なので、そこは負担が増えるっていうことは、その通りなので、しっかり説明していく必要があると思う。

橋下氏:稲田氏はいま、負担は増えると。正直に説明すれば。

稲田氏:負担は増える。ただ、頑張って社会保障改革をやる、賃金を増やすということで、その軽減策ということもやっていくという説明だと理解していて、やっぱり本丸は社会保障改革をやるということだと理解している。

橋下氏:やはり政治は正直に説明しなきゃいけないなかで、やはり負担が増えると今、稲田氏が言っているわけだから、これは企業全体含めて、事業主負担も含めて、しっかり負担は増えるってこと言わなきゃいけない。

市川氏:そもそも、医療保険財政そのものも、長期的に高齢化が進んでいけば今後相当厳しい状況になっていく。その中で今、少し余裕があるからこれを流用するということは、やはり原理原則から言っても、日本の今後の制度のあり方からいっても大きな問題があるので、そこのところは、なぜそうしなければいけないのか、少子化対策をやらなければいけないのかということを、もっと丁寧に国民説明していただきたい。